平成13年商法改正 監査役制度の選択的廃止
今回の商法改正に関する中間試案では、大会社は定款をもって、各種委員会及び執行役を置くことを定めることができるとされ、この場合には、監査役を置かなくてもよいとしている(中間試案第19の1)。
この中間試案は、執行役が置かれ、取締役会と執行役との権限分配があれば、取締役会が執行役の執行を監視できるから、監査役が別に監査する必要がないというのであろう。これが一つの考え方であることは理解できる。
しかし、取締役会の構成は社外取締役が過半数を占めるようにはなっていないようであるから、これでは、取締役会の監視機能は十分といえるかは疑問である。むしろ、社外監査役を半数以上とするという議員立法案の方が監視機能を強化できるのではないか。
取締役の監視は、現状のように株式の相互持合状態では、中間試案・議員立法案であっても、監視機能は期待できない。
監視される者が監視を嫌うからである。
それに反して、株式の相互持合が解消し、その結果として、外部株主の機関投資家等がコーポレートガバナンスを主張する外圧を加える状況が出てくれば、監視される側が危機感を持ち、監査役・取締役会の監視が必要になってくる。
このような状況になれば、取締役会の過半数を社外取締役にするとか、監査役の機能強化を認める風潮が出てこよう。その意味では、執行の監視の問題は、取締役会と執行役との権限分離とか監査役の権限強化の面よりは、株式の相互持合関係をどうするかの方が、重要である。
株式の相互持合は、経営効率の面から合理性がないだけでなく、経営成績を上げられない弱い経営者を保護するという面からは護送船団方式的色彩が強い。日本にグローバルに見ても強い経営者を多く育てる意味からは、いかに早く、株式の相互持合を解消するかを真剣に検討すべきである。
(文責 弁護士 鳥飼重和)
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