連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第12回 節税対策の落とし穴~税法以外の法律にも要注意!~

節税対策の落とし穴~税法以外の法律にも要注意!~

 

 消費税増税の動きもあることですので、弊社では税金対策として、独立性のある部門を分社化し、免税事業者とすることを考えています。特定期間の課税売上をコントロールするのは難しいので、改正を利用し、給与等支払額が1000万円を超えないように設計しようと思うのですが、問題はないでしょうか。

 消費税プロパーで考えれば問題なさそうですが、別途労働法等との関係について精査する必要があります。免税事業者となるために、本来支払わなければならない給与等を減額したり、支払いを遅らせることはできません。

 

(説明)

~改正内容の概説~

平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度から、事業者免税点制度の適用要件が改正されました。これまでは、基準期間(原則として個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1000万円を超えると課税事業者となっていましたが、改正により、新たな要件が加わりました。その概要は、特定期間(課税期間の前年の1月1日(法人の場合は全事業年度開始の日)から6カ月)の課税売上高が1000万円を超えているか、または給与等支払額の合計額が1000万円を超えているかを判断する、というものです。つまり、免税事業者となるためには

①基準期間の課税売上高が1000万円を超えないこと

②特定期間の課税売上高が1000万円を超えない 
 
特定期間の給与等支払額が1000万円を超えない
 の、いずれかが必要

ということになります。

 

~設例の問題点~

上記の改正の概要を見れば、設例のケースでは問題はないように思われるかもしれません。しかし、給与額を一方的に減らすとなると、労働者側から不満が出ることは容易に想像できるでしょう。また、仮に労働者と合意したとしても、例えば「特定期間の給与を100万円分削減するが、特定期間経過後にその分を埋め合わせる」といったような内容であった場合には、実質的には単なる課税逃れであるとして税務署から指摘を受ける可能性があります。

「節税」と言われるとついつい、その効果に目を奪われがちですが、思いもよらないところで、他の法律による規制がされていることがあります。十分な検討を行わないと、逆に節税できた分以上のコストがかかってしまうことにもつながりかねません。特に改正が絡む場合には、トータルコストを想定しつつ、税理士や弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 小西 功朗

※ 本記事の内容は、2013年2月現在の法令等に基づいています。

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