新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議の最終報告の概要

1 最終報告の概要

2023年6月2日、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」に関する最終報告が公表されました(※1)。最終報告では、法人活動の自由度の拡大、自由度拡大に伴うガバナンスの充実、民間公益活動の活性化のための環境整備という観点から、公の担い手である公益法人が社会的課題への取組を継続的・発展的に実施していけるよう、時代に合わせた改革を推進するとしています。

そのような改革を推進するに当たっての具体的な改正内容としては、①収支相償原則の見直し、②遊休財産規制の見直し、③公益認定・変更手続の柔軟化・迅速化、④公益法人の合併手続の柔軟化・迅速化、⑤法人運営の透明性向上とDX推進、⑥わかりやすい財務情報の開示、⑦法人機関ガバナンスの充実、⑧事後チェックの重点化、⑨公益法による出資等の資金供給、⑩公益信託制度改革が掲げられています。

2 改正の方向性

上記の改正内容のうち、より公益法人の運営に大きな影響があると考えられるのは、①収支相償原則の見直し、②遊休財産規制の見直し、⑥わかりやすい財務情報の開示、⑦法人機関ガバナンスの充実です。

①は、公益目的事業の収入と費用について、公益目的事業全体で過去の赤字も含めた収支差に注目し、黒字がある場合は中期的(5年を想定)に収支均衡を回復するとして、効果的な資金活用が図られるようにするという内容です。

②は、遊休財産が、合理的な理由により上限額を超えた場合、超過した理由や超過額を将来の公益目的事業に使用する旨を公表することによって、法人の経営判断で必要な財産を確保し、不測の事態に対応することができる運営を可能とするという内容です。

⑥は、公益目的事業のみを実施している法人についても、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計の区分経理を求め、すべての法人において貸借対照表・損益計算書の内訳表の作成を必須とします。また、別表については、できる限り内訳表で代替することによって、廃止または記載事項を簡素化し、法人の財務内容についてわかりやすい情報開示を推進するという内容です。

⑦は、法人自らが取り組んだガバナンスの強化策(内部統制システムの整備など)を事業報告書に記載すること、外部理事・監事の導入、理事と監事の関係が相互に配偶者・三親等以内の親族等は除外することを定めることにより、法人運営の中心である理事会・理事の役割機能を強化し、法人内におけるガバナンスの充実を図るという内容です。

3 改正に向けたスケジュール

今後は、上記改正内容に関する改正法案を来年2024年の通常国会に提出する予定です。また、改正法の施行は、2025年4月を予定しています。新基準での財務諸表の作成は令和7年度決算からを予定している点など、現時点での改正内容の施行スケジュールは公表されています(※2)。今回の最終報告に基づく改正は、公益法人の運営に大きく影響があることが予想されますので、一度今後のスケジュールについて確認し、対応につき早めに検討を進める必要があります。

以上

引用:

※1 https://www.koeki-info.go.jp/regulation/koueki_meeting.html

※2 https://www.koeki-info.go.jp/regulation/pdf/20230427_05shiryo.pdf

投稿者等

横地 未央

業務分野

公益法人・医療法人等

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