未払い賃金の時効

 未払い賃金の時効は、現行民法は短期消滅時効の1年としている。労基法上の時効は労働者保護のためそれより長く2年になっている。今後民法は改正されると短期消滅時効はなくなって一律5年になる。労働者保護のための労基法の規定が2年のままだとバランスを欠く。これをどうするのかまだ議論は続いている(12月3日日経参照)。記事中企業側の抵抗の理由として、システム投資負担が挙げられているが、そもそもそのような事情が理由になるのか。大企業なら賃金管理よりもっと複雑な人事全般の管理をITでやっているだろう。中小企業でも市販の計算アプリはたくさんある。外注することもできる。ただ、中小企業にとっては未払い賃金は死活問題になりかねない。これまでサービス残業に支えられていた企業があるだろう。それがその従業員退職後に一気に5年分の未払い賃金を請求されたら払いきれず倒産の憂き目にあうところも出てくるのではないか。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

関連するコラム

奈良 正哉のコラム

一覧へ