連載 リスクコンシェルジュ~知財関連リスク 第5回 違法ダウンロードのリスクと対応方法

違法ダウンロードのリスクと対応法

 

1 著作権法改正の概要

  平成24年10月1日から改正著作権法が施行されました。

  主な改正点として、三点あります。

  一点目は、違法ダウンロードについての改正です(著作権法119条3項等)。本記事の中心となりますので、これについては後述で詳細に触れます。

  二点目は、国立図書館へのアクセスが向上した点です(著作権法31条1項3号)。具体的には、国立図書館でデータ化された書籍を積極的に活用し広く国民がアクセスする環境を整えるため、絶版等の理由で一般書店での入手が困難な一部の書籍について、著作権者等の許諾なしに国立図書館が公立図書館などに資料のデジタルデータを送信し、送信されたデータを各施設において閲覧、一部複製することが可能になりました。これは、出版文化を次世代に継承することが目的となっています。

  三点目は、障害者が健常者と同様に多様な情報にアクセスできるようにするため、検索や再生速度調整が比較的楽なデジタル録音図書等の行為が著作権法上可能となりました(著作権法37条3項、37条の2等)。

  以下では、私たちの日常生活に最も影響の大きい違法ダウンロードの改正について触れます。

 

2 違法ダウンロードの刑罰化

  今回の著作権法改正の最大の目玉は、違法ダウンロードの刑罰化です。

  これにより、CDやDVDとして正規で売られている音楽や映画、ゲーム等(海賊版)について、これらが違法にアップロードされた場合、海賊版であると知りながらパソコンに取り込むことが刑罰の対象となりました。たとえ自分自身で楽しむことが目的であっても、海賊版と知りながらダウンロードした場合、刑罰の対象となります。そして、「海賊版と知りながら」という故意には、海賊版であると確信している場合だけでなく、「海賊版かもしれないけど、それでもかまわない」という場合も含まれてしまいますので注意が必要です。

  たとえば、海賊版の音楽をインターネット上で見つけた場合、これが確実に海賊版であるとわかっていなくても、その可能性があると思いながらダウンロードした場合、刑罰の対象となり、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が課せられるおそれがあります。

  なお、適法にアップロードされたかどうかを判別する方法として、「エルマーク」が表示されているかどうかを確認する方法があります。これは、一般社団法人日本レコード協会が適法に配信されているサイトのトップページなどに表示しているものです。エルマークの表示がないコンテンツが全て違法というわけではありませんが、一つの参考になります。

 

3 平成24年著作権法改正によっても刑罰の対象とならない点

  以上のように、著作権法改正により、違法ダウンロードについての規制が厳しくなりましたが、改正によっても規制の対象にはならない行為として以下の例があります。

     You Tube等の視聴だけでは刑罰の対象になりません

     ドラマなどのテレビ番組は無料で放送されているため、刑罰の対象になりません(ただし、DVDとして正規で売られている場合、その海賊版をダウンロードすることは違法になってしまいますので、注意が必要です。)

 以上の点について、もっと知りたい方は、「違法ダウンロードで逮捕されないための改正著作権法」(朝日新聞出版)お読みください。当事務所の著作ですが、分かりやすく、しかも、660円で購入やすくなっております。

 

本連載の第5回を最後までお読みくださり,ありがとうございました。

 

鳥飼総合法律事務所

 

※ 本記事の内容は、2012年10月現在の法令等に基づいています。

 

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