会社法についての質問 【質問1】~【質問15】

※本記事は平成17年に掲載された内容です。その後の改正にご注意ください。

●【質問1】~【質問15】

【質問1】 新株予約権 :弁護士 福崎剛志
【質問2】 株式の譲渡制限の定款モデル :弁護士 青戸理成
【質問3】 非公開会社かつ小会社(大会社以外)における株主総会での報告事項 :弁護士 権田修一
【質問4】 取締役の人数 :弁護士 松本賢人
【質問5】 特例有限会社の増資手続 :弁護士 青戸理成
【質問6】 監査役の兼任禁止 :弁護士 権田修一
【質問7】 最低資本金制度の廃止と株主総会 :弁護士 福崎剛志
【質問8】 抱き合わせ株式への割り当て :弁護士 松本賢人
【質問9】 会社法施行規則の「事業体」 :弁護士 松本賢人
【質問10】 役員退職慰労金 :弁護士 権田修一
【質問11】 役員等の責任の免除・限定 :弁護士 青戸理成
【質問12】「事業報告」「計算書類」「議決権の代理行使の勧誘に関する参考書類」 :弁護士 福崎剛志
【質問13】 破産手続終了後の清算 :弁護士 権田修一
【質問14】「付与決議の日」 :弁護士 松本賢人
【質問15】 株式の譲渡制限における株式買取請求 :弁護士 青戸理成

 

●質問と解説の一覧  

【質問1】
平成17年会社法施行前に新株予約権を発行してあり、従業員との契約書で消却の事由と無償の消却を謳っております。会社法施行後、会社はこの新株予約権を取得する予定も方針もありません。会社法施行後、今般また新株予約権の発行を計画しています。
①今回は会社法に則り、消却に代え取得の事由と無償の取得を契約書に謳う必要があるということですか。
②登記上、会社法施行前に登記した新株予約権は変更登記せず、今回発行する新株予約権は、取得の事由と無償の取得という内容が変わった登記をするということですか。

【質問1 解説】
①について 旧商法下の新株予約権の消却は,会社法では無償取得と整理されておりますので,従来の消却事由を定める場合には,無償取得に関する定めを置く必要があります。また,新株予約権の取得条項については,新株予約権の内容になりますので(会社法236条1項7号),募集事項の決定の際に定められることになります(会社法238条1項)

②について 旧商法下で発行された新株予約権で消却の定めがあるものは,取得条項付新株予約権と看做されます。会社は,取得条項付新株予約権とみなされる新株予約権を発行している場合には,原則として会社法施行日から6ヵ月以内に変更登記をしなければなりません。
(執筆:弁護士 福崎剛志)

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【質問2】 
当社は、非公開会社に該当します。 
株式の譲渡制限の条項を設けますが、その条文については、一般書籍等で公開されている定款モデルでは次の2種類の表現が見られますが、会社法の当該条文からしますと、どちらが妥当なのでしょうか。 
もし①と②のどちらも妥当な場合は、その意味の違いは何でしょうか?
① 当会社の株式は、・・の承認がなければ、「譲渡または取得」することができない。
② 当会社の株式は、・・の承認がなければ、「譲渡により取得」することはできない。

