「ステマ」規制が変わります!
1 ステマとは
ステマとは「ステルスマーケティング」の略称です(以下「ステマ」といいます)。ステマは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを識別することが困難であると認められるもの」をいいます(※1)。ステマが問題となった例としては、2012年、実際にはオークションサイトで落札していないにもかかわらず、芸能人が「オークションサイトで激安で商品を落札した」とブログに投稿し、謝礼を受け取っていたといういわゆるぺ二オク事件や、2019年、「アナと雪の女王2」に関するクリエイターの感想をPRと明記しない形でSNSへの投稿が行われていたもの(※2)が挙げられます。
2 「ステマ」規制の概要
⑴ 改正の経緯
ステマは、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すため、消費者が表示全体から抱く印象・認識と実際のものに乖離がある場合、消費者には誤認が生じるという問題点があります(※3)。そこで、消費者庁は、2022年9月から「ステルスマーケティングに関する検討会」を開催し、ステマの実態や規制の在り方について議論をしました(※4)。同年12月には、報告書が取りまとめられました。そして、消費者庁は、その報告書に基づき、ステマを不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます)の不当表示の対象とする告示を発出しました(2023年3月28日内閣府告示第19号)(※1)。
⑵ 「ステマ」規制の内容
景表法は、「不当な表示」として、①優良誤認表示(商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示)、②有利誤認表示(商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示)、③その他誤認されるおそれのある表示を定めています(景表法5条)。今回の改正により、③に該当する表示に新たにステマが加わることになります。告示の定めは非常にシンプルであるため、詳細な説明は、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(以下「本運用基準」といいます)に定められています(※5)。
本運用基準では、上記ステマの定義のうち、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」についての考え方として、外形上第三者の表示のように見えるにもかかわらず、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合をいうと示しています。また、本運用基準では、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」かは、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断するとしています。
3 違反した場合
ステマ規制は、本年2023年10月1日から施行されます。ステマ規制に違反している場合、景表法に違反する不当な表示に当たり、措置命令の対象となります(景表法7条)。措置命令を受けた場合、広告を依頼した事業者名を含め消費者庁等のホームページで措置命令の内容につき公表されます(※6)。あくまで、今回の公表の対象となるのは、広告を依頼した事業者名のみです。さらに、措置命令に違反した場合、行為者に対し、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が処せられることがあります(景表法36条1項)。この場合において、事業者自体に3億円以下の罰金、事業者の代表者にも300万円以下の罰金が科されるおそれもあります(景表法38条、同37条)。
以上
引用:
※1 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示 (caa.go.jp)
※2 「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び|企業情報|ディズニー公式 (disney.co.jp)
※3 ステルスマーケティングに関する検討会報告書 (caa.go.jp)
※4 ステルスマーケティングに関する検討会 | 消費者庁 (caa.go.jp)
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