平成15年株主総会 株主総会の新しい動き その3 情報開示の傾向
その3 情報開示の傾向
今年の株主総会では、取締役等の報酬額、退職慰労金の贈呈額に関する質問に対する会社のスタンスが、情報を開示する方向に向き始めたことを示している。
昨年の株主総会で取締役等の責任軽減に関する定款変更をした会社は、今年の総会から営業報告書に取締役等の報酬額の総額開示が必要になった。
その影響もあったのであろうか、株主質問があれば、取締役等の報酬額の総額開示を行なった会社が多くなっている。
ただ、取締役等の個別開示の要求に対しては、ほとんどの会社では情報開示はしていない。株主質問では、せめて最高経営者の報酬額を教えて欲しいというものがあるが、それに応じている会社は極めて少ない。
しかし、取締役報酬の総額開示だけ見ても、取締役平均の報酬額が分かるから、最高経営者の報酬もある程度予想できる。
ここまでくれば、報酬の個別開示、少なくとも、最高経営者数人の報酬の個別開示までは、時間の問題であろう。
株式の相互持合い構造が崩壊過程に入り、そのため、投資家である株主が経営者をガバナンスする時代が到来するのに、そう長い期間はかからない。
特に、委員会等設置会社における株主の代表者としての社外取締役が過半数の報酬委員会で、取締役、(代表)執行役の個別報酬を決めることになるのであるから、個別開示は避けられないことになろう。
退職慰労金の贈呈額についても、株主質問があれば総額開示をする傾向が出てきている。この場合、退職取締役あるいは退職監査役が1人の場合でも、開示している会社が増えている。
これは退職慰労金贈呈額の個別開示に他ならない。この開示は例外として行なわれているが、このような個別開示をするならば、原則として個別開示しない理由はなくなる。
個々の取締役等のプライバシーを理由にすることは出来ないからである。
各社は各取締役等の報酬額、退職慰労金贈呈額の個別開示をすべき時期が迫っていることを覚悟すべきである。それに備えて、報酬額等の算定の合理性等をも含めた検討をしておくべきである。
株主がガバナンスする時代には、徹底した情報開示が不可欠となる。ある意味では、会社にとって情報開示革命を起こす時代がすぐそこに来ているというべきである。
(文責 鳥飼重和)-2003.7.28
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