【質問2 解説】
(結論) どちらも間違いとまではいえません。意味としても、同じ解釈になると思われます。
(解説) どちらも、間違いとまではいえませんが、会社法上の概念に忠実なのは、「譲渡による取得」です。会社法上、「譲渡制限株式」とは、「株式会社がその発行する株式の全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式」をいいます(会社法2条17号)。旧商法上、譲渡制限株式は、「譲渡」に承認が必要な株式でしたが、会社法上は、「譲渡による取得」に承認が必要な株式として取り扱っています。あくまでも、第三者が「取得」することに承認が必要として整理されているわけです(会社法136条、137条)。 そして、株式を「取得」する場合というのは、譲渡による場合だけでなく、相続や合併などのように包括承継した結果、取得することもあれば、募集株式の発行(旧商法上の新株発行)・割当てにより取得することもあるわけです。したがって、そのような様々な取得の中で「譲渡による」取得について、取締役会の承認を必要な株式が会社法上の譲渡制限株式なのです。 他方、「譲渡または取得」とする場合の意味は、おそらく株主側からの承認請求(会社法136条)を「譲渡」の承認、株式取得者からの承認請求(会社法137条)を「取得」の承認として整理しているのではないかと思われます。もちろん、この場合、会社法上の解釈としては、どちらも「譲渡による取得」を意味するのですが、前述したとおり、会社法上は、「取得」に対する承認と整理していることから、「譲渡」に対する承認とすると不正確ともいえますし、「取得」という言葉は、譲渡による取得のみならず、相続による取得、合併による取得、募集株式の発行・割当てによる取得など、様々な取得の態様を含みうるので、正確に表現したものとはいえないともいえます。ただし、譲渡による取得以外の取得態様は別途法定されているため、法律上、譲渡以外の原因による取得を定款で取締役会の承認にかからしめることはできませんから、解釈としては、「譲渡または取得」としても、「譲渡による取得」を指すことになると思われます。 したがって、会社法上の概念に忠実なのは、「譲渡による取得」ですが、「譲渡または取得」でも、明らかな間違いとまではいえません。
(執筆:弁護士 青戸理成)

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【質問3】 
会社法施行後、非公開会社かつ小会社(大会社以外)における株主総会での報告事項に変更はないでしょうか。具体的には、貸借対照表と損益計算書が、報告事項なのか決議事項なのかを確認したい次第です。

【質問3 解説】
(結論) 会社法施行後、営業報告書が事業報告に変わりましたが、株主総会での報告事項の変更の有無という意味では、変更はありません。会社法施行後も、貸借対照表と損益計算書は、定時株主総会に提出し、定時株主総会の承認を受けなければなりません。
(解説)
1 旧商法の規定 
旧商法283条1項は、同281条1項各号に掲げるもの、すなわち、①貸借対照表、②損益計算書、③営業報告書、④利益処分案または損失処理案を定時株主総会に提出しなければならないとしていました。 
そして、同条項は、③営業報告書についてはその内容を報告し、①貸借対照表、②損益計算書、④利益処分案または損失処理案については、定時株主総会の承認を求めなければならないとしていました。 
つまり、貸借対照表と損益計算書については、定時株主総会の決議事項とされていました。
2 会社法の規定 
これに対し、会社法438条1項は、機関設計の違いによって規定を分けてはいるものの、公開・非公開の別、規模の大小にかかわらず、いずれの株式会社であっても、定時株主総会に計算書類及び事業報告を提出または提供しなければならないとしています。 
そして、同条2項は、定時株主総会に提出または提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならないと規定し、同条3項は事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない、と規定しています。 
ここでいう計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表をさします(会社法435条2項、会社計算規則91条1項)。 
つまり、会社法のもとでも、貸借対照表と損益計算書については、定時株主総会の決議事項とされています。 
営業報告書が事業報告に変わりましたが、株主総会での報告事項の変更の有無という意味では、旧商法から変更はありません。
(執筆:弁護士 権田修一)

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【質問4】 
株式会社においては、取締役は今でも3人以上なのですか?

【質問4 解説】
(結論) 一律の人数規制はなくなりました。
(解説) 新会社法は、株式会社の規律と従来の有限会社規律を株式会社の規律として整理し直しましたので、原則として取締役は1名でも足ります(会社法326条1項)。 
ただし、公開会社は取締役会を設置することが義務づけられ(会社法327条1項1号)、取締役会設置会社では、従前どおり取締役は3人以上必要です(会社法331条4項)。
(執筆:弁護士 松本賢人)

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【質問5】 
特例有限会社の増資の手続について簡単に説明して下さい。

【質問5 解説】
(結論) 会社法上の募集株式の発行手続(会社法199条以下)によります。
(解説) 旧法上の有限会社は、会社法においては、特例有限会社として取り扱われますが、一定の制限を除き、会社法が適用されます。 
そして、増資に関しては、会社法が適用され、特例有限会社としての制限はありませんので、旧法上の株式会社と同様、募集株式の発行(旧法上の新株発行、自己株式の処分)によります。 
有限会社は、資本の総額(資本金の額)について、定款記載事項とされていましたが、会社法施行後は定款に記載がないものとみなされるため(整備法5条1項)、募集株式の発行にあたって、定款を変更する必要はありません。 
ただし、会社法施行時に、有限会社の発行可能株式総数及び発行済株式の総数は、有限会社の資本の総額を当該会社の出資一口の金額で割った数となり、発行可能株式総数の上限まで株式が発行されていることになりますので、増資をする際には、発行可能株式総数を引き上げておく必要があります。 
なお、有限会社においては、社員の総数が50人に制限されていましたが(旧有限会社法8条1項)、会社法施行により、社員(株主)の総数に制限はなくなりますので、社員が50人だった有限会社であっても、増資をすることに問題はありません。
(執筆:弁護士 青戸理成)

