会社法QA 第13回 株主総会終了後の議事録の作成

 ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。その後の改正はこちらをご覧ください。

【テーマ】 株主総会終了後の議事録の作成

【解説】
1 株主総会議事録
 株主総会終了後に株主総会議事録を作成しなければならないことは、旧商法でも会社法でも変わりはありません。しかし、株主総会議事録の記載事項として要求される内容は異なります。
 旧商法では、[1]議事の経過の要領及びその結果を記載すること、[2]議長並びに出席した取締役が署名することを要求していました(旧商法244条2項)。
 これに対し会社法のもとでは、[1]議事の経過の要領及びその結果のほか、[2]開催日時及び場所(当該場所に存しない取締役、監査役等又は株主が株主総会に出席した場合における当該出席の方法を含む)、[3]所定の規定に基づいて株主総会で述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要、[4]株主総会に出席した取締役、監査役等の氏名又は名称、[5]株主総会の議長が存するときは、議長の氏名、[6]議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名、が株主総会議事録の記載事項として要求されています(会社法318条1項、会社法施行規則72条3項)。他方、議長並びに出席した取締役の署名は要求されていません。
 また、株主総会議事録は、株主総会の日から10年間本店に備え置き、その写しを5年間支店に備え置かなければなりません(会社法318条2項・3項)。これは旧商法と同様です(旧商法244条2項)。ただし、支店に設置されたパソコンなどで閲覧・謄写請求に対応できる場合には、議事録の写しを支店に備え置く必要はありません(会社法318条3項ただし書)。この点は旧商法と異なります。

2 取締役会議事録
 定時株主総会で任期満了による取締役の改選を行った場合には、取締役会において、[1]代表取締役の選定の決議、[2]役付取締役の決定などを行う必要があります。取締役会開催後には、取締役会議事録を作成しなければなりません(会社法369条3項)。
 会社法施行規則は、株主総会議事録と同様に取締役会議事録の記載事項についても、旧商法と比較して多くの記載事項を要求しています(会社法施行規則101条3項)。
 なお、株主総会議事録と異なり、取締役会議事録には出席した取締役及び監査役の署名又は記名押印が要求されていますので、注意が必要です。

【質問】
 当社は、本年4月の取締役会において、6月に開催する定時株主総会の招集を決定しました。株主総会終了後に作成する議事録には、出席取締役の署名が必要ですか。また、議事録の写しを必ず支店に備え置かなければなりませんか。

【選択肢】
[1] 出席取締役の署名は必要。議事録の写しは必ず支店に備え置かなければならない。
[2] 出席取締役の署名は必要。議事録の写しを支店に備え置かなくてもよい場合あり。
[3] 出席取締役の署名は不要。議事録の写しを支店に備え置かなくてもよい場合あり。
【正解】 [2]

【解説】
1 株主総会議事録の記載事項
 旧商法244条2項は、[1]議事の経過の要領及びその結果を記載すること、[2]議長並びに出席した取締役が署名することを要求していました。
 これに対し会社法施行規則では、議長並びに出席した取締役の署名を不要としています。
 会社法の立法担当官の解説によれば、「株主総会の議事録に対する出席取締役等の署名には、取締役会議事録に対する署名とは異なり、法的な意味がなく、偽造や真正性の問題が署名や記名押印を要求することによってどれだけ解消されるかについても程度問題にすぎないことから、特に法令上、署名等を義務づける必要性がないと考えられたため」です(相澤哲・郡谷大輔「新会社法関係法務省令の解説(1) 会社法施行規則の総論等」(旬刊商事法務・1759、15頁))。
 その反面、株主総会議事録の記載事項については詳細に規定しており(会社法施行規則72条3項)、旧商法下での株主総会議事録と比較すると記載すべき事項が増加しています。
 そのため、会社法に基づいて株主総会議事録を作成する際には、記載事項に遺漏のないようにする必要があります。

2 株主総会の開催場所
 会社法施行規則72条3項1号では、「株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む)」と規定しています。
 この規定のカッコ書きの「当該場所に存しない・・・」とは、議長が議事を進行している株主総会の会場とは別の場所にいる取締役や株主が、テレビ会議システムなどによって株主総会に出席した場合のことを想定しています。

3 旧商法と会社法のいずれの規定に従って議事録を作成するか
 会社法の立法担当官の解説によれば、株主総会の議事録の作成方法は株主総会の手続に含まれるため、整備法90条の適用がある株主総会に関する議事録の作成は旧商法の規定するところに従うものとされています(郡谷大輔・松本真・豊田祐子・石井祐介『会社法施行前後の法律問題』(2006年、商事法務)213頁)。
 すなわち、会社法施行日である平成18年5月1日の前に株主総会の招集手続が開始された場合には、株主総会議事録は旧商法に従って作成し、施行日後に招集手続が開始された場合には、会社法に従って作成することになります。

4 備置き
 これに対し、株主総会議事録の備置き・閲覧等は、「株主総会の手続」には含まれません。
 そのため、株主総会議事録の作成について整備法90条の適用があるかどうかにかかわらず(つまり、旧商法の規定に基づいて作成された株主総会議事録でも)、備置き・閲覧等については会社法の規定が適用されます(郡谷・松本・豊田・石井・前掲書224頁)。

5 質問の解答
 質問の場合、本年4月の取締役会において6月に開催する定時株主総会の招集を決定しています。つまり、会社法施行日である平成18年5月1日の前に株主総会の招集手続が開始されています。そのため、株主総会議事録は旧商法に従って作成しなければなりません。
 よって、出席取締役の署名が必要となりますから、[3]は間違いです。
 また、株主総会議事録の作成について整備法90条の適用があるかどうかにかかわらず、備置きについては会社法の規定が適用されます。会社法のもとでは、支店に設置されたパソコンなどで閲覧・謄写請求に対応できる場合には、議事録の写しを支店に備え置く必要はありません(会社法318条3項ただし書)。
 よって、議事録の写しを支店に備え置かなくてもよい場合がありますから、正解は[2]になります。

 

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正はこちらをご覧ください。

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