中央大学商学部教授 大淵先生が緊急寄稿!! 製薬会社が「英語論文添削支援サービス」に応募した医師等が支払った英語論文添削料を上回る外注添削料を負担した費用が交際費等とされた一審判決が取り消された事例の紹介と解説

1.はじめに
~判決の意義~
 製薬会社が取引関係医療機関の医師等を対象とした「英語論文添削支援サービス」に応募した医師等が支払う添削料を超えた外注添削料の負担を寄附金として経理した法人の処理が、製薬会社の事業関係者に対する交際費等の支出に該当するとして行った更正処分が争われていた萬有製薬事件について、一審判決が交際費等としたのに対して、その控訴審判決は、これを取り消して寄付金とした法人の税務処理を容認する判決を言い渡した。
 この事件については、更正処分の段階から、マスコミで報道されていたが、医師等の作成した英語論文についての文法や医学的内容に関して、希望する者から一定の国内の添削料相当額を徴収して英語論文の提出を受けて、これを外国の専門会社に添削を依頼して添削料を支払うというものであるが、医師等から徴収した添削料を超えた外注費を萬有製薬が負担したことが、何故に、冗費、濫費といわれる交際費等に該当するのか、特に、外注費の負担について、添削料の実費として支払っている医師等が認識していないのではないか、認識していないのであれば、交際目的という交際費等の要件を満たしていないのではないかという疑問があったところである。
 一審判決は、この外注費の負担の認識の有無は交際費等の該当性要件には無関係としたが、控訴審判決は、これを必要とする判決を言い渡した。本件では、ここが最大の論点であったが、控訴審判決の正鵠を射た判決により、最近、際限なく拡大している交際費等の範囲に一定の歯止め効果を果たしたということがいえよう。また、昭和44年以来の交際費訴訟での納税者上訴判決は、それ自体で意義がある。
2.事案の概要
 X製薬会社は、1993年頃から、医師等から海外の雑誌に投稿する論文を受け取り、英文法などチェックする「英語論文支援サービス」を行っており、その対価として、他の翻訳会社などと同じ1頁当たり2,000円を医師から受け取り、95年春からは2,500円にしていた。本件英文添削の対象は、・製薬会社の取引先である国内の医科系大学、総合大学の医学部、その付属病院及び医療機関等、約95の機関に所属する研究者らに限定されていたが、添削依頼者は若手の研究者らが多く、講師、助手及びその他の研究者かからの依頼が全体の87.4%を占め、教授、助教授からの依頼は、全体の12.6%であり、その中には、研修医、大学院生、医療に携わらない基礎医学の講師や、海外留学生も含まれていた。
 同社は受け取った論文を米国法人の添削業者に送って添削を委託するが、内容を補ったり参考文献のリストを追加したりすることにより、X製薬会社が添削会社M社に支払う実費は、医師から受け取った額を上回ることが多く、その負担額は、平成6年3月期において1億4,513万6,839円、平成7年3月期において1億1,169万336円、平成8年3月期において1億7,506万1、634円にも及び、本件各事業年度における本件英文添削外注費は、本件英文添削収入と比べて、平成8年3月期において約5.1倍、平成7年3月期において約3.7倍、平成8年3月期において約4.3倍もの額に上っている。原告は、の負担した添削料を寄附金として損金の額に算入した。
 これに対して、被告税務署長は、X製薬会社の負担額は医師が将来同社製品を使用してくれることを期待した支出であり交際費等に当たるとして更正処分を行った。なお、・製薬会社は、新聞報道に対して、「若い医師や研究者を世に送り出すための学術、学会支援活動事業であり、取引を誘う意図はない。税務当局とは見解の相違がある。大学の先生たちの要望もあり、この事業をやめるつもりはない。」とコメントしていた(1997年7月3日付「日本経済新聞(夕刊)」)。