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【質問6】 
業務監査権限のある監査役が、子会社の顧問税理士となることは可能でしょうか?

【質問6 解説】
(結論) 可能です。
(解説)
1 監査役の兼任禁止事由 監査役は、会社の取締役・使用人・会計参与または子会社の取締役・執行役・使用人・会計参与を兼ねることができません(会社法333条3項1号、335条2項)。
2 監査役が会社・子会社の顧問税理士を兼ねることの可否 会社法上、監査役が会社・子会社の顧問税理士を兼ねることを禁止している規定はありません。 
したがって、監査役が会社・子会社の顧問税理士を兼ねることは可能です。 
公認会計士・税理士等に資格が限定されている会計参与ですら、顧問税理士を兼ねることは可能であるとされています。 
ただし、「顧問税理士」の職務の実態が、実質的には業務執行機関に対して継続的従属性を有する場合には、「顧問税理士」という名の「使用人」に該当することになります。そのような場合には、監査役と「顧問税理士」を兼ねることはできないということになります。
(執筆:弁護士 権田修一)

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【質問7】 
「最低資本金制度の廃止」で、資本金をゼロとすることができることが分かりました。この場合、株主が存在しませんから「株主総会」は開催する必要がない、と思われますが、これでいいのでしょうか。ちなみに株主総会は、必須の機関となっています。もし、開催する必要があるとした場合、議決権者は誰になるのでしょうか。

【質問7 解説】 
最低資本金制度が廃止されたことによって,株式会社の設立時の資本金の額が0円になることは認められましたが,全く財産が出資されない設立は認められません。設立時の資本金が0円になるのは,出資された財産から設立費用等の経費を引いた金額が資本金となるからです。このように,会社法の下でも,最低財産の出資はなされなければならず,株主が存在しないということは考えられていません。1円の出資であっても,株主は存在することが前提とされています。
(執筆:弁護士 福崎剛志)

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【質問8】 
「合併時の株式の割り当てについて」「存続会社が有する消滅会社株式(いわゆる「抱き合わせ株式」)に対しては割り当てがなされない。」(株式会社法 江頭憲治郎 有斐閣 p764 l11) と記されていたのですが、ここは以前見解が割れていたと思われるのですが、抱き合わせ株式には割り当てできないことが決まってしまったのでしょうか?

【質問8 解説】
(結論) そうです。
(解説)会社法749条3項、753条3項は、存続会社(新設会社)から消滅会社株主に金銭等を交付する場合について、その株主の範囲から、吸収合併であれば消滅会社及び存続会社を、新設合併であれば消滅会社を明文で除外しています。 
このような法の規定について、立法者の解説によれば、吸収合併の場合において存続会社の有する消滅会社株式に存続会社株式を割り当てることができることか、という旧商法時代の問題については、そのような割当ができないことが明文で明らかにされている、と説明されています(相澤哲・豊田祐子「株式(株式会社による自己の株式の取得)」商事法務1740、43頁)。 
このようなことからすると、実務上は、抱き合わせ株式に割当てができない、との扱いになろうかと思います。
(執筆:弁護士 松本賢人)

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【質問9】 
会社法のなかの「事業体」とは、どのような会社を定義しているのか教えください。

【質問9 解説】 
「事業体」という用語は会社法の法文では使用されていませんので、少なくとも会社法は「事業体」について定義していません。ただ、会社法施行規則には、「事業体」という用語が使われています。会社法施行規則2条3項二号は、「会社等」とは、「会社(外国会社を含む。)、組合(外国における組合に相当するものを含む。)その他これらに準ずる事業体をいう。」と、定義しています。そうすると、「事業体」とは、会社(外国会社を含む)のみならず、組合(外国における組合に相当するものを含む)をも含む広い概念として用いられていることがわかります。会社法施行規則の「事業体」とは、ある会社は「事業体」に該当し、ある会社は「事業体」に該当しないといったように、特定の会社を定義しているわけではありません。
(執筆:弁護士 松本賢人)

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【質問10】 
役員退職慰労金は、会社法361条に定める報酬制限の範疇に含まれるのでしょうか?当社は報酬額を定款で定めていないので、株主総会決議によっています。従来は役員退職慰労金はその制限に含まれないと解していたのですが、誤りでしょうか?

