経営者に必須の法務・財務 経営者が知るべき改正商法[8]
新株予約権(2)
最近話題になっているのが職務発明に関する訴訟である。青色ダイオードの発明者の中村修二カリフォルニア大学教授が日亜化学を被告に職務発明に関して訴訟を提起したためである。その後も、職務発明に関する対価が低かったことによる元の勤務先企業を訴える事例が出てきている。
この職務発明に対する対価は通常金銭であるが、その対価の額が大きなものになりつつある。ある企業は最高1億円を職務発明の対価としたり、最高限度額を決めない企業も出てきている。このような職務発明の対価に新株予約権(ストック・オプション)を付与するのはいかがであろうか。
新株予約権の新しい活用法である。新株予約権(ストック・オプション)であれば、企業は職務発明に支出する金銭の額を減らせるメリットがあるし、職務発明した従業員からすれば、その発明が画期的であればあるほど企業業績・株価に反映するのであるから、金銭で対価を受け取るよりもストック・オプションの付与を受けたほうが嬉しいことになる。
このように職務発明にストック・オプションを利用すれば、企業側では職務発明の対価のことで苦しむことはなくなる。従業員に画期的な大発明をしてもらっても、その対価の準備は十分だからである。
発明者から特許等の私的所有権の譲渡を受けるとか、専用実施権を取得する場合の対価についても、金銭ばかりを考える必要はない。信用ができれば、人間は将来に夢をもちたい動物であるから、取引対象の知的所有権が画期的なものであればあるほど、その知的所有権を利用する企業の将来の成長性・株価上昇を期待して、金銭よりもストック・オプションの方を喜ぶことは十分ありうることである。
以上のように対価としての金銭代わりとして新株予約権を考えると、新株予約権の活用が無限であることが理解できよう。販売奨励金の代わりに新株予約権を活用するのも面白い利用方法である。支払利息の一部を金銭でなく新株予約権で払うというのも、今考えられている新株予約権の利用方法である。自分で考えてみていただきたい。いくらでもアイディアが出てくることに驚かれるであろう。
(文責 鳥飼重和)
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