2024年問題③~残業規制に違反したらどうなるのか~
1 必要な手続の確認をしましょう
前々回(※1)と前回(※2)と、2024年問題として、2024年4月1日から開始される建設業等における残業規制に関する上限規制を取り扱ってきました。ここで、今一度、2024年問題に対応するために、必要な手続について以下のフローチャートで確認しましょう。
(※3 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「建設業時間外労働の上限規制わかりやすい解説」5頁から抜粋)
2 どのような場合に違反となるか
それでは、どのような場合に残業規制違反となるのでしょうか。まず、1日8時間・1週40時間を超える時間外労働と法定休日(1週1日又は4週4日)に労働させる休日労働は労働基準法上、別個のものとして扱われます。36協定の限度時間(月45時間・年360時間)は、時間外労働の限度時間となり、休日労働の時間は含まれません。一方で、1か月の上限(月100時間未満)及び2~6か月の上限(複数月平均80時間以内)については、時間外労働と休日労働の時間を合計した労働時間に対する上限となります。
このことを前提として、時間外労働を行わせるためには36協定の締結・届出が必要となります。36協定を締結しなかった場合や締結をしても届出をせずに時間外労働をさせた場合には、労働基準法(以下「労基法」といいます)33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)の場合を除き、労基法32条違反となり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条1項)。また、①時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合、②時間外労働と休日労働の合計時間について、2~6か月の平均のいずれかが80時間を超えた場合には、労基法36条6項違反として、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります(労基法119条1項)。
3 実際の例と対応
実際に残業規制等などに違反した事例としては、厚生労働省が公表している実際の企業名を出しての各労働局の事例をまとめたもの(※4)や、各労働局が随時更新しているもの(※5)を見ることにより知ることができます。このような資料は、労基法等に違反した企業が掲載されているため、ブラック企業リストなどと呼ばれていたりしているようです。残業規制違反の例として公表されているものについては、具体的な労働時間は明記されていませんが、「労働者2名に、月100時間以上の違法な時 間外労働を行わせたもの」や「労働者2名に、法定の除外事由がないにもかかわらず違法な時間外労働を行わせたもの」といったものがあります。残業規制に違反した場合、このように企業名を公表されるリスクを念頭に置かなければなりません。
残業規制違反が生じてしまい、行政からの調査等を受ける際にはその初動が非常に重要になります。なぜ残業規制の違反が生じてしまったのかという原因等の速やかな分析、その分析に基づく今後の対応策や解決策の提示が必要となります。そういった検討を進めるためには、法的な観点が必須となりますので弁護士などの専門家への相談を早めに行い、会社としての問題解決への方向性を固めることが第1歩となります。
以上
引用:
※1 https://www.torikai.gr.jp/columns/detail/post-28095/
※2 https://www.torikai.gr.jp/columns/detail/post-28150/
※4 https://www.mhlw.go.jp/content/001150620.pdf
※5 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/jirei_toukei/souken_jirei.html
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