会社法QA 第21回 解散・清算
※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。
【テーマ】 解散・清算
【解説】
1 通常の清算手続に対する裁判所の監督の廃止
旧商法のもとでは、清算手続は裁判所の監督のもとに進められていました。例えば、解散事由や年月日、清算人の住所・氏名を裁判所に届け出ることや(旧商法418条)、財産目録や貸借対照表を作成し、株主総会の承認を得た上で裁判所に提出すること(旧商法419条3項)、書類保存者の選任を裁判所に請求すること(旧商法429条)が要求されていました。
しかし、通常の清算手続は、現有財産を処分し、会社債権者に弁済をし、株主に対して残余財産を分配することを淡々と進めるだけですから、裁判所が積極的に監督する必要性は乏しいと言われていました。そこで、会社法では、通常の清算手続については、裁判所の監督の制度を廃止しています。その結果、子会社を整理したいときなどに、清算手続を利用することが容易になったといえます。
なお、①清算の遂行に著しい支障を来たすべき事情があること、及び②債務超過の疑いがあることが、特別清算開始事由となっており(会社法510条)、債務超過の疑いがあるときは、清算人は特別清算開始の申立てをしなければなりません(会社法511条2項)。特別清算手続については、裁判所の監督のもとに進められます。
2 債権申出の公告は1回で足りる
旧商法では、清算人は、就職の日から2ヵ月以内に少なくとも3回、債権者に対し、2ヶ月以上の一定期間内にその債権の申出をするように官報に公告しなければならないとしていました(旧商法421条1項)。
しかし、実務上は、3日間連続して官報公告を行うのが通常であり、3回の公告を義務づける合理性に乏しいと言われていました。そこで,会社法では、債権申出の公告は、1回で足りるものとしています(会社法499条1項)。
3 清算株式会社が行うことができない行為
清算株式会社は、債権者に対する債務の弁済を優先し、その後に株主に対して残余財産の分配をします。そのため、清算株式会社が株主に対して行う払戻は残余財産の分配に限定され、自己株式の取得(無償取得や解散前の買取請求に応じた取得等を除く)や剰余金の分配をすることはできません。また、株式交換及び株式移転をすることもできません(会社法509条1項、2項)。さらに、清算株式会社が存続会社等となる吸収合併、吸収分割をすることもできません(会社法474条1号・2号)。
【質問】
子会社の清算手続中に簿外債務があることが発覚し、債務超過の状態にあることが判明しました。このような場合、清算手続中の子会社に株式を発行させて当社が出資することにより債務超過状態を解消させることはできますか。また、社債を発行させて当社が引き受け、清算手続に必要な現金を確保させることはどうでしょうか。
【選択肢】
[1] 清算株式会社が株式を発行することはできないが、社債は発行できる。
[2] 清算株式会社であっても、株式や社債を発行することができる。
[3] 清算株式会社は、株式も社債も発行することはできない。
【正解】 [2]
【解説】
1 清算株式会社の株式・社債の発行の可否
清算株式会社が行うことができない行為は本文の解説で述べたとおりです。
会社法では、清算株式会社について、株式及び社債の発行を禁止する規定は設けられていません。
そればかりか、清算株式会社が株式、新株予約権、社債、新株予約権付社債を発行することができることを前提とする規定があります(会社法487条2項1号、489条6項5号)。
つまり、清算株式会社も、株式や社債を発行することができます。
2 清算株式会社は無制限に株式や社債を発行できるか
会社法では、清算株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす、と規定されています(会社法476条)。
あくまでも「清算の目的の範囲内」で存続しているに過ぎませんから、株式や社債も「清算の目的の範囲内」でしか発行できないと考えられます。
例えば、新規事業を立ち上げる目的で株式を発行したり、社債を発行したりすることは「清算の目的の範囲内」とはいえませんから、株式や社債を発行することは認められないと考えられます。
これに対し、親会社が子会社の清算手続を円滑に終了させるために、清算子会社が発行した株式を引き受けて資金を提供することや、清算手続中に現金が不足する場合に、清算子会社が発行した社債を引き受けて現金を支給し、清算手続を円滑に進めることなどは、「清算の目的の範囲内」といえますから、株式や社債を発行することができます。
3 質問の解答
質問の場合、子会社の清算手続を円滑に進めるために株式や社債を発行させようとする場合ですから、清算株式会社である子会社であっても、株式や社債を発行することができます。
よって、正解は[2]になります。
※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載しましたが、会社法改正に向けた動きとの混同を避けるため、平成24年12月にタイトルから「新」を削除させて頂きました。その後の改正はこちらをご覧ください。
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