3.判決の要旨
1.「交際費等」の意義について
《一審判決》
 措置法61条の4第3項の「交際費等」が、一般的に、支出の相手方及び目的に照らして、取引関係の相手方との親睦を密にして取引関係の円滑な進行を図るために支出するものと理解されていることからすれば、当該支出が「交際費等」に該当するか否かを判断するには、支出が「事業に関係ある者」のためにするものであるか否か及び支出の目的が接待等を意図するものであるか否かが検討されるべきであり、その支出目的が接待等のためであるか否かについては、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断すべきであって、当該支出の目的は、支出者の主観的事情だけではなく、外部から認識し得る客観的事情も総合して認定すべきである。

《控訴審判決》
 当該支出が「交際費等」に該当するというためには、[1]「支出の相手方」が事業に関係ある者等であり、[2]「支出の目的」が事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであるとともに、[3]「行為の態様」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること、の三つの要件を満たすことが必要であると解される。そして、支出の目的が接待等のためであるか否かについては、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断して決すべきであり、接待等の行為に該当すれば、支出金額の高額なものであることや、その支出が不必要(冗費)あるいは過大(濫費)なものであることまでが必要とされるものではない。

2.英文添削依頼者が原告の「事業に関係ある者」に該当するか否か
《一審判決》
 本件英文添削の対象とされた研究者が所属する医科系大学及び総合大学の医学部及びその他の医療機関は、いずれも原告の製造、販売に係る医薬品の取引先であり、いずれも原告の「事業に関係ある者」に該当するというべきである。また、本件英文添削事業を提供することにより、取引先の医師等の歓心を買うことができることからも、本件英文添削は、医薬品の販売に係る取引関係を円滑にする効果を有する接待等を目的として行われたものであるというべきである。

《控訴審判決》
 医師は、製薬会社の控訴人にとって事業関係者に該当するし、添削依頼者の研究者は研修医や講師、留学生が含まれていたが、大学病院の教授等も含まれていたのであるから、全体としてみて、「事業に関係ある者」に該当する可能性は否定できない。

3.本件負担額の支出目的
《一審判決》
 本件のような英語添削支援を提供することにより、取引先の医師等の歓心を買うことができることからも、本件英文添削は、医薬品の販売に係る取引関係を円滑にする効果を有するものというべきである。
 以上のとおり、原告の取引先に所属する研究者しか利用できず、かつ、医薬品の販売に係る取引関係を円滑にする効果を有する本件英文添削を、本件各事業年度において、極めて頻繁に行っており、本件負担額は各期とも多額であり、また、本件英文添削外注費は、本件英文添削収入と比べて3.7倍から5.1倍にも及んでいる。これらの事実に照らせば、原告は、本件英文添削を、添削の依頼者である研究者の所属する取引先との間において、医薬品の販売に係る取引関係を円滑に進行するための接待等を目的として行われたものであるというべきである。

