鳥飼総合法律事務所

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連載 リスクコンシェルジュ~事業承継リスク 第11回 事業承継にあたっての政府による金融支援策

 
投稿者
西中間浩
取扱分野
事業承継・相続
 

事業承継にあたっての政府による金融支援策

我が国の経済の基盤を形成している中小企業が、代表者の死亡等を起因として事業活動に支障をきたすことがないよう、政府は大きく分けて3つの方策を打ち出しました。一つは、相続にあたっての納税につき特例措置を設けること、二つ目は、相続財産の分割につき民法の特例を設けること、そして三つ目が、事業承継を円滑に進めるために金融面からバックアップすることです。具体的には以下のように政府系金融機関からの融資枠を拡大したり、民間からの借り入れにあたって全国の信用保証協会が特別の債務保証を行ったりといったことが想定されています。

1 事業承継において想定される資金需要

非上場の中小企業(業界ごとに資本金・従業員数によって定義されています。)において代表者が交代する場合、後継者や会社には、たとえば以下のような資金需要が生じてまいります。

(1)自社株や事業用資産の取得資金

相続が発生すると思わぬ形で自社株や事業用資産が拡散しがちです。事業を継続させていくためには、これを後継者となる相続人や、役員・従業員等の方で集中的に買い取る必要が生じてまいります。そのため会社の価値が高まっているほど多額の資金が必要となります。

(2)納税資金

後継者が相続人の場合、先代が会社に貢献すればするほど自社株の相続税評価額が上がり、これを引き継ぐ後継者には多額の納税資金が必要となってまいります。もっとも事業承継に関連する相続においては、冒頭に触れたように納税猶予制度が設けられており、利用要件を緩めることの検討もされています。ただし、この制度を用いて納税が猶予(免除)されるのは、発行済完全議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分についての課税価格の80%までですので、完全に納税資金が不要となるわけではありません。

(3)運転資金

代表者の交代によって会社の信用が低下し、融資条件が厳格し、資金繰りが一時的に悪化するおそれがあります。後継者育ちをうまくやると同時に、このような万が一の事態が発生した場合に資金がショートすることのないよう、迅速に対応できる運転資金の用意を検討しておく必要があります。

2 経営承継円滑法による金融支援

(1) 信用保証協会による特別の保証枠

以上のような事業承継特有の資金需要に対応するため、経営承継円滑化法では、中小企業信用保険法に特例を設け、これらの必要資金を民間の金融機関等から借り入れる際、全国の信用保証協会が通常の保証枠(2億9,250万円)の別枠としてさらに2億9,250万円の保証枠を設けることとしました。ただし、かかる保証枠を享受するためには事業承継に関連して1で述べたような資金需要が生じていることを経済産業大臣に「認定」されることが前提条件となっており、その後、信用保証協会の審査を経ることとなります。具体的な申請方法については、各地方経済産業局のHP(施設のご案内→事業承継→事業承継時の金融支援)をご参照ください。http://www.meti.go.jp/network/data/b100001j.html

 

(2) 後継者を融資対象者に

 

また、経営承継円滑化法においては、株式会社日本政策金融公庫法と沖縄振興開発金融公庫法に特例を設けられ、会社ではなく後継者にあたる代表者個人にこれら政府系金融機関から直接融資ができるようになりました。もっともかかる融資をうけるためには、事業承継に関連して1で述べたような資金需要が生じていることを経済産業大臣に「認定」されることが必要となります。具体的な申請方法については、上記HPをご参照ください。なお、代表者個人ではなく、会社が融資を受けるときや、その個人が個人事業主のときには、このような「認定」は不要です。

 

3 まとめ

 

事業承継対策を行う過程で生ずる資金需要に対応するため、金融機関等から新たに資金を融資してもらうのではなく、手持ちの資産を会社や第三者に売却することなどによって資金を捻出することも多いと思います。しかしながらめぼしい手持ち資産が見当たらない場合、新規融資がどうしても必要となる、あるいはベストな選択といえるケースは少なからずあるものと考えられます。そのような場合を想定し政府はこれを支援すべく上記のような方策を用意しておりますので、事業承継を円滑に行うための1つの方策として経済産業大臣の「認定」を受けることを検討されてはいかがでしょうか。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 西中間 浩

※ 本記事の内容は、2013年2月現在の法令等に基づいています。

 

 

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