未払い賃金の時効
未払い賃金の時効は、現行民法は短期消滅時効の1年としている。労基法上の時効は労働者保護のためそれより長く2年になっている。今後民法は改正されると短期消滅時効はなくなって一律5年になる。労働者保護のための労基法の規定が2年のままだとバランスを欠く。これをどうするのかまだ議論は続いている(12月3日日経参照)。記事中企業側の抵抗の理由として、システム投資負担が挙げられているが、そもそもそのような事情が理由になるのか。大企業なら賃金管理よりもっと複雑な人事全般の管理をITでやっているだろう。中小企業でも市販の計算アプリはたくさんある。外注することもできる。ただ、中小企業にとっては未払い賃金は死活問題になりかねない。これまでサービス残業に支えられていた企業があるだろう。それがその従業員退職後に一気に5年分の未払い賃金を請求されたら払いきれず倒産の憂き目にあうところも出てくるのではないか。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
投稿者等 | |
---|---|
業務分野 |
関連するコラム
-
2025.08.06
奈良 正哉
最低賃金「過去最高」の63円上げ
2025年度の最低賃金は「過去最高」の63円上がり、全国加重平均1,118円で決着した。それでも企…
-
2025.08.01
奈良 正哉
インドネシア人材流出
アジア各国のインデックス投信に分散投資している。その中でインドネシア株はさえない。インドやベトナム…
-
2025.07.17
奈良 正哉
本音の身の丈ガバナンス
私のコラム群のうちガバナンスに関するものを編集して、SNSのnote の創作大賞2025ビジネス部…
-
2025.07.14
奈良 正哉
暑すぎて働けない
猛暑で屋外で長時間は働けなくなっている(7月11日日経)。建設業などでは深刻だ。経営者としては、作…
奈良 正哉のコラム
-
2025.08.21
奈良 正哉
広陵高校野球部全寮制リスク
広陵高校野球部は全寮制だそうだ。野球も(勉強も?)それ以外の生活全般も狭い社会の中に閉ざされている…
-
2025.08.20
奈良 正哉
広陵高校野球部150人
広陵高校野球部への批判が止まらない。同野球部は150人の大所帯だそうだ。この点は評価できる。野球強…
-
2025.08.19
奈良 正哉
短期は米価、長期は投資
日本の農業への投資は、先進国の中では唯一減少し続けている。20年前と比較して40%減だ。単位面積あ…
-
2025.08.18
奈良 正哉
お盆休みの急騰
お盆休みの間に、株式相場はずいぶん遠くに行ってしまった。普通の人が休みの間にも、市場関係の人は熱心…