民事信託による事業承継
事業承継については、事業承継税制特例が注目の的だが、他方信託による事業承継も徐々に認知されつつあるようだ。専門家の書く論考だけでなく、一般紙にも記事が掲載されるようになっている(2月16日日経)。事業承継税制特例は、事業承継による税負担を特例的に猶予しようというものだが、適用要件やその後の管理負担、経営体制への制約など、取組むには厳しいハードルがある。なによりもそのハードルになるのが、現経営者は即時に経営権を手放さなければならないことだ。このことへの抵抗感は人によりかなり強い。その点信託なら、経営権を現経営者に留保したまま、自社株の承継ができる。また、現経営者と後継経営者間の契約に過ぎないから、設計の柔軟性に富み、かつ取組後の追加・変更・終了も容易だ。黄金株よりも手続きは軽い。反面税制メリットはないが、事業承継において税務は唯一の考慮点ではない。民事信託は今後ますます注目を集めそうだ。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
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