鳥飼総合法律事務所

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連載 リスクコンシェルジュ~事業承継リスク 第14回 議決権制限種類株式

 
投稿者
鳥飼総合法律事務所
取扱分野
事業承継・相続
 

議決権制限種類株式

1.はじめに

過去のリスクコンシェルジュにおいても指摘されておりますとおり,事業承継を成功させるには,後継者が会社の支配権を確保する必要があります。そして,会社の意思決定に直接大きな影響を与える経営者の選任や会社の重要事項の決定は,株主総会で決議されますので,会社の支配権を確保するためには,株主総会の議決権の確保が必要です。

この点,会社の株式を保有していた前経営者の相続開始後,後継者が会社の支配権を確保するだけの株式を保有ができればよいのですが,後継者以外の相続人が株式を相続することによって,後継者が支配権を確保するだけの株式を保有できないということも生じ得ます。

今回は、相続を経ても,後継者が会社に対する支配力を維持するための方策の1つとして,議決権制限株式について概説します。

 

2.議決権制限株式

議決権制限株式とは,株主総会において議決権を行使することができる事項について異なる定めをした株式です(会社法108条3項)。当該株式としては,株主総会の一部の決議事項について議決権を行使できない種類株式のみならず,全部の決議事項について議決権を行使できない種類株式も発行できます。

会社の株式を保有していた前経営者(以下単に「前経営者」といいます。)が,生存中に,議決権を有する普通株式のほか,非後継者に相続させるだけの議決権制限株式も発行しておき,前経営者の相続時には,後継者には普通株式を,その他の相続人は議決権制限株式を相続させることによって,議決権のある株式を後継者に集中させることができ,後継者が会社の支配権を維持することができます。この議決権制限株式は,議決権の制限があるだけですから,当該株式を相続した非後継者も,剰余金の配当や残余財産の分配の経済的利益は確保することができます。また,非後継者に相続させる議決権制限株式に,配当等でメリットを与えることも可能であり,そのような株式とした場合は,後継者・非後継者ともにメリットのある相続も可能となるため,非後継者の理解を得やすくなります。

 

3.議決権制限株式の発行方法

 まず,議決権制限株式を新たに導入するには,定款変更が必要ですから(会社法466条),株主総会の特別決議が必要です(会社法309条2項11号)。よって,定款で何らの定めもない場合は,議決権の3分の2以上の議決権が必要です。

定款変更をした後,議決権制限株式を発行するわけですが,その方法としては,①議決権制限株式の新規発行,②株式の一部を議決権制限株式に変更,③株式の無償割り当て,④全部取得条項付種類株式の活用等があります。このうち比較的手続きが簡便なのが③の無償割当です。③は既存株主に平等に株式を無償で交付する方法であり既存株主に大きな不利益を与えないことから取締役会設置会社であれば取締役会決議によって決定することが可能です。(取締役会設置会社でない場合は株主総会決議が必要です。)

 

4.おわりに

上記方法は,後継者には普通株式を,その他の相続人は議決権制限株式を相続させることが必要なので,遺産分割協議を待つことなく,上記のとおり相続されるように遺言書を作成しておくことが必要です。遺言の効力についてのリスクの点からは,公正証書遺言をしておくべきでしょう。議決権制限株式の発行は前項のとおりの手続きが必要であるため,前経営者に株式が集中している時期に実行することが重要です。事業承継成功のためには,事業承継についての取り組みに早めに着手することをお勧めします。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 堀 招子

※ 本記事の内容は、2013年4月現在の法令等に基づいています。

 

 

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