会社法QA 第10回 取締役の人数

  ※ 本連載は平成17年に「新会社法QA」として掲載された内容です。
   その後の改正等を反映したこちらをご参照ください。

【テーマ】 取締役の人数

【解説】
1 原則
 旧商法では、株式会社においては、取締役は必ず3人以上必要とされ(旧商法255条)、かつ、取締役会の設置が義務づけられていました。これに対して、有限会社では、取締役は1人以上で足りることとされ、取締役会という制度自体予定されていませんでした(有限会社法25条)。
 このように、株式会社であれば一律に取締役会を設置しなければならないとの法制度が採用された理由は、制度創設時、株式会社とは、株式が自由に譲渡されて株主が流動的かつ多数の会社であることを想定し、株主に代って会社の業務執行を監督する常設の機関が必要と考えられたためです。
 ところが実際には、有限会社に近い実体の会社が譲渡制限株式会社として多数存在するようになり、このような会社では、人数合わせの名目的な取締役も存在しました。このような名目的取締役に業務執行の監督などできるわけがありません。すなわち、制度創設当初の予想したモデルと実体は乖離していたのです。
 そこで、新会社法は、株式会社と有限会社を一体化するにあたり、上記のような乖離を解消すべく、株式会社について、原則として、取締役の員数は1人で足りることとし、取締役会を設置しないことも許容することとしました(会社法326条)。

2 取締役会の設置
 このように、取締役の員数は一人でもよく、取締役会の設置は任意とされたのですが、公開会社では取締役会の設置が義務づけられ、従前どおりの取締役会の設置が強制されています(会社法327条1項1号)。
 なぜなら、株主が株式の譲渡により頻繁に変動する公開会社では、株主は自ら経営に参画する意思を有しないことが多く、業務執行を代表取締役に委ね、株主に替わってその業務執行を監督する取締役会によってコントロールする仕組みがなお有効と考えられるからです。

【質問】
 当社はいわゆる公開会社ですが、会社意思決定の迅速化のため、取締役の人数を削減することを検討しています。新会社法では取締役を1人とすることもできると聞いたのですが、当社は取締役を何人にまで削減することができるでしょうか。

【選択肢】
[1] 3人
[2] 2人
[3] 1人

【正解】 [1]

【解説】
 会社法では、取締役会を設置した会社においては、従前どおり取締役は3人以上必要となります(会社法331条4項)。また、既にご説明したとおり、公開会社では取締役会の設置が義務づけられ、従前どおりの取締役会の設置が強制されています(会社法327条1項1号)。従って、公開会社では常に取締役は3人以上必要となります。取締役の員数が1人でも足りるのは、株式譲渡制限会社のうち取締役会を設置しない会社のみです。
 従って正解は[1]です。

 

※ 本記事は平成17年に「新会社法QA」として掲載されたものです。その後の法改正を反映した記事はこちらです。

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