《控訴審判決》
(1) 控訴人X社は、本件英文添削の依頼を受けるに際し、公正競争規約に違反することを懸念して、事前に公正取引協議会に確認のうえ、その指導に従い国内業者の平均的な料金を徴収することにしていること等からすると、英文添削負担は、主として、海外の雑誌に研究論文を発表したいと考えている若手研究者らへの研究発表の便宜を図り.その支緩をするということにあったと認められる。それに付随してその研究著らあるいはその属する医療機関との取引関係を円滑にするという意図目的があったとしても.それが主たる動機であったとは認め難い。
(2) また、控訴人が研究者らから徴収する料金については、定期的に国内の英文添削業者の料金を調査の上見直しをしていたものの、その後、本件英文添削について、その委託先に支払う外注費が研究者らから徴収する料金よりも高額になるという事態が生じたが、研究者らがそのような差額が生じていた事実を認識していたとは認め難いし、控訴人がその差額負担の事実を研究者らに明らかにしたこともないことなどからすれば、控訴人が、上記差額負担の事実を研究者らあるいはその属する医療機関との取引関係の上で、積極的に利用しようとしていたとはいえない。そうすると、このような差額が生じるようになってからも、本件英文添削の基本的な動機、目的に変容があったと認めることは困難である。
 なお、上記の差額は相当高額であるが、それは年間数千件に及ぶ英文添削の差額負担の合計であり、一件当たりの負担額は決して大きなものではなく、各期の申告所得の1%未満の金額であり、事業収支全体の中では、必ずしも大きな額とはいえないから、かかる費用負担をしていたことが、特定の意図に基づくものと推認できるものではない。
(3) 英文添削を受けていたのは、控訴人X社の大口取引先ではなく、また、添削依頼者の多数を占める若手研究者の要望に沿うことが接待目的と全く結びつかないとはいえないが、それはかなり間接的であるといわざるを得ないし、英文論文が医学雑誌に掲載されるか否かは、その研究内容によるところ、現実に添削された論文が掲載されたのは、ごくわずかである、本件英文添削が功を奏し、それによって研究者らが直接の利益を得られるという場合は必ずしも多くはない。
[4] 時効取得した土地の取得費は、時効援用時の当該土地の価額によるべきであり、時効取得に関して支出した弁護士費用は、その取得費に含まれないとしたもの(東京地裁平成4年3月10日)などがあります。
 以上のことからすれば、本件英文添削の差額負担は、その支出の動機、金額、態様、効果等からして、事業関係者の取引の円滑化の進行を図るという接待等の目的でなされたと認めることはできない。

4.本件英文添削の差額負担の交際費該当性
《控訴審判決》
(1) 交際費等に該当する接待等の行為、すなわち交際行為とは、一般的に見て、相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲など満足させる行為をいうと解されるところ、本件英文添削の差額負担によるサービスは、研究者らが海外の雑誌等に発表する原稿の英文表現等を添削し、指導するというものであって、学問上の成果、貢献に対する寄与であるから、接待等の行為とは異なり、それ自体が直接相手方の歓心を変えるような性質の行為ではなく、上記のような欲望の充足と明らかに異質の面を持つことが否定できず、むしろ、学術支援という意味合いが強いと考えられる。
(2) 被控訴人税務署長は、「その他これらに類する行為」とは、接待や贈答等と類似しつつも、名目のいかんを問わず、取引関係の円滑な進行を図るためにする利益や便宜の供与を広く含むものであると主張するが、租税法律主義の観点からすると、被控訴人のように、幅を広げて解釈できるか否かは疑問である。そして、それをある程度幅を広げて解釈するとしても、学術研究の支援、奨励といった性格のものまでもがその中に含まれると解することは、その字句からして無理がある。
 もっとも、その負担の相手方が取引における意思決定において大きな影響力を有する関係者に限られているというような場合であり、かつ、その差額負担による利益の提供を相手方が認識しているような場合には、その差額負担は、客観的にみて.学問の発展に寄与するというよりは、相手方の歓心を買って、見返りを期待することにあると認められる場合もあるであろう。しかし、本件がそのような場合に当たらないことは明らかである。
 また、英文添削のサービスをするに際し、その料金が本来、そのサービスを提供するのに必要な額を下回り、かつ、その差額が相当額にのぼることを相手方が認識していて、その差額に相当する金員を相手方が利得することが明らかであるような場合には.そのようなサービスの提供は金銭の贈答に準ずるものとして交際行為に該当するものとみることができる場合もあると考えられる。
 しかし、前述のように、本件は、研究者らにおいて、そのような差額相当の利得があることについて明確な認識がない場合なのであるから、その行為態様をこのような金銭の贈答の場合に準ずるものと考えることはできない。
 以上のように、本件英文添削の差額負担は、通常の接待、供応、慰安、贈答などとは異なり、それ自体が直接相手方の歓心を買えるというような性質の行為ではなく、むしろ学術奨励という意味合いが強いこと、その具体的態様等からしても、金額の贈答と同視できるような性質のものではな<、また、研究者らの名誉欲等の充足に結びつ<面も希薄なものであることなどからすれば、交際費等に該当する要件である「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」をある程度幅を広げて解釈したとしても、本件英文添削の差額負担がそれに当たるとすることは困難であるから、本件英文添削の差額負担は、その支出の目的及びその行為の形態からみて、措置法61条の4第1項に規定する「交際費等」には該当しないものといわざるを得ない。

