【最新税務裁判例】 一般財団法人がグループ会社に対して行った金銭の貸付けが法人税法2条13号の「収益事業」に該当するか否かが争われた事例 ~東京高等裁判所令和7年7月3日判決(※1)~
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【最新税務裁判例】 一般財団法人がグループ会社に対して行った金銭の貸付けが法人税法2条13号の「収益事業」に該当するか否かが争われた事例 ~東京高等裁判所令和7年7月3日判決(※1)~ |
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【最新税務裁判例】
一般財団法人がグループ会社に対して行った金銭の貸付けが法人税法2条13号の「収益事業」に該当するか否かが争われた事例
~東京高等裁判所令和7年7月3日判決(※1)~
1 はじめに
法人税法上、公益法人等は、収益事業を行う場合にのみ納税義務を負い(4条1項但書)、課税される所得の範囲は、収益事業から生じた所得に限られています(6条)(収益事業課税主義)。
この「収益事業」とは、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。」と規定され(法人税法2条13号)、これを受けて法人税法施行令5条1項は、収益事業を限定的に列挙しています。
収益事業該当性が争われた裁判例としては、宗教法人が営んでいたペット葬祭業が問題となった最高裁平成20年9月12日判決(※2)をはじめ複数の裁判例があるところ、本件は、一般財団法人がグループ会社に対して行った金銭の貸付けが収益事業(金銭貸付業)に該当するか否かが争われ、これらの裁判例に一例を加えるものであるとともに、法人税法2条13号の「継続して事業場を設けて行われるもの」の意義を裁判所として初めて示したものとして先例的な価値を有する判断であると考えます。
2 事案の概要
Xは、平成26年4月1日に、非営利型法人(法人税法2条9号の2)に該当する一般財団法人に移行し、法人税法上、公益法人等(同法2条6号)に該当します(※3)。
Xは、平成28年4月1日から令和2年10月1日にかけて、同一企業グループに属するA社に対し、6回にわたり金銭を貸し付け(本件貸付け)、平成29年12月29日から令和3年3月26日にかけて、複数回にわたり、A社から、本件貸付けにかかる利息(本件各貸付利息)の支払いを受けました。
Xは、平成30年3月期事業年度から令和3年3月事業年度までの各事業年度(本件各事業年度)の法人税につき、確定申告をしましたが、各確定申告書において、本件各貸付利息を収益事業から生じた所得に含めず、益金の額に算入していませんでした。
所轄税務署長は、本件各貸付利息は収益事業に係る所得に当たり、益金の額に算入すべきであるとして、令和4年8月12日付で、本件各事業年度の法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(併せて、「本件各処分」といいます。)をしました。
Xは、適法な不服申立てを経て、本件各処分の取消しを求めて本件訴えを提起しました。
3 争点及び原告の主張
本件の争点は複数あるのですが、本稿では、本件各貸付けが収益事業に該当するか否かという争点のみ取り上げます。この争点は、さらに、①本件各貸付けが法人税法施行令5条1項3号の「金銭貸付業」に該当するか否か、②本件各貸付けが法人税法2条13号の「継続して事業場を設けて行われるもの」に該当するか否かの2つに分かれます。
以上の争点について、原告の主張の概要は以下のとおりです(被告の主張は省略します。)。
(1)争点①について
法人税法施行令5条1項3号の金銭貸付業に該当するためには、①収益を目的として、②反復継続的に行われる行為であることが必要である。
本件貸付けは、利息を分配する等の営利目的ではなく、Xが実施する公益事業に充てることを目的としたものであり、収益を目的としたものではない。
また、Xは、A社に対して年に1回金銭貸付けを行っているのみで、金銭貸付けを反復継続的に行っておらず、業として行うものではない。
したがって、本件各貸付けは、法人税法施行令5条1項3号の金銭貸付業に該当しない。
(2)争点②について
法人税法2条13号の「事業場」とは、工場、事務所、店舗のように一定の場所において相関連する組織の下に継続的に行われる作業の一体をいう。
Xは、経理事務をA社の経理部に委託しているため、本件各貸付けが行われたのはA社の経理部の施設である。
このように、Xは、金銭貸付業の拠点となる、店舗その他の事業活動の拠点となる一定の場所を設けていないから、本件各貸付けは、「事業場を設けて行われるもの」に該当しない。
4 裁判所の判断
裁判所は、第一審、控訴審とも、X(原告、控訴人)の請求を棄却しました。
以下では、第一審(東京地方裁判所令和6年12月18日判決(※4)の判示を示します。
(1)争点①(本件各貸付けが法人税法施行令5条1項3号の「金銭貸付業」に該当するか否か)について
裁判所は、「金銭貸付業」に該当するか否かの判断基準について、以下のように判示しました(以下「判示1」ともいいます。)。
