今週の名言 第3回 2004.02.23

Monday, February 23, 2004

公報の文章の眼目は、実情をありのままに叙述するにある。美文は動もすれば事実を粉飾して真相を逸し、後世をまどわすことがある(司馬遼太郎著「坂の上の雲」(八)42頁 文春文庫)

これは、日露戦争を勝利に導いた指導者の一人である山本権兵衛海軍大臣の言葉である。
この言葉は、公文書の目的は実情をありのままに書き残し、それを後世の批判にさらすことであるとの考えを示している。
公的な仕事をする際に、後世のことを考えている点が明治の精神を現している。
実情を包み隠さず表に出し、後世の批判を覚悟すれば、倫理にもとる行動をすることは抑止できる。
「公」あるいは「後世」ということは、現在の日本人が思い出さなければならない精神である。このような精神を持つ指導者が多数出現すれば、日本の将来に不安はない。
これだけ豊かになっていながら、将来に不安感を持つ者が多いのは、後世を意識した正々堂々の気骨のある生き方ができないからである。
現在でも、国家・社会という「公」や「後世」を考えて、立派に生きている人々も多いはずである。
その反面、公務員でありながら、自分のことばかりや、自分の組織のことという「私」や「今だけ」しか考えない者も少なくない。
いずれにしても、現代の我々は、日本人の原点を思い出すことが必要である。歴史は単なる知識ではなく、日本人の生きる原点である。

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