【質問10 解説】 
役員退職慰労金は、在職中の職務執行の対価として支給される限り、会社法361条の「報酬等」に該当します。 
従って、①役員退職慰労金の額が確定しているときは、その額、②額が確定していないときは、その具体的な算定方法、③金銭でないものについては、その具体的な内容を、株主総会の決議によって定めなければなりません。 
なお、取締役の退職慰労金に関する議案を株主総会に提案するときは、株主総会参考書類に、退職する各取締役の略歴を記載する必要があります(会社法施行規則82条1項4号)。また、議案が一定の基準に従い退職慰労金の額を決定することを取締役、監査役その他の第三者に一任するものであるときは、株主総会参考書類には、当該一定の基準の内容を記載しなければなりません(各株主が当該基準を知ることができるようにするための適切な措置を講じている場合を除く)(会社法施行規則82条2項)。 
監査役の退職慰労金に関する議案を株主総会に提案するときも同様です(会社法施行規則84条1項4号、2項)。
(執筆:弁護士 権田修一)

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【質問11】 
取締役・監査役の責任免除規定及び社外取締役等の責任限定契約を定款に規定することを検討しておりますが、非公開会社(小会社)で監査役権限が会計監査権限に限定されている場合は、上記の項目は規定できないのでしょうか。

【質問11 解説】
(結論) 取締役会による責任免除に関しては定款で規定できませんが、責任限定契約について定款で規定することはできます。
(解説) 会社法上、役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人)の責任の免除・限定は、株主総会の決議による免除(会社法424条、425条)、定款授権に基づく取締役会決議による免除(会社法426条)、責任限定契約による限定(会社法427条)がありますが、定款に定める必要があるのは、責任の一部免除に関する取締役会への授権と責任限定契約の2つです。 
責任の一部免除に関する取締役会への授権は、「監査役設置会社又は委員会設置会社」に主体が限定されていますので(会社法426条1項)、監査役の権限が会計監査権限に限定されている会社は、定款に規定することはできません。監査役の権限が会計監査権限に限定されている会社は、監査役を置いていても「監査役設置会社」とはならないからです(会社法2条9号)。 
他方、責任限定契約に関しては、主体は「株式会社」となっており、特に限定はありません(会社法427条1項)。したがって、監査役の権限が会計監査権限に限定されている株式会社であっても役員等の責任限定契約に関する定款の定めをおくことはできます。
(執筆:弁護士 青戸理成)

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【質問12】
1.「事業報告」についてお尋ねします。
①従来の「営業報告書」に代わり「事業報告」となりましたが、タイトルは「事業報告書」ではなく「事業報告」で宜しいでしょうか。
②「事業報告」への記載内容について、新法では中小会社は施行規則第118条に定めるものでよいとなっておりますが、当社では第2項は該当がありませんので、従来の「営業報告書」に記載していた事項に準拠した内容にしようと考えております。  
・事業の概況  
・営業の経過等 ・・ 営業本部、開発本部の事業実績等  
・会社の概況  ・・・ 事業所、従業員の状況、株式の状況、主要取引先、取締役・監査役、               
その他当期中実施事項 
以上の事項を記載予定ですが宜しいでしょうか。
③「計算書類」は、「事業報告」の後ろに一緒に綴じ込み、通しページにしたいと考えておりますが宜しいでしょうか。  
※「事業報告」は報告事項で、「計算書類」は決議事項となりましたので、一緒に綴じ込んでよいかどうか悩みました。

