司法取引第1号のやるせなさ
三菱日立パワーシステムズという企業が、贈賄行為をした従業員を当局に「差し出す」ことにより、日本の司法取引の幕が開けた。この報に違和感というか、一種のやるせなさを感じたのは私だけではなかったようだ。会社の仕事について、数千万千の賄賂を、上司である役員の了解をとって、贈ったのであるから、企業としての犯罪であって、従業員個人はむしろ「道具」にすぎなかったのではないか。とすると、正犯である企業を免責して、道具である従業員だけを罰するのは、刑法の共犯の趣旨に反しているとも思える。こうしたことをする企業の従業員はその企業についてどういう考えを持つのだろうか。従前と同じロイヤルティを保てるのだろうか。司法取引は企業の内部統制について複雑なインパクトを与えそうだ。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
投稿者等 | |
---|---|
業務分野 |
関連するコラム
-
2025.09.10
奈良 正哉
大学の資産運用
大学の資産運用の多くは現預金のようだ(9月7日日経)。「運用」といえるかどうかははなはだ疑問だが。…
-
2025.09.08
奈良 正哉
ニデック会計不正
ニデックが会計不正の疑いで揺れている。事実はわからないが、第三者委員会が明らかにしてくれるだろう(…
-
2025.09.04
サントリー新浪氏会見
サントリー前会長新浪氏の会見の一部を見た。淡々とかつ堂々と自身の潔白を主張していた。潔白でありなが…
-
2025.09.03
奈良 正哉
サントリーの記者会見
新浪会長辞任によるサントリーの記者会見を見た。日経関連各社を除けば、無意味、無関係、重複質問のオン…
奈良 正哉のコラム
-
2025.09.16
奈良 正哉
高齢者割合増、高齢就業者増
65歳以上の高齢者の割合は29%となり世界最高だ。高齢就業者も930万人となり増加を続けている(9…
-
2025.09.10
奈良 正哉
大学の資産運用
大学の資産運用の多くは現預金のようだ(9月7日日経)。「運用」といえるかどうかははなはだ疑問だが。…
-
2025.09.09
奈良 正哉
タンス預金減少
タンス預金が13兆円減って47兆円になったようだ(9月8日日経)。金額自体は依然として膨大だが、増…
-
2025.09.08
奈良 正哉
ニデック会計不正
ニデックが会計不正の疑いで揺れている。事実はわからないが、第三者委員会が明らかにしてくれるだろう(…