連載 リスクコンシェルジュ~事業承継リスク 第18回 会社法の活用2~組織再編
1 事業承継において組織再編が有用である理由
事業承継において、後継者がいるかどうかということは、どのような事業承継の方法をとるのかに影響する重要な問題となります。そのような後継者の候補となる者が複数存在する場合、次の3つの方法が考えられます。
まず第一に、後継者を一人に絞る方法があります。すなわち、複数人いる後継者のうち、事業の経営に最もふさわしい1人のみを後継者とする方法です。この方法は、後継者とならなかった者の取扱いや、会社の事業の内容からみて後継者を一人に絞ることが望ましくない場合等の問題点があります。
第二に、複数の後継者で会社を共同経営する方法があります。ただ、この複数の共同経営者をおくという方法も、中小企業にとって経営権の分散が望ましい状態ではないということからすると、あまり良い方法とは言いきれません。
そこで、第三の方法として、事業ごとに別会社を設置して、それぞれの会社を後継者に承継させる、という方法があります。事業ごとに会社を分けて複数いる後継者のそれぞれが会社のオーナー経営者となる方法として組織再編が有効な選択肢といえます。
今回は、このような組織再編の方法として事業譲渡と会社分割の概要について説明します。
2 組織再編の方法
(1)事業譲渡
組織再編のうち、事業ごとに別会社を設ける方法の一つとして、事業譲渡があります。
事業譲渡とは、一定の事業目的のため組織化され、有機的に一体として機能する財産(工場だけでなく、ブランドや取引先等の経済的価値のあるものを含む)の全部又は重要な一部を譲渡することをいいます。
事業譲渡の基本的な性質は、個別の財産の移転という取引行為の集合体です。すなわち、事業用の財産を構成する個々の債権債務や契約上の地位を移転させることになるため、個別に債権者や契約相手方の同意が必要となります。
事業譲渡の具体的な活用方法については、次回の第19回で説明します。
(2)会社分割
会社分割とは、その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割し、包括して他の会社に承継させる方法を指します。
会社分割は、取引行為である事業譲渡と異なり、組織法上の行為で、分割の対象となる事業部門の権利義務を包括的にまとめて承継させる方法です。したがって、権利義務を移転するにあたって、個別の債権者の同意をとる必要はありません。
会社分割の具体的な活用方法については、第20回で説明します。
鳥飼総合法律事務所
※ 本記事の内容は、2013年5月現在の法令等に基づいています。
関連するコラム
-
2026.04.22
奈良 正哉
みずほ信託総合首位
みずほ信託銀行は、商品力や使いやすさによる評価ランキングで初の総合首位となった。(4月22日日経評…
-
2026.04.13
奈良 正哉
同族企業への総合助言サービス
みずほ信託銀行は、同族企業の経営・資産承継など全般にわたる助言サービスを開始する(4月7日日経)。…
-
2026.04.09
奈良 正哉
相続手続き一括化
大手金融機関が相続手続きを一括対応できるようにする(4月9日日経)。「一括」が何を示すのかわからな…
-
2026.02.26
奈良 正哉
107歳まで生きる
2100年には日本人の平均寿命は、女97歳、男91歳になるとの国連の研究がある。また2007年に日…