2024年問題~建設業界の取組み~
1 2024年問題とは
2024年問題とは、建設業、自動車運転業における残業規制に関する上限規制が2024年4月1日から開始されることによって生じる工事の遅れや物流の停滞が生じるという問題です(残業規制の対象には医師も含まれますが、ここでは説明の対象から除外します)。その概略については、「建設業、自動車運転業、医師の皆さん、残業規制が変更となるのをご存知ですか」(※1)に記載しています。
今回は、2024年問題に対する建設業の具体的な取組みについて取り上げます。建設業における残業規制は、特別な事情があって労使が合意する場合であっても、①時間外労働は年720時間、②時間外労働+休日労働 は月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とし、原則である月45時間を超えることができるのは、年6か月までとされます(ただし、災害時における復旧及び復興事業の場合は②は適用除外となります)。
2 対応策の例
建設業における2024年問題に対応するための方向性として、日本建設業連合会が掲げているのは「週休二日制」の導入です(※2)。工期の見直しを行い、4週8休を実現することとしています。
それでは、実際の各企業はどのような対応を行っているのでしょうか。例えば、清水建設や大林組では週休2日を確保するために、受注自体を制限しています(※3)また、清水建設、竹中工務店ではNТТと提携し、週休2日を確保するために、施工効率のアップを図るために施工管理情報を、工程表の計画から作業日報に至るまでデジタル化し、これらを連携するという建設現場のDX化を進めています(※4)。積水ハウス建設では、住宅建設に携わる大工の採用人数を今後2年間で3倍超に増やし、給与も大幅引き上げ、完全週休2日制、男性育休取得率100%とするといった処遇面での改善とともに、社内における大工の呼び名を「クラフター」などに変更することによって若者のイメージの変化を図るとしています(※5)。また、大和ハウスでは、建設現場で自走してねじや木くず、砂利などを掃除するロボットを導入するといったIТ技術の活用により業務の効率化を図るとしています(※5)。他にも、女性の人材確保を図るという観点から、大阪の地場ゼネコンである三和建設(大阪市淀川区)では、本社隣接の企業主導型保育園の導入や生理休暇の有休化、不妊治療補助金制度の導入を行っています(※6)。
3 検討
2024年問題に対する上記のような対応策は、①処遇改善による人材確保、②業務効率化・施工効率化の向上に向けたものといった観点に整理することができます。このような対応策は、体力のある大手企業等であればとることができますが、その下請けとなる中小や零細企業が同じような対応策をとることは容易ではありません。大手が上記のような改革に着手し2024年問題に対応していく以上、建設業界は半ば強制的に変わらざるを得ない状況になっているといえます。
以上
引用:
※1 https://www.torikai.gr.jp/columns/detail/post-27816/
※2 https://www.nikkenren.com/2days/action.html
※3 2023年8月25日付け日本経済新聞
※4 2023年7月11日付け日本経済新聞
※5 2023年7月15日付け産経新聞
※6 2023年5月24日付け日本経済新聞
投稿者等 | |
---|---|
業務分野 |
関連するコラム
-
2024.10.11
奈良 正哉
東大授業料値上げ
東大が授業料を値上げする。記事によれば20年ぶりだそうだ。もやしや卵も最近は値上げをしている。 …
-
2024.10.10
奈良 正哉
中国株大反騰
中国株が大反騰した。政府の景気刺激策が好感されて、中国株アンダーウエイトが急激に巻き戻されていると…
-
2024.10.09
奈良 正哉
石破氏のブレブレ発言
石破新総裁のブレブレ発言にも市場は慣れてきたようだ。彼が何を言おうが言わなかろうが市場は反応しなく…
-
2024.10.02
奈良 正哉
副大統領候補討論
先日のトランプ・ハリス討論については、ハリス優勢という評価が多かったように思う。同時に討論会の影響…
横地 未央のコラム
-
2024.09.17
横地 未央
フリー素材の落とし穴
1 はじめに 2024年8月21日、滋賀県大津市は公民館の広報誌に使用したイラストに著作権侵害があっ…
-
2024.07.16
横地 未央
AIは発明者になれるのか~東京地判令和6年5月16日判決~
マイクロソフトの共同創業者のビル・ゲイツ氏が、「生成AIは携帯電話とインターネットに匹敵するほど革命…
-
2024.06.18
横地 未央
公益信託に限られないその他の新たな公益活動の担い手について
1 はじめに 今国会で公益信託に関する改正法案が成立し、2026年4月以降から新しい公益信託制度が始…
-
2024.05.14
横地 未央
障害のある人への「合理的配慮の提供」はできていますか
2024年4月1日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」と…