新しい法律の解説 平成15年景表法改正の解説

改正内容の解説

 不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)が平成15年6月23日から施行されました。ただし、第4条の規定に関する改正(不実証広告規制)については、平成15年11月23日から施行されています。
 そこで、今回は、景表法の改正点を中心にご紹介いたします。

1 不当景品類及び不当表示防止法とは

 景表法は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」といいます。)が禁止する不公正な取引方法の一類型である不当顧客誘引行為のうち不当な景品及び表示によるものを適切かつ迅速に規制するために、独禁法に定める規制手続の特例を定めた法律です。商品等に景品類をつけたり商品等の内容などを広告したりすることは販売の促進にはつながりますが、一方で、景品が不相当なものであったり、商品の内容等につき不当な広告であったりすると、不公正な取引となり、一般消費者の利益を著しく害する可能性があります。そこで、景表法は、そのような不当な景品類を利用した行為及び不当な表示による行為を規制しています。景表法は大きく分けて、景品類に関する規制と表示に関する規制に分けられますが、今回の改正は、表示に関する規制について行われました。

2 どうして改正されたのですか?

 近年、食品等における虚偽表示が続発したことにより、表示に対する一般消費者の不信感が強くなり、表示に対する一般消費者の信頼を回復する必要性がでてきました。そうした表示をめぐる状況、信頼回復の必要性に鑑み、不当表示の規制を強化するため、平成15年に景表法の改正が行われました。

3 改正はどのような内容ですか?

 改正内容は、大きく分けると、[1]不実証広告規制の導入、[2]都道府県知事による執行力の強化、[3]手続規定の整備の3つに分かれます。

4 不実証広告規制の導入とはどういう内容ですか?

(不当な表示の禁止)
第4条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。
 一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
 二・三(略)
2 公正取引委員会は、前項第1号に該当する表示か否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第6条第1項及び第7条の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

 不実証広告規制とは、合理的な根拠なく著しい優良性つまり性能や効果が著しく優良であることを強調した広告の規制です。例えば、ダイエット効果を高らかに謳っているが、その効果について合理的な根拠がない表示をした広告などを規制するものです。改正前においても、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」について規制されていましたが、事業者が表示の裏付けとなる合理的な根拠を有していない場合であっても、不当表示として規制するためには、公正取引委員会が表示どおりの効果、性能等がないことを立証する必要があったため、行政処分を行うまでに時間がかかり、その間に被害が拡大するなど、効果的な規制ができない状況でした。そこで、今回、表示の合理的根拠につき、公正取引委員会が表示者に立証するよう求めることができるようにするとともに、立証がない場合に、不当表示とみなすことができるようになりました。具体的には、公正取引委員会が、[1]商品又は役務の内容について「実際のものよりも著しく優良であると示」す表示等に該当するか否かを判断するために必要があると認めるときは、[2]期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出するよう求め、[3]当該資料が提出されない場合には、不当表示とみなすことができるようになりました。

5 都道府県知事による執行力の強化とは具体的にどのような内容ですか?

(都道府県知事の指示)
第9条の2 都道府県知事は、第3条の規定による制限若しくは禁止又は第4条第1項の規定に違反する行為があると認めるときは、当該事業者に対し、その行為の取りやめ若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を指示することができる。その指示は、当該違反行為がすでになくなっている場合においても、することができる。
(罰則)
第12条 第9条の4第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者は、50万円以下の罰金に処する。

(1)  指示事項の追加
 改正前から、違反行為に対して都道府県知事が表示者に指示することは認められていました。これは、公正取引委員会だけでなく、都道府県知事においても景表法を運用できるようにして、景表法の執行力を強化する趣旨で認められていたものですが、都道府県知事の指示事項が、その行為を取りやめるべきこと(違反行為の差止)又はこれに関連する公示をすること(訂正広告)にとどまっていたため、都道府県知事が実効性ある景表法の運用をするには必ずしも十分とはいえない状況でした。そこで、今回の改正において、都道府県知事は、違反行為の再発を防止するために必要な事項、これらの実施に関連する公示その他必要な事項(例えば、違反行為をし、都道府県知事の指示を受けた事業者がとった措置等の報告)についても指示することができることになりました。そして、既になくなっている既往の違反行為に対しても指示することができることになりました。これによって、都道府県知事は、違反者に対し違反行為を止めるよう指示し、関連する公示をするよう指示するとともに、社内において法令遵守体制を整備するよう指示するなど将来の繰り返しを防止するために必要な事項を指示したり、既に違反行為がなくなっている場合に違反行為の防止体制の報告を指示したりすることもできるようになりました。
(2)  罰金上限額の引き上げ
 都道府県が行う立入検査の妨害等を行った者に対する罰金の上限額が、従来の3万円から50万円に引き上げられました(12条)。

6 手続規定はどのように整備されましたか?

(排除命令)
第6条 (略)
2 前項の規定による命令(以下、「排除命令」という。)は、公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用を記載した排除命令書の謄本を送達して行う。
3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第69条の3から第69条の5までの規定は、前項の送達について準用する。
(審判手続等)
第8条 排除命令に不服がある者は、公正取引委員会規則で定めるところにより、排除命令書の謄本の送達があつた日から30日以内に、公正取引委員会に対し、当該命令に係る行為について、審判手続の開始を請求することができる。

 従来は、公正取引委員会が行う不当表示行為等の差止め等の命令(排除命令)は、公正取引委員会規則で定めるところにより告示(官報掲載)することとしていました。しかし、近年の情報媒体の多様化により、排除命令が出されたかどうかは、テレビや公正取引委員会のホームページ、インターネットなどで一般消費者や利害関係人などに比較的短時間で周知される状況になりました。その結果、排除命令の事実の周知手段として、官報に告示する意義は相対的に低下してきました。さらに、官報に掲載するとなると、排除命令の行われた日から10日程度後に告示されることになり、消費者のために違法行為を迅速に排除するという法の趣旨に合わなくなってきました。そこで、処理迅速化のため、今回の改正により排除命令の告示手続を廃止し、これに代えて、排除命令を排除命令書の謄本の送達により行うものとし、不服申立てのできる期間の起算日を謄本送達日としました。
 排除命令が、排除命令書の謄本の送達により行うものとなったことにともない、その送達については、独占禁止法上の処分と同様に、交付送達、出会送達、補充送達、差置送達、外国における送達、公示送達の方法によることが認められました。法律上は、独占禁止法上の送達に関する規定を準用するかたちになっています。

7 改正にともなってどのような点に気をつけたらいいですか?

 今回の改正でもっとも影響を受ける点は、不実証広告規制が導入された点であると思います。商品等の性能や効果が優れている旨の広告について、その表示が他と比べて著しく優れていることを示すものと判断されると、表示した者の側でその根拠を立証する責任を負いますから、そのような広告をする場合には、公正取引委員会から根拠となる資料を提出するよう求められたらいつでも資料を提出できるよう準備をしておく必要があるでしょう。また、既に販売が終了していても、商品が流通している間は、表示の裏付けとなる証拠を保存しておくべきです。

参考文献
『改正景品表示法と運用指針』 南部利之編著(平成16年 商事法務)
公正取引委員会ホームページ

(文責 弁護士 青戸 理成)2004.9.1

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