今週の名言 第8回 2004.05.21
Thursday, May 21, 2004
「企業の業績不振の原因を外に求めるな。不況、デフレなどの外部的要因に求めるのは、たんなる責任逃れの口実に過ぎない。業績不振の原因は社内にあるのだ」
この言葉は、日産のゴーン社長のものである(田原総一朗「達人・田原総一朗が引き出す経営の極意」幻冬舎刊)。これは、すべてに通じる原理・原則である。
現在の我々の姿という外部要因は、過去の我々自身の考えという内部要因に端を発する。つまり、自分の考えという人間内部の脳の働かし方が集積したのが現在の自分である。
若いときに、将来、首相や大統領になりたいと思い描いて、現に首相や大統領になった者は多い。中曽根元首相もそうであるし、クリントン元米国大統領やマルコス元フィリッピン大統領もそうである。
この脳の働かせ方は、万人に平等に与えられている。しかも、脳の働かせ方が人間社会のすべての富を創るのである。その意味で本質的に人間は平等である。その証左は、貧乏に育った者に大成功者が多いことにある。松下電器の創業者である松下幸之助氏、USスチールの創始者であるアンドルー・カーネギー氏しかりである。このように、人生やビジネスの成功で大切なのは、内部的要因なのである。
国家の衰退は、外部的な侵略によるよりも、内部の腐敗、特に支配階級の人々の腐敗によるといわれている。東京地検特捜部は、戦後の日本において、ソ連等の外部勢力で日本が滅びることはない、むしろ、日本の支配層の内部的腐敗で日本は滅びる危険があるとし、その内部的腐敗を防止するために、汚職・経済事犯・選挙違反等を摘発する専門部門として設けられた組織である。
このように、人間社会においては、外部要因は内部要因によって支配されることが多いのが原理原則である。日本の企業社会の将来を占うのに必要なのは、現在の内部要因である創業者精神が盛んかどうかである。ところが、最近の日本の創業者精神は、国際競争力年鑑では、先進国中で最下位を占めている。このような内部的な精神の弱さでは、将来に明るい展望を持つことはできない。
そのために、最近は教育問題を取り上げる人が多くなった。もちろん、教育は重要であるが、現状の打開を教育改革に待たなければならないというのでは、遅きに失する。そこで、学校教育の改革は必要であるが、同時に、社会人教育を盛んにして、大人の改革をすることも緊急課題である。その意味では、企業各社あるいは社会の中に、内部的要因で外部環境を良い方向に変えていく人材教育が重視されなければならない。そうすることで、外部的要因を業績不振の原因にするような気骨のない経営者はいなくなるであろう。我々は、和魂洋才で日本を先進国に導いた明治の精神に立ち帰る必要がある。
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