内部統制と成長戦略 内部統制は会社を成長させる礎

内部統制は会社を成長させる礎

今回で最終稿となる。そこで、内部統制が会社の成長の礎となる会社成長の原理原則を述べたい。私は法律家であるから、会社の成長の原理原則を述べる資格がないように見える。しかし、人間として生まれたからには、生まれた使命があり、人間として生涯成長し続けることが重要だと私は考えている。そのため、私が人間の成長に興味関心を持つことは必然であると考えている。しかも、国家も、会社も、人間が創り、人間が運用する組織は、その組織を運営する人間の成長になくして、成長はありえない。
つまり、人間の創る組織の盛衰は人間にかかっている。結局、人間の成長の原理原則を理解することは、同時に、人間の創る組織である国家、会社の原理原則を理解することになる。その意味では、私が人間の成長の原理原則を論じ、それを国家とか会社の成長の原理原則に及ぼすことは当を得ていると思われる。
国家で言えば、日本と英国は似ている。島国であり、本来の領土は小さい。ところが、英国は、産業革命を興し、世界の最強の国家に成長した。日本は明治維新を経て、富国強兵策を採用し、短期間のうちに世界の列強の仲間入りをするまでに成長した。英国と日本の両国が成長したのは、組織成長の原理原則を忠実に実行したからに他ならない。
この島国の小国を世界の強国に成長させた組織成長の原理原則を忠実に実行すれば、現在、吹けば飛ぶような小さな会社でも強い体質の大企業に成長するのはそう難しいことでない。衰退している大企業でも、大いに将来の成長を期待できるみずみずしい企業に変身させることは容易である。
では、人間の成長の原理原則は何か。それは、次の一文に尽きる。「自助の精神は、人間が真の成長を遂げるための礎である」
真理は単純であり、明確である。そのため、真理の応用は無限である。左記の一文は、サミュエル・スマイルズ著・竹内均訳「自助論」(三笠書房)にある。この真理を理解し、応用すれば、人間は、人間として生涯成長が保証され至福の人生を歩めるし、人間としての社会的価値を高め続けることから社会的成功もそう難しいものではなくなる。
この人間の成長の原理原則を、国家の運営、会社の運営に、自在に応用すれば、国家は衰退を免れて、成長を遂げ、繁栄をもたらすことができるし、会社も恒久的成長を遂げることが用意になる。その際、次の言葉は重要である。「国家は一人によって興り、一人によって滅ぶ」
このことは、会社でも同じである。この言葉は、組織の最高指導者の人間的成長が組織の盛衰を決定することを意味する。会社であれば、最高経営者、もう少し広げると経営陣の人間としての成長が会社の盛衰を決定づけることになる。
英国を最強の国家にしたのは、自助の精神、独立自尊の精神を備えた英国民がいたからであり、そのような自助の精神を持った英国民を育てた人間修養のできた国家の指導者の指導によるものである。明治日本も同様である。
これを会社的に応用すればいい。自助の精神満ちた社風にすることである。社風は、内部統制に関する規律では「統制環境」という言葉を用いている。経営者が内部統制の本質を理解し、自助の精神で内部統制を実行し、自助の精神に満ちた社風を形成すれば、会社は必然性を持って成長する。これは会社成長の原理原則によるのである。今求められている内部統制は、法律の規律を超えた経営品質に光を当てることであり、自助の精神をもった経営者・従業員による社風を作り上げることである。
内部統制は会社を成長させる礎となる。(おわり)
(以上、生産性新聞2007(平成19)年5月25日号より転載)

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