【最新税務裁判例】 外国子会社合算税制における「外国関係会社」の意義を定める租税特別措置法40条の4第2項1号等の「株式又は出資」の意義が争われた事例 ~東京地方裁判所令和7年9月12日判決(※1)~

著者等

橋本 浩史

出版・掲載

【最新税務裁判例】 消費税の仕入税額控除の計算方法である個別対応方式における「用途区分」の方法、「売上げに係る対価の返還等」の意義が問題となった事例 ~東京地裁令和7年1月24日判決TAINS Z888-2735~

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税務紛争

詳細情報

【最新税務裁判例】

外国子会社合算税制における「外国関係会社」の意義を定める租税特別措置法40条の4第2項1号等の「株式又は出資」の意義が争われた事例

~東京地方裁判所令和7年9月12日判決(※1)~

 

鳥飼総合法律事務所

パートナー弁護士 橋本浩史

 

1 はじめに

外国子会社合算税制は、外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の法人・居住者の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。

同税制については、平成29年度税制改正において、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」とのBEPSプロジェクトの基本的な考え方等に基づき、日本企業の健全な海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応するために大幅な改正が行われました(※2)。

本件は同改正前の外国子会社合算税制に係る法令の適用が問題となった事例ではありますが、本判決が示した租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの。以下「措置法」といいます。)40条の4第2項1号等の「株式又は出資」(以下、「株式等」ともいいます。)の意義に係る判断は現行法でも妥当するものと思われ、また、我が国の法制度と異なる外国の法制度に基づき設立された団体(法的主体)に対する我が国の法令の適用の可否をどのように判断するかという点でも大変興味深い事案です。

本判決は控訴されており、上級審の判断が注目されます。

 

2 法令の定め

外国子会社合算税制に関する法令は大変複雑なのですが、本件の事案を理解するために以下の条項を紹介します。

措置法40条の4第1項は、居住者及び内国法人等により、その発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を直接及び間接に保有されている外国法人(外国関係会社)で、その所得に対して課される税の負担が我が国と比べて著しく低いものとして政令で定めるもの(特定外国子会社等)の所得のうち、その特定外国子会社等の10%以上の株式又は出資を直接及び間接に保有する居住者の当該保有する持分に対応する部分の金額(課税対象金額)を、その居住者の雑所得に係る総収入金額とみなして課税する、と規定しています。

同条2項1号は、「外国関係会社」の意義を、外国法人で、その発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに居住者等が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合が50%を超えるものとしており、本件では、同項の「株式又は出資」の意義が問題になりました(※3)。

 

3 事案の概要

原告は、日本国内に住所を有する「居住者」(所得税法(以下「法」といいます。)2条1項3号)でした。

A国に所在するA財団(本件財団)は、甲社を信託設立者として本件財団を設立するという原告の指示により、A国の法律に基づき設立された法人格を有する財団でした。

本件財団の定款によれば、同財団の「Stiftungskapital」(※4)は3万スイスフランであり、原告は、同財団の設立に当たり、同額を払い込みました。

B法人(本件外国法人)は、B国会社法に基づき設立された法人であり、その主たる事務所はB国にありました。

本件財団は、本件外国法人の発行済株式等の全部を有していました。

B国会社法187条1項は、同法に基づいて設立された又は継続する会社又はその社員又は株主に対して、事業認可料金、所得税、法人税、キャピタルゲイン税、その他会社に又は会社から生じる、又は会社又は株主が当事者となる取引による収入又は配当に対して課される税金が課されることはない旨を規定していました。

原告は、平成29年分及び平成30年分(本件各年分)の所得税及び復興特別所得税(所得税等)について、いずれも法定申告期限までに確定申告しました。

これに対し、所轄税務署長は、原告は、本件財団を通じて、本件外国法人の発行済株式の全部を間接保有しており、本件外国法人は措置法40条の4第1項の「特定外国子会社等」に該当することなどを理由として、B法人の所得のうち所定の基準により計算した課税対象金額を原告の雑所得にかかる収入金額とみなして加算することなどを内容とする本件各年分の所得税等に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(本件各処分)をしました。

本件各処分に対し、原告は、本件財団には保有の対象となるべき「株式又は出資」(以下「株式等」ともいいます。)は存在しないから、原告がその全部を保有することはあり得ず、そのため本件外国法人の発行済株式の全部を間接保有していることもなく、本件外国法人は「外国関係会社」(同条2項1号)に該当しないから、同条1項は適用されない旨主張して、適法な不服申立てを経て、本件各処分の取消しを求めて提訴しました。

 

    原告

     ↓ 3万スイスフラン払込み

 本件財団(A国財団)

     ↓ 発行済株式等の全部を保有

 本件外国法人(B国所在)👈所得に対して課される税なし

 

4 争点及び原告の主張

本件の争点は、原告が本件財団の発行済株式等の全部を有しているか否かでした。これが「有していた」ということになると、本件外国法人は「外国関係会社」に該当し、本件各処分は適法ということになります。

かかる争点について、原告は、以下のとおり主張しました(なお、被告の主張は裁判所の判断とほぼ同じなので、省略します。)。

  • 租税法上定義されていない「株式等」(株式又は出資)の意義については、会社法等の用語の意味を参照すべきであり、これは、法人に対する出資の対価として付与された法人の社員としての地位であり、かかる地位に基づいて出資の価額に応じて法人から経済的利益を受ける権利であって、会社を支配し得る単位化された持分としての法的地位、すなわち社員権(自益権及び共益権)に相当する権利ないし地位を意味するものと解される。
  • 租税法については、法的安定性の観点から厳格な文理解釈が要求されることからすれば、かかる株式等の意義は外国法に基づいて設立された法人にも同様に妥当し、実質的な観点からみだりに拡張解釈することは許されないというべきである。そうすると、ある外国法人に株式等が存在するというためには、法人に対する出資の対価として法人から付与される社員権、すなわち、出資に応じた経済的利益を受ける権利及び経営に参加する権利が存在する必要があると解される。かかる出資者によって保有される社員権が「株式等」に相当し、出資の対価として社員権が付与されることが株式等の「発行」に相当するものである。
  • A国において、財団では、出資者で構成される、自らの経済的利益のために財団の経営に関与するような機関は存在せず、財団の設立者は、設立のための財産を拠出(寄贈)することが定められているものの、それによって社員権、すなわち、出資に応じた利益配当・残余財産分配請求権といった経済的利益を有することや経営に参加する権利を有することが定められているものでもない。
  • 本件財団の「受益者」や「特別組織の構成員」としての原告の地位は、飽くまでも定款等によって出資とは関係なく定められるものであり、その権利内容は何ら出資に応じたものではなく、出資との対価関係を欠くのであるから、出資によって法人から付与される社員権とは本質的に異なるものである。
  • 本件財団に株式等が存在するとは認められない。

 

5 裁判所の判断

裁判所は、以下のように判示して、原告の請求を棄却しました。

(1)「株式又は出資」(株式等)の意義

裁判所は、措置法40条の4が規定する「外国子会社合算税制」の趣旨等について、以下のように述べました。

これは、居住者等が、法人の所得等に対する租税の負担がないか又は極端に低い国又は地域に法人を設立して経済活動を行い、当該法人に所得を留保することによって、我が国における租税の負担を回避しようとする事例が生ずるようになったことから、課税要件を明確化して課税執行面における安定性を確保しつつ、このような事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として規定されたものである。そして、同条が、居住者等が軽課税国に所在する外国法人に対する資本関係を通じた経済実質的な支配力を利用して租税負担を不当に軽減することへの対処を目的としていることを受け、外国法人の発行済株式等のうちに占める居住者等が直接及び間接保有する株式又は出資(株式等)の割合が過半であることを上記の資本関係を通じた経済実質的な支配力を判定するための基準としており、間接保有の場合においては、当該外国法人の株主である他の外国法人(本件各処分においては、本件財団がこれに当たるとされている。)に係る個人の有する株式等の数又は金額についてもその具体的基準の一つとなっている(措置法施行令25条の21第5項)。

裁判所は、続いて、「株式又は出資」の意義について、以下のように判示しました。

上記のような趣旨、目的からすれば、その支配力の有無は、形式上、名目上のものではなく、外国法人の収益や資産を実質的に支配し得る地位の有無という観点から判定されなければならない。また、措置法40条の4の規定は、外国法人の「株式又は出資」を判定基準の一つとするものであるところ、諸外国の法制度が我が国の法制度と異なり得るものであることは明らかであるから、その判定基準を構成する「株式等」(株式又は出資)について、我が国における「株式」又は「出資」と完全に同じものを指すと解することはできず、外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位を指すものと解するのが相当であって、居住者等がこのような法的地位を取得しているか否かについては、当該外国法人の設立準拠法だけでなく、当該外国法人の定款や会社規則等の具体的事情を総合的に考慮して判定すべきである。

そして、一般に、持分とは、社員たる資格において法人に対して有する法律上の地位(いわゆる社員権)を意味するから(最高裁昭和45年判決(※5))、外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位は、当該外国法人に対して資金を拠出したことによって得られた、自益権及び共益権又はこれらと同視できる権利ないし地位をいうものと解すべきである。

(2)あてはめ

ア 自益権と同視できる権利ないし地位の有無

  • 原告は、その生存中、本件財団の「第一受益者」として、本件財団の資産及びその収入を享受する権利を独占的に有しており、しかも、原告のこの地位は、本件財団の実質的な設立者として、その設立を指示し、資本金の全額を拠出した原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団定款及び本件財団規則によって得られたものである。
  • したがって、原告は、本件財団の資本金の全額を拠出するなどして本件財団を実質的に設立したことにより、本件財団の自益権と同視できる権利ないし地位を全部保有していたものと認められる。

イ 共益権と同視できる権利ないし地位

  • 原告は、本件財団の特別組織の唯一の構成員として、本件財団の資産の管理について、単独で責任を負い、制約を受けることなく裁量で行うことができる地位を有しており、また、本件財団の管理運営を行う財団評議会を指導する地位を有しているほか、財団評議会の構成員の解任につき、拒否権を有している。
    しかも、原告のこれらの地位や権利は、本件財団の実質的な設立者として、その設立を指示し、資本金の全額を拠出した原告が承認した草案に基づいて制定された本件財団定款及び本件財団付属定款によって、あるいは、本件財団の設立の際に原告自身が行った指示によって得られたものである。
  • したがって、原告は、本件財団の資本金の全額を拠出するなどして本件財団を実質的に設立したことにより、本件財団の共益権と同視できる権利ないし地位を全部保有していたものと認められる。

ウ 結論

  • したがって、原告は、本件財団の発行済株式等の全部を有していたものと認められる。

 

6 検討

(1)平成29年度税制改正との関係

 平成29年度税制改正前は、外国関係会社は居住者・内国法人との資本関係に基づいて判定していたため、外国法人との資本関係を意図的に断絶しつつ、契約関係等によりその外国法人に対する支配を実質的に維持することで制度の適用を免れることが可能となっていましたが、同改正では、かかる資本関係がなくとも、居住者・内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求することができるなど会社財産に対する支配関係(実質支配関係)がある場合には、その外国法人を外国関係会社とすることとされました(※6)。

 原告は、本件においては、改正前の法令により、形式的な資本関係に基づいて株式等の保有の有無を判定すべきところ、本件各処分は、実質的な支配関係を根拠に改正前の措置法40条の4第1項を適用しており、租税法においては許されない拡張解釈であると主張しているようです。

 しかし、本判決は、あくまでも資本関係の有無により、外国関係会社の意義を規定した措置法40条の4第2項1号等の「株式又は出資」の意義を解釈したのであり、原告の上記主張は妥当ではないと思います。

(2)外国の法令等が問題になる場合における租税法の解釈

本件のように外国の法制度に基づき設立された団体(法的主体)に我が国の法令を適用する場合における法令の解釈・適用等は難問であり、興味深い問題だと思います。

 本判決は、諸外国の法制度が我が国の法制度と異なり得ることを理由に、「株式又は出資」の意義を、まずは、「外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位」と解し、その有無については、「当該外国法人の設立準拠法だけでなく、当該外国法人の定款や会社規則等の具体的事情を総合的に考慮して判定すべきである。」と判示しました。

 実は、(内国法人に係る外国子会社合算税制に関する措置法66条の6第1項に関するものですが)、「株式又は出資」(同事案では「発行済株式等」)の意義等については先例があり、大阪高等裁判所平成5年7月22日(法人税法違反被告事件、※7)が、同様の判断を示しています。

(3)「外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位」の意義

 さらに、本判決は、この「外国法人を支配し得る単位化された物的持分としての法的地位」の意義を、最高裁昭和45年判決を根拠に、「当該外国法人に対して資金を拠出したことによって得られた、自益権及び共益権又はこれらと同視できる権利ないし地位」であると判示し、この点に本判決の先例としての意義があります。その後のあてはめも読むと、本判決は、当該「法的地位」が認められるためには、原告が主張する「出資との対価関係」を不要としており、この点が本件の結論に結びついたことが分かります。

 租税法の解釈においては厳格な文理解釈の原則が妥当すること、「株式」や「出資」は、租税法でその定義が規定されていないいわゆる「借用概念」である(とも解し得る)ことなどを考えると原告の主張にも相応の根拠があるようにも思われ、立場によって解釈は分かれ得ると思います。

 この点、本判決は、5(1)で引用した外国子会社合算税制の趣旨を重視して、以上のような判断に至ったものと思われます。

 1(はじめに)でも述べたように、本判決は控訴されているようであり、(場合によっては、最高裁判所の判断が示される可能性もあるように思われ、)上級審の判断が非常に興味深いです。

 

※1 TAINS Z888-2826

※2 同改正の詳細は、『改正税法のすべて(平成29年度)』651頁以下など参照

※3 同項3号の「政令で定める」との定めを受けて、間接保有の場合の株式等の数等を定めた租税特別措置法施行令(平成29年政令第114号による改正前のもの)25条の21第5項の「株式等」(株式又は出資)の意義も問題になります。

※4 「Stiftungskapital」が本件財団の資本金に当たるものか否か、また、この払込みにつき、本件財団に対する対価性のない寄附又は寄贈であるのか、「資本金」を出資(拠出)したものであるのかについては、当事者間に争いがありました。

※5 最高裁昭和45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号804頁

※6 『平成29年税制改正の解説(国税庁)』660頁

※7 判例タイムズ855号284頁

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