平成13年商法改正 金庫株の解禁
最近、株価下落の対策の一つとして金庫株の解禁問題があり、それが商法改正によって実現する可能性が出てきた。
なぜ、金庫株を認めることが株価対策になるのか。
それは、現在、金融機関を中心に相互持ち合いしている株式の売却が進み、その売却株式数が多いことから株価下落の要因になっているため、相互持合株式の売却に代えて、相手方会社が持っている自社株式の取得をし、その自社株を保有することを認めようとするのが金庫株である。
したがって、金庫株を認めることで相互持合の株式の買い手が出てくるから、株価が必要以上に値下がりしないという効果が期待できるのである。
しかし、これによって会社の業績が良くなるわけではないので、金庫株の解禁が株価を引き上げる要因となるのは信じがたい。
せいぜい、値下がり幅を小さくするだけであろう。
しかし、金庫株は、株価との関連で言えば、長期的に見て株価を引き下げる要因であると考える。
なぜなら、金庫株も株式の相互持合も、その機能は会社防衛である。
この会社防衛の実質的内容は、思い切った経営改革ができず、業績も株価も低迷している会社の経営者を守ることである。
思い切った経営改革をして、業績と株価を上昇させている経営者がいる会社は、敵対的TOBの対象にならない。
なぜなら、その経営者を他の経営者に変えると、業績と株価が下落するリスクがあるため、これをビジネスとしてのTOBの対象にする者はいないからである。
したがって、企業防衛は、業績と株価の引き上げができない経営者のいる会社を対象にする。
そのような経営者は、思い切ったリストラなどしないから、従業員が最も支持する人となるであろう。
結局、企業防衛は社長を代表とする社員全体の利益を守ることが真相である。換言すれば、企業防衛は雇用を利益に優先する考え方の延長線上にあるといえる。
このような考え方では、現状では業績は上がらず、株価の将来性も暗い。
日本の経営者を強くするには、護送船団を止めて、敵対的TOBに直面させるべきではなかろうか。
その意味で、今回の金庫株は首をひねるしかないのである。
(文責 弁護士 鳥飼重和)
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