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法人税法が、公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得について同種の事業を行うその他の内国法人との競争条件の平等を図り、課税の公平を確保するなどの観点からこれを課税の対象としていることに鑑みれば、公益法人等が行う貸付けが法人税法施行令5条1項3号の「金銭貸付業」に該当するか否かは、当該事業が公益法人等以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である(最高裁平成20年9月12日判決)。 |
以上の判示に続けて、裁判所は、Xによる本件各貸付けの事業の形式は、金融機関が企業に対して通常業務として行う融資と異ならないものであり、公益法人等以外の法人が一般的に行う事業と競合するものであり、本件各貸付け及び本件各貸付利息の金額、利率、回数等を踏まえると、本件各貸付けは、法人税法施行令5条1項3号の金銭貸付業に該当すると認められると結論付けました。
(2)争点②(本件各貸付けが法人税法2条13号の「継続して事業場を設けて行われるもの」に該当するか否か)
裁判所は、「継続して事業場を設けて行われるもの」の意義について、次のように判示しました(以下「判示2」ともいいます。)。
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法人税法2条13号に規定する「継続して事業場を設けて行われるもの」とは、通常相当期間にわたり継続して行われるもの又は定期的に若しくは不定期に反復して行われる事業であって、一定の場所・施設を設けて行うものをいい、この要件は、臨時的、一時的に行われる事業を収益事業から除く趣旨で定められたものと解される。したがって、上記要件にいう「事業場を設けて」とは、その事業活動にとって拠点となるべき場所があるという意味であり、当該事業を行うために特別の施設を設けることまでを要するものではなく、既存の施設を利用して収益事業を行う場合も含まれると解するのが相当である。 |
以上の判示に続けて、裁判所は、Xは、(A社の経理部の施設ではなく)主たる事務所の所在地とされている建物内の事務所を収益事業の拠点としていると認められ、Xには、金銭貸付業を行うに当たり、拠点となるべき物的施設である「事業場」があるといえるから、本件各貸付けは、法人税法2条13号に規定する「継続して事業場を設けて行われるもの」に該当すると結論付けました。
5 検討
(1)本件各貸付けの「金銭貸付業」該当性について
前述の最高裁平成20年9月12日判決(平成20年最高裁判決)は、宗教法人が行っていたペット葬祭業が、法人税法施行令5条1項の物品販売業(1号)、倉庫業(9号)、請負業(10号)に該当する否かが問題となった事案であり、金銭貸付業(3号)該当性が問題となった本件とは、適用法令が異なり、その射程範囲は問題になりえます。
本判決は、判示1において、同最高裁判決が示した、法人税法が、公益法人等の収益事業から生じた所得に対して課税する趣旨(「その他の内国法人との競争条件の平等を図る」といういわゆるイコール・フッティング論)、及び、その判断基準(公益法人等以外の法人との事業の競合の有無等)を採用し、金銭貸付業の該当性も、事業の目的、内容、態様等を社会通念に照らして総合的に判断すべきとする判断を示しました。
同最高裁判決の判断については、「公益法人等の収益事業からの所得に法人税を課す趣旨から最高裁が導出したものであるから、他の宗教法人が行う別の事業はもちろん、公益法人等が行う事業一般にも妥当する、法の一種と理解するべきであろう。」と評価されており(※5)、本判決の判断は妥当であると考えます。
公益法人等の行う事業の「金銭貸付業」該当性が争われた裁判例はこれまでほとんどなかったものと思われ、実務上参考になる判断であると考えます。
(2)「継続して事業場を設けて行われるもの」の意義について
本判決は、判示2において、法人税法2条13号が「継続して事業場を設けて行われるもの」という要件の趣旨は、「臨時的、一時的に行われる事業を収益事業から除く」ことであると述べました。
そのうえで、かかる趣旨を根拠に、「事業場を設けて」とは、その事業活動にとって拠点となるべき場所があるという意味であり、当該事業を行うために特別の施設を設けることまでを要するものではなく、既存の施設を利用して収益事業を行う場合も含まれると解するのが相当である、との判断を示しました。
かかる判断のうち、「既存の施設を利用して収益事業を行う場合も含まれる」という部分は、法人税基本通達15‐1‐4の規定と同じであり、裁判所は同通達の内容が法人税法の正しい解釈に合致するものであることを示しました。
そして、上記の「継続して事業場を設けて行われるもの」という要件の趣旨についての判断(臨時的、一時的に行われる事業を収益事業から除くこと)、及び、「事業場を設けて」の意義についての判断(その事業活動にとって拠点となる場所があるという意味)は、同通達も明言しておらず、これらの判断は先例的意義があると考えます(※6)。
※1 TAINS Z888-2769
※2 訟月55巻7号2681頁
※3 Xの設立時期及び、Xが行っていた収益事業以外の事業(非収益事業)の内容は、公表された判決文からは不明です。
※4 TAINS Z888-2790
※5 小塚真啓『租税判例百選(第7版)』別冊ジュリスト253号101頁
※6 『法人税法基本通達逐条解説(第10版)』1483頁参照
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