連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク 第10回 飲みすぎ食べすぎに注意~会社の交際費

飲みすぎ食べすぎに注意~会社の交際費

 

 当社では、仕事が遅くなった時など、仕事が終わってから、従業員が数名で、近所の居酒屋などで飲食することがあります。その飲食代は、会社で支払っています。一人あたりの飲食代は、1回の飲食につき数千円程度です。これは、税務上、損金として認められますか?

 

 従業員が業務時間外に行っている飲食の代金は、通常、交際費にあたると考えられます。したがって、法人の規模により、全額が損金不算入、もしくは、一部のみ損金算入、となります。

 

 

1.交際費とは?

法人には、業務を行う上で必要な支出があります。ところが、法人の「交際費」の中には、法人の業務に直接関係のあるものもありますが、業務と関連の少ないものも含まれていることがあります。

そこで、税法は、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」と定め、これを交際費等としています。

交際費等かどうかが争われた訴訟では、①支出の相手方が事業に関係のある者であるか、②支出の目的が事業関係者との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るものか、③行為の形態が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であるか、を判断基準とする裁判例があります(東京高裁平成15年9月9日判決)。

交際費等の損金算入については、税法は、法人の規模で分け、資本金が1億円を超える法人はその全額を損金不算入とし、資本金が1億円以下の法人は1年間に使った金額のうち600万円の範囲内でその90%について損金算入を認めています。

 

2.交際費にあたらないものとは?

このとおり、「交際費等」に該当すると、損金算入が全く認められない、あるいは、一部しか認められない、ということになります。そのため、交際費等にあたるかどうかの判断は重要です。

税法は、交際費から除外されるものをいくつか列挙しています。そのうちの1つに、次があります。

 

「飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)であって、その支出する金額を参加した人数で除した金額が一人当たり5000円以下のもの」

 

さらに注意が必要なのは、上記の要件に該当しても、一定の書類の保存していなければ交際費から除外されないという点です。その書類には、以下の事項の記載が必要です。

①当該飲食等のあった年月日

②当該飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係

③当該飲食等に参加した者の数

④当該費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地

⑤その他参考となるべき事項

 

3.今回のQは?

この法人が出しているのは、業務終了後の従業員の飲食代であり、会議費にもあたらないと思われますので、一人あたりの金額が5000円以下であっても、交際費となると考えられます。そのため、法人の規模により、損金算入の可否及びその額が異なります。

 

鳥飼総合法律事務所 弁護士 佐藤香織

※ 本記事の内容は、2013年1月現在の法令等に基づいています。

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