【固定資産税】「市街地宅地評価法」とその評価ミスを教えてください。
固定資産評価基準上、市街地的形態を形成する地域にある宅地は、「市街地宅地評価法」に基づいて評価が行われます。具体的には、以下の各プロセスを経て価格が決定されます(固定資産評価基準第1章第3節(一))。
⑴ 宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区等に区分する
⑵ 各地区を状況類似地域に区分する
⑶ 状況類似地域ごとにその主要な街路に沿接する宅地から標準宅地を選定する
⑷ 標準宅地の適正な時価を求める
⑸ 主要な街路に路線価を付設する
⑹ 主要な街路に比準してその他の街路の路線価を付設する
⑺ 各筆の宅地について路線価を基礎に、「画地計算法」を適用して評点数を付設する
「市街地宅地評価法」の各プロセスを踏まえると、次のようなミスが考えられます。
① 標準宅地の時価が適正ではない
「市街地宅地評価法」のプロセス⑷では、標準宅地の適正な時価を求めます。そして、実務上は、不動産鑑定士が標準宅地について鑑定評価を行い、その標準価格の7割を時価としています(平成4年8月20日付事務連絡 自治省税務局資産評価室土地係長通知)。不動産鑑定士による鑑定評価に誤りがある場合には標準宅地の時価は適正とはいえず、当然、それに基づいて決定された土地の価格も誤っているということになります。
② 標準宅地とその他の宅地の比較が適正になされていない
「市街地宅地評価法」のプロセス⑹では、標準宅地とその他の宅地との間の価格形成要因(街路条件、交通・接近条件、環境条件、行政的条件)の相違に基づいて、これらの項目ごとに格差率を求めるという作業が行われます。
例えば、商業地区のある宅地は、標準宅地よりも最寄り駅から近いという特性があるとします。この場合、標準宅地と比べて集客が見込めますので、それだけ商業地区の宅地として価値が高く、標準宅地の価格に+10%の加算を行うといった作業が行われます。他方で、標準宅地よりも容積率が低いという特性がある場合には、その分だけ土地の利用価値が低くなりますので、標準宅地の価格に-8%の減算を行うといった作業が行われます。
このように標準宅地以外の宅地は、標準宅地との価格形成要因の違いに応じて、評価の加減が行われ、価格が決定されます。そのため、本来は減算すべき価格形成要因があるにもかかわらず、これを見落としているというミスが起こります。また、減算はなされているものの減算の割合(パーセンテージ)が適切ではないというミスも起こります。いずれの場合も土地の評価は誤っているということになります。
③ 「画地計算法」の適用に誤りがある
「市街地宅地評価法」のプロセス⑺では、宅地ごとに「画地計算法」を適用して評点数を算出し、価格を決定します。
「画地計算法」では、その宅地に接している道路の本数や接し方、その宅地の奥行や間口の長さ、不整形地やがけ地の有無といった個別の事情に応じて、土地の価格の加減が行われます。そのため、各項目の適用にミスがあれば、土地の価格も誤っているということになります。
④ 「所要の補正」の適用に誤りがある
固定資産評価基準の定める「画地計算法」は全国一律の基準であるため、それだけではその宅地に特有の事情を適切に価格に反映させることができない場合があります。そこで、市町村長は、市町村の実情に応じて「所要の補正」を適用して、個別の土地の価格の加減を行うことができます。
「所要の補正」の具体的な内容、すなわち、どのような場合にどのような割合で加算又は減算を行うのかという点は、市町村の作成する土地評価事務取扱要領といった要綱で定められています。この要綱の適用にミスがあれば、土地の価格も誤っているということになります。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 山田重則
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