税務訴訟 子会社の再建と税務

子会社の再建と税務

 子会社の再建の場合に親会社等が支援することがよくある。この場合、税務では寄付金課税が問題になる。税務の世界では、親会社が子会社支援のために経済的利益を移転したときは原則的に寄付金だとする。一般的に言えば贈与である。

 子会社が倒産状態になっているとき、その再建のための支援を親会社がすることはよくあることである。これを贈与といわれてはかなわない。ところが、課税実務は寄付金課税をしてくることが多い。社会経済的には倒産状態なのに、課税実務ではなかなか倒産状態とは認めないのである。

 これは、課税実務を運用する職員が倒産の危険のない国家に帰属しているからではないかと思えてならない。企業にいる人間よりも、企業に関する危機に鈍感なのである。あるいは、頭が良いために、企業の危機にあえて鈍感のフリをしているのであろうか。

 企業が債務超過に陥り、自力で再建できないのが明らかなのに、課税実務は自力で再建できるというのである。この場合に再建の原資を営業利益を中心に考えている。これは自力で再建できない場合の再建策なのに、それに気づかずに、自力の再建であると強弁する。これが裁判所でも通ってしまうのであるから、驚きである。

 通常、他人に迷惑をかけないで自力で再建する場合には、再建の原資は営業利益でなく、経常利益である。支払利息をも支払った上での再建だからである。営業利益を弁済原資とするのは、企業が危機的状態になって、銀行等からの借入金の支払利息の支払いを免除して貰った上での再建の場合である。

 したがって、営業利益を原資とした再建は企業が危機的状態にあることを意味するのに、課税実務では、それを危機的状況とは認めない。あるいは、営業利益による再建は、換言すれば、支払利息のカットを認めた再建であることを認めたことになる。それなのに、親会社が子会社の再建支援のために支払利息のカットをする低利融資をすると、寄付金だと課税してくるのである。滅茶苦茶である。

 このようなことが今まで通用してきたのであるから、日本は「泣く子と、税務署には勝てない」ということになるのである。そろそろ、無理難題はやめて、社会常識が通用する社会にしようではないですか。
(文責 鳥飼重和)

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