2.「議決権の代理行使の勧誘に関する参考書類」についてお尋ねします。
①剰余金処分の決議について 従来は、「剰余金処分(案)」として一括付議しておりましたが、今回からは、剰余金の配当、任意積立金、役員退職給与積立金等、1件毎に別議案として付議することになるのでしょうか。 
もし、1件毎に別議案として付議する場合、次期繰越利益金は記載するところがありませんので口頭報告で宜しいでしょうか。
②定款の一部変更について 新法で使用の文言に準拠して一部文言の修正も行いましたが、参考書類には新設事項を中心に記載しようと考えております。 
これで宜しいでしょうか。

3.計算書類の公示についてお尋ねします。 
新法第440条-1項に公告が必要な旨定めてありますが、参考図書によりますと、旧法でも形骸化しており、中小会社は殆んど公告していないので、これまで通りでよいとの記載がありましたが、どう判断したらよいのでしょうか。

当社は 非公開会社 です。ご回答、よろしくお願いします。

【質問12 解説】
1-①について 実務では、「事業報告」としております。 1-②について 貴社は、非公開会社ですので事業報告では、①当該株式会社の状況に関する重要な事項(計算書類及びその付属明細書並びに連結計算書類の内容となる事項を除く。)、②法348条3項4号、法362条4項6号、416条1項1号ロ及びホに規定する体制の整備についての決定又は決議があるときは、その決定又は決議の内容、を記載することになります。 
なお、会社法では、公開会社の場合には、施行規則120条ないし124条に記載する事項を、会計参与設置会社である場合には施行規則125条に記載する事項を、会計監査人設置会社の場合には施行規則126条に記載する事項(非公開会社の場合には2号から4号を除く)を、買収防衛策を採用している場合などには施行規則127条に記載する事項を、それぞれ記載することとなります。 
上記①の重要性の判断に関しては、会社毎に判断するほかありませんので、ご指摘の事項で貴社の現状における重要事項が報告できるのであればそのような記載で問題ないこととなります。なお、会社法では中会社の分類はございません。1-③について そのような取り扱いで問題ありません。

2-①について 株主総会においては、剰余金の配当以外に、剰余金の処分として、任意積立金の積み立てや取り崩し等を行うことができます(法452条)。剰余金の配当以外にも任意積立金などを増減させる場合には「剰余金の処分」議案として一緒に処理することが一般的です。もちろん、それぞれ別議案にしても構いません。また、任意積立金や繰越利益剰余金などの剰余金を増減させる場合には、①増加する剰余金の項目、②減少する剰余金の項目、③処分する各剰余金の項目に係る額を定める必要があります(法451条)。以下、ご参考まで剰余金の処分議案に関する参考書類記載事項を例示致します。

第○号議案 剰余金処分の件 剰余金の処分につきましては、以下のとおりとしたいと存じます。期末配当に関する事項 当社は、企業体質の強化による持続的成長を目指し、中長期的な企業価値の向上を図りつつ安定的な配当を継続することを基本方針としています。
1.期末配当に関する事項 したがって、第○期の配当につきましては、以下のとおりといたしたいと存じます。
 (1) 配当財産の種類     金銭
 (2) 株主に対する配当財産の割当てに関する事項及びその総額     当社普通株式1株につき金○円 総額○○円
 (3) 剰余金の配当が効力を生じる日   
  平成○年○月○日
2.別途積立金の積立に関する事項
 (1) 増加する剰余金の項目及びその額     別途積立金                  ○○円
 (2) 減少する剰余金の項目及びその額     繰越利益剰余金               ○○円

2-②について 整備法によって定款の看做し変更がなされている部分については定款変更議案として挙げる必要はないとの議論もあるところですが、実務対応としては、定款変更を行う部分は全て記載されることが望ましいです。

3について 特例有限会社に関しては、公告義務は課されていませんが(整備法28条)、その他の株式会社については非公開会社であっても公告義務がありますので、決算公告を行う必要があります。
(執筆:弁護士 福崎剛志)

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【質問13】 
会社法475条1号カッコ書きの部分の規定は、どのような場合を想定しているのかをお教え願います。破産手続を終了した後に清算をするケースがあるのかについてです。 また、この場合、会社法494条に規定する清算事務年度が適用されるのかもあわせてお教え願います。 本を見て探しているのですが分かりませんので、よろしくお願いします。できれば参考となる文献もお教え願います