税務訴訟 最近の税務調査

最近の税務調査

 最近相談を受ける内容を見ると、最近の税務調査の特徴が分かる。少なくとも、1,2年前とは違った特徴があるように思われる。デフレの影響から、黒字の企業が全体の3割にしかならないために、税収確保を目的とする税務調査は今までと異なるものになるのも理解できる。

 まず、第1に、最近の税務調査は大きな企業を対象にしてきているように見える点である。最近の相談者が大企業が多くなっていることからそう見えるのであるが、中小企業からはなかなか通常の調査では税収確保が難しくなってきているのだろうか。

 第2に、これも黒字企業が少ないための工夫なのか、源泉税や印紙税等に狙いを定めた調査が目立つ。源泉税や印紙税等ならば、赤字企業に対しても課税できるからである。立場は違うが、課税庁の職員の方々の努力の道筋が分かる。

 第3に、これも課税庁職員の税収確保の努力なのかもしれないが、従来30年来、あるいは、10数年来、損金扱いが認められていたものを否認しようという例が少なくない。課税庁は、過去において何度も、課税対象を調査し、申告を是認していたのを新たに租税に関する法令等の読み直しをして改めて課税しようというのである。場合によっては、納税者側は信義誠実の原則適用の主張ができる場合もありうる。

 第4に、企業間の経済的利益の移転について寄付金課税の調査が増えてきたように思える。通常の取引関係に寄付金課税をしようとしたり、信じがたいことであるが、訴訟上の和解について、その内容調査をして寄付金課税の可能性を検討する事案まで現れている。

 いずれにしても、課税庁の職員は、税収確保の役割を担っているのであるから、自分の職責に忠実な人ほど、税収確保が難しい時代にも、何とかして税収を確保するための耐えざる工夫・努力をしてくるものである。国税庁の立場からすれば、このような課税庁の職員は賞賛に値する。

 その反面、調査対象になる企業等の納税者は、金融が十分機能しない今日、キャッシュフローに直結する課税強化は場合によってはダメージとなる。したがって、税務調査に対しては、従来以上の注意を払う必要がある。前例主義では通用しないのである。
(文責 鳥飼重和)

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鳥飼 重和

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