株式移転により株式移転完全子会社となった会社が、保有していた自己株式について割当を受けた株式移転完全親会社の株式の取得価額が問題となった事例

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「株式移転により株式移転完全子会社となった会社が、保有していた自己株式について割当を受けた株式移転完全親会社の株式の取得価額が問題となった事例」(東京地裁平成23年10月11日判決)

(要旨)

株式移転(税法上の適格株式移転)により、株式移転完全子会社が保有していた自己株式に対し、株式移転完全親会社株式が割り当てられ、その後、当該親会社株式は第三者に譲渡されたことに関し、当該譲渡に係る親会社株式の取得価額が争われた事件である。適格株式移転では、株式移転により受け入れた株式移転親会社株式の取得価額は、それと引換に提供された自己株式の価額を引き継ぐこととされている(法人税法施行令119条1項10号)。そこで、そもそも本件株式移転完全子法人が保有していた自己株式の価額がいくらであったのかが争点となった(課税庁は、自己株の帳簿価額は零になるとし、原告は当該自己株式の取得時の価額等によるべき旨を主張。)。判旨は、平成18年税制改正後の法人税法上、自己株式は消却されたのと同様に扱われることとなったのであり、資産としての価値がないものとして扱われるとの認識を根拠に、自己株式の帳簿価額は零円になるとの判断を示した(請求棄却)。なお、東京高裁平成24年6月20日判決は、控訴を棄却している。

執筆者 弁護士 島村 謙   「税と経営」(第1805号に掲載済)

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