驕れるもの久しからず

 昨夜からの報道はカルロスゴーン氏逮捕一色だ。少なくない日本人のこの報道への受け止め方は「驚き」と同時に「ざまぁみろ」であったかもしれない。強気一辺倒で時に傲慢にも映るその振舞いと、毎年10億もの報酬を得ていることは本能的な反感を呼ぶ。「驕れるもの久しからず」や「権力は腐敗する」といった言葉を思い起こした人も多いだろう。とは言え今回の事件はそのようなやっかみとは無関係だ。

 法律家としては、内部通報が具体的にどのように機能したのか、司法取引はどのようになされたのか、有価証券報告書への虚偽記載が容疑事実のようだが、別の見方からすれば、その差額の50億円は同氏によって特別背任や業務上横領など不正に得られた可能性があり、かつ不正な金だから、適正に税務申告されていない可能性もある。すでに日産が公表している事実に加え、今後捜査の進展に従ってどのような事実が明らかになり、どのような容疑が加算されるのか興味は尽きない。

 さて、当日の記者会見は、西川社長がただ一人で行っていた。会社の究極のスキャンダルを当日発表するのにたった一人で臨んだことについては、事前の十分な準備をうかがわせると同時に、経営者としての気概を感じさせる。ゴーン氏がいなくたって、日産には西川氏がいる、という印象を強く持った。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

関連するコラム

奈良 正哉のコラム

一覧へ