5.被接待者の認識
《一審判決》
 原告X社は、金員の支出が措置法61条の4第1項に規定する「交際費等」に該当するためには、接待等が、その相手方において、当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることが必要であるとした上で、本件負担額については、本件英文添削が、その依頼者において、原告による本件負担額の支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われていないことから、「交際費等」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、金員の支出が「交際費等」に該当するためには、前記(1)のとおり、当該支出が事業に関係のある者のためにするものであること及び支出の目的が接待等を意図するものであることを満たせば足りるというべきであって、接待等の相手方において、当該支出によって利益を受けることが必要であるとはいえないから、当該支出が「交際費等」に該当するための要件として、接待等が、その相手方において、当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることが必要であるということはできない。

《控訴審判決》
 本件は、研究者らにおいて、そのような差額相当の利得があることについて明確な認識がない場合なのであるから、その行為態様をこのような金銭の贈答の場合に準ずるものと考えることはできない。

4.コメント
《一審判決のコメント》
 原告X社の本件添削料の負担額が交際費等に該当するかどうかという認定判断は、先ず、交際費等の定義規定である「交際費、接待費、機密費その他の費用」(支出の目的⇒交際目的)で、「得意先、仕入先その他事業に関係ある者」(支出の相手先⇒事業関係者)に対して、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(支出の行為態様⇒接待等の冗費・乱費と言われる支出行為)という要件を満たすことが必要である(この点の詳細については、大淵博義『役員給与・交際費・寄附金の税務』税務研究会参照)。
 原告が負担支出した本件添削料の外注費が、ここでの要件に該当するかどうかについて、本件判決は、大学の医学部の教授や大学院生等の研究者等は原告の取引先の関係者であるから事業関係者に該当すると認定した。この判断は、学術支援の対象を取引先の医師等に限定しても、相当広範囲に及ぶところから、それなりの目的は達成されるという理解の下での限定であると解すれば、交際費課税が予定する本来の「事業関係者」とは異なるのではないかということも言えなくはない。しかし、本判決のように、事業関係者であると認定したことは、形式的解釈からはそれなりに理解できなくはない。
 次に、接待等のための交際目的であるかどうかについては、行為態様とともに解釈することが必要であろう。そこで、行為態様にいう「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」のいずれに該当するのかという点について、判決は「接待等を目的とする」と認定して、交際目的であることを判示するのみであり、いずれの行為態様に該当するかの明確な判断は避けている。しかし、本件添削料の一部負担は、そもそも、「客をもてなす」(広辞苑)という「接待行為」には該当しないし、しかも、供応、慰安、贈答という行為にも当らないと考えられるから、その費用の負担支出を交際費等と認定したのであれば、その行為態様は、「その他これらに類する行為」ということになるのであろう。
 しかしながら、取引先機関の研究者の論文に対する本件添削料の負担が、社用族に代表されるように、接待等の冗費的行為により支出する冗費・濫費の社会悪の支出に対してペナルティー的に全額課税とする現行交際費課税制度が予定するような行為態様といえるのであろうか。寄附金課税制度の趣旨に即した課税が最も妥当であり、それにより目的は達成されると考えられる。本件の場合、所得金額等から、結果として寄附金支出額の全額が損金の額に算入されたものにすぎない。
 また、本件の最大のポイントは、添削を希望する研究論文を提出した医師等が、原告の「接待等」により利益を享受しているということを認識しているかどうかと言う点であるが、本判決はこれを否定し、その行為が接待等を目的とすれば、被接待者の接待等を受けているという認識は不要であるとした点である。
 筆者は、国税庁時代に執筆した前記拙著(417頁)において、交際費等に該当するかどうかは、被接待者が特定の法人から接待等を受けていることが認識できるような客観的状況にあるかどうかがポイントとなることを指摘し、その趣旨の判決(大阪高裁昭和52.3.18判決)を引用したところである。このことは、本件の場合にも何ら異なるところはない。すなわち、論文提出者に接待等の利益を得ているという認識がなければ、交際接待の目的が達成されないこと、つまり、本件の場合で言えば、実際に支払った添削料の額が、論文提出者の医師等の負担として徴収した金額を上回っており、これを原告が代わって負担しているということにつき、論文提出者が認識していないのであれば、原告の交際目的は達成されないということである。換言すれば、原告がかかる添削料の負担を対外的に周知させていないということは、原告の添削料の負担は交際目的による支出ではないということの証左でもあるといえるのである。
 本判決は、最近の課税実務における交際費概念の拡大化傾向に追随して判示したものであり、法律解釈として疑問の多い判決ということができる。

《控訴審判決のコメント》
 一審判決に対して控訴審判決は、英文添削の差額負担の目的について、添削が開始された当初の経緯からみても、取引を誘うという意図がなかったという心証を大前提としながら、X社の本件英文添削事業を学術支援目的と認定したものであるが、添削依頼者が差額負担の利益を得ているという認識がないこと、X社も不正競争防止の観点から、そのことを明示していないという事実認定に立てば、そもそも、交際目的は達成できないことは明白であり、控訴審判決は、この点も明確に認識して判示している。その点では、本件英文添削差額負担金が交際費等に該当しないとした判断は妥当であることはいうまでもないが、ただ、相手方の関心を買うという動機の下で、利益を提供すれば交際費等に該当する余地があることを判示している。
 かかる場合の行為態様は、一般には「贈答その他これに類する行為」という態様に該当するというのであろうが、例えば、不等価交換を行った場合の差金相当額の無償供与、取引先に対する無利息融資による利益供与等、本来、冗費濫費という行為態様に対する交際費課税の趣旨に反する行為態様に対して交際費等に含まれるという解釈が可能であろうか。かかる無利息融資等は、本来、寄附金として課税対象とすべきであり、交際課税の対象とされる行為態様ではないと考える。本件控訴審判決の判示には、この点についての問題認識か希薄であるということができるであろう。
 ここでの訴訟では議論されてはいないが、本件訴訟における原理論的な論点は、本来財貨の贈与やサービスの無償提供である寄附金と、ビジネスにとって極めて重要な意味を有する場合のある交際費支出の損金控除が逆転現象を起こしているということである。すなわち、大法人の交際費支出が事業上重要な意味を有しているとしても、全額損金不算入であるのに対して、事業に貢献しない贈与が全額損金算入されるという、理論的に説明できない財政再建のための3年間の時限立法であった全額損金不算入の交際費課税制度が昭和58年以来、20年以上に亘っては継続しているということである。
 本来、損金性を有しないか、損金性の程度は極めて低い寄附金課税制度は、交際費課税制度以上に損金控除が否定されるべきであるにもかかわらず、資本金額と所得金額に比例して増大する現行の寄付金損金算入限度額の制度により、所得申告の高額な大法人の寄附金は全額損金算入されるという弊害が生じているということである。また、一方で、現実の企業取引において必要不可欠ともいえる交際費支出が全額損金不算入にされているという弊害をもたらしている現行の交際費課税制度は、全額損金不算入制度を撤廃して、その冗費性や濫費性からの損金算入を一部制限する旧来の交際費課税制度を復活させるべきであるといえよう。
 かかる制度改正がなされない以上、本件のように、その支出目的や社会悪としての冗費・濫費を抑制するための交際費該当性の行為態様要件に照らせば、到底、交際費等とはいえない寄附金支出が、全額損金不算入制度を適用できる交際費等に該当するという更正処分が、今後も行われることになるであろう。

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