鳥飼総合法律事務所

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【印紙税】金銭又は有価証券の受取書(1)

 
投稿者
山田重則
取扱分野
税務
 

公益財団法人不動産流通推進センター「月刊 不動産フォーラム21」で連載をしております。

その他の記事はこちらの「印紙税相談室のご案内」のページをご覧ください。

 

不動産取引に必須の印紙税の知識(10)

―金銭又は有価証券の受取書(1)―

1 今回のテーマ

 今回は、金銭又は有価証券の受取書(17号文書)を取り上げます。実務上、最も多く作成される課税文書の1つで、通常は、「領収書」と呼ばれています。今後、数回に分けてその大まかな全体像について理解を深めてもらいたいと思います。

 

2 17号の1文書と17号の2文書

(1)17号文書の種類

 17号文書には、2種類の文書があります。①売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(17号の1文書)と、②金銭又は有価証券の受取書で①にあたらないもの(17号の2文書)です。つまり、金銭又は有価証券を、売上代金として受け取った場合には、17号の1文書になりますが、そうでない場合には、17号の2文書になります。このように、両者を区別するポイントは、金銭又は有価証券を「売上代金」として受け取ったかどうかという点にあります。そこで、どのようなものが「売上代金」にあたるか確認しましょう。

(2)売上代金

 売上代金とは、①資産を譲渡することの対価、②資産を使用させることの対価、③資産に係る権利を設定することの対価、④役務を提供することの対価をいいます。例えば、次のようなものが売上代金にあたります。

 

区分

内容

①資産を譲渡することの対価

・商品の売上代金(売掛金の回収を含みます。)

・資産の売却代金(未収金の回収を含みます。)

・手形割引の代金(手形の割引は、手形という有価証券を他人に譲渡し、対価として金銭等を受領するので、有価証券の売買にあたります。)

・無体財産権の譲渡代金(特許権、実用新案権、商標権等)

・債権の譲渡代金(電話加入権、売掛金等)

②資産を使用させることの対価

・土地、建物等不動産の賃貸料

・建設機械、自動車、事務機器等のリース料

・貸付金の利息

・貸倉庫料、貸金庫使用料

・特許権等の無体財産権の使用料

③資産に係る権利を設定することの対価

・土地、建物等不動産賃貸借の権利金

・土地、建物等不動産賃貸借の敷金、保証金(ただし、後日、返還されない金額に限る。)

④役務を提供することの対価

・請負契約の対価(工事請負代金、修繕費、宿泊料、出演料、広告料等)

・運送契約の対価(運送料等)

・委任契約の対価(委任報酬、情報の提供料等)

・寄託契約の対価(保管料等)

・その他(仲介料、技術援助料等)

 

 反対に、「売上代金」にあたらないものとしては、譲渡や使用などの「対価」ではないもの、例えば、借入金、担保物(担保有価証券、保証金、証拠金等)、寄託物(寄託有価証券、預貯金等)、割戻金、配当金、保険金、損害賠償金(遅延利息及び違約金を含む。)、各種補償金、出資金、租税等の納付受託金、賞金、各種返還金等が挙げられます。

 

3 事例検討

 ここまでの解説を踏まえ、以下の文書が17号の1文書と17号の2文書のどちらにあたるか検討してみましょう(事例は、あえて単純化しています。)。

 

事例1 金銭または有価証券を売上代金として受け取った場合の受取書

受取書

 

賃貸人甲は、平成30年5月21日付土地賃貸借契約締結の際、賃借人乙から、2カ月分の賃料(100万円)と権利金(50万円)の計150万円の交付を受け、これを受領しました。なお、権利金は、後日、賃借人乙に返還されません。

 

賃貸人甲が賃借人乙から受領したのは、賃料と権利金です。賃料は資産を使用させることの対価にあたり、権利金は資産に係る権利を設定することの対価にあたりますから、それぞれ売上代金にあたります。したがって、賃貸人甲は、150万円を売上代金として受け取っていますので、この受取書は17号の1文書になります。

 

事例2 金銭または有価証券を売上代金として受け取っていない場合の受取書

受取書

 

賃貸人甲は、平成30年5月21日付土地賃貸借契約締結の際、賃借人乙から、保証金(500万円)の交付を受け、これを受領しました。なお、保証金は、賃貸借契約終了の際、賃貸人甲から賃借人乙に対して返還されます。

 

 賃貸人甲が賃借人乙から受領したのは保証金ですが、これは後日、返還されることになっていますから、譲渡や使用などの対価にはあたらず、売上代金にはあたりません。したがって、賃貸人甲は、500万円を売上代金としては受け取っていませんので、この受取書は17号の2文書になります。

 

事例3 売上代金とそうでないものが混在している場合の受取書

受取書

 

賃貸人甲は、平成30年5月21日付土地賃貸借契約締結の際、賃借人乙から、2カ月分の賃料(100万円)と保証金(500万円)の計600万円の交付を受け、これを受領しました。なお、保証金は、賃貸借契約終了の際、賃貸人甲から賃借人乙に対して返還されます。

 

 賃料は売上代金にあたりますが、保証金は後日返還されることになっているため、譲渡や使用などの対価にはあたらず、売上代金にはあたりません。このように、ある文書に売上代金にあたるものと売上代金にあたらないものが混在している場合には、17号の1文書と17号の2文書のどちらにあたるのでしょうか。

 結論から申し上げると、この場合には、17号の1文書となります。前述の通り、①売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書は17号の1文書にあたり、②金銭又は有価証券の受取書で①にあたらないものは17号の2文書にあたります。つまり、ある受取書が17号の2文書となるのは、その文書中に1つも売上代金が含まれていない場合に限られることになります。したがって、ある受取書に売上代金にあたるものと売上代金にあたらないものが混在している場合には、17号の1文書になります。

 

事例4 どのようなものとして受け取ったか不明な場合の受取書

受取書

 

賃貸人甲は、平成30年5月21日付土地賃貸借契約締結の際、賃借人乙から、500万円を受領した。

 

 賃貸人甲は、賃借人乙からこの500万円をどのようなものとして受領したのかがこの受取書の記載からは分かりません。このように、金銭等を売上代金として受け取ったのか不明な場合は、17号の1文書と17号の2文書のどちらにあたるのでしょうか。

 結論から申し上げると、この場合も17号の1文書となります。前述の通り、ある受取書が17号の2文書となるのは、その文書中に1つも売上代金が含まれていない場合に限られます。そして、ある金銭等が売上代金にあたるか不明な場合には、その文書中に1つも売上代金が含まれていないと断定することができません。したがって、ある受取書に記載された金銭等が売上代金にあたるか不明な場合は、17号の1文書になります。

 では、賃貸人甲が、元帳に「保証金」「500万円」と記載されていることを理由に、この受取書の500万円は保証金であり、そのため、この受取書は17号の2文書であると主張することは認められるのでしょうか。次回の連載で解説しますが、17号の1文書と17号の2文書では印紙税額が大きく異なります。この受取書が17号の2文書にあたる場合には印紙代は200円で済みますが、17号の1文書にあたる場合には印紙代は1、000円となります。

 結論としては、賃貸人甲の主張は認められません。印紙税は課税事項を証明する目的で作成された文書を課税対象とするものであり、いわゆる文書課税と呼ばれています。そして、文書課税としての性質から、印紙税における課否判断は、その文書に表されている事項に基づいて行われ、原則としてその文書に表されていない事項を考慮することができません。したがって、元帳に「保証金」「500万円」と記載されていたとしても、これを課否判断にあたり考慮することはできず、賃貸人甲は、受取書の500万円を保証金である(つまり、17号の2文書である)と主張することはできません。

 次回も引き続き、金銭又は有価証券の受取書について解説をします。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 山田重則

 

その他の記事はこちらの「印紙税相談室のご案内」のページをご覧ください。

 

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