経営者に必須の法務・財務 経営者が知るべき改正商法[2]
今回は、端株のことを書く予定であったが、平成14年の通常国会にアメリカ型ガバナンスの取締役会の改正案が上程されるので、重要性が高いこの点に関して書くことにしたい。平成14年の通常国会で商法改正が成立すると、日本の大企業は、従来型のガバナンスを採るか、アメリカ型のガバナンスを採るかの選択肢が与えられる。
現在の経営者の大半は、従来型のガバナンス採ると考えられる。その意味では、アメリカ型のガバナンスを採る企業は少数であると予想できる。将来においては、いずれが多数派になるかは、判然としない。ここでは、従来型のガバナンスとアメリカ型のガバナンスの違いを明らかにしよう。
アメリカ型のガバナンスの特徴は、経営者を人事評価しようとするシステムであることである。つまり、取締役と経営者を別にして、取締役に経営者を監視させ、人事評価させるのである。言い換えれば、システム的には、経営トップには人事権と報酬決定権が与えられないことになる。人事権は資格委員会が、報酬決定権は報酬委員会が持つことになる。
したがって、業績が上がらない経営トップは資格委員会の評価によって、取締役に選任されないことになりかねないし、
業績の良い経営者には報酬委員会によって巨額の報酬が与えられることが可能になる。ただ、これは理論的な問題である。アメリカの実際では、事実上経営トップが自分の友人を社外取締役に選任し、その社外取締役が人事権と報酬決定権を持つのであるから、経営トップが事実上は人事権等を持っているといっても良いかもしれない。
しかし、こういうシステムがある以上は、株主にプレッシャーグループが出てくると、株主のプレッシャーにより、資格委員会が経営トップを辞めさせることが起こりうる。その限りにおいて、アメリカ型のガバナンスは経営者にある種のリスクをおわせるものといえる。
これに反して、従来型は、経営トップに事実上の人事権と報酬決定権が与えられるものである。それでも、社会的なプレッシャーとか強い株主のプレッシャーがあれば、経営トップが辞任に追い込まれる事はありうる。ただ、アメリカ型とは異なるので、システム的に業績が上がらない経営トップを辞めさせるのは、なかなか難しい。人事評価がシステム的に独立性を持っていないからである。
現在の日本企業が直面している課題は、企業の経営効率をいかに高めるか、企業の国際的競争力を強化するかである。そのために、経営トップの組織の中における位置付けに手を付けるかどうかが、従来型とアメリカ型の選択肢になる。トヨタのように従来型で高い経営効率を維持している企業はアメリカ型を採用する必然性はない。従来型でも十分に経営効率を上げられる企業はそれでも良い。
しかし、経営者のプロ化を図ることが必要であると考える企業は、経営者をプロ化しやすいアメリカ型を採用すればよい。経営者としてのリスクが高いのがアメリカ型であるから、経営者が経営者でありつづけるためには、立派な業績を残しつづけるしかないからである。
(文責 鳥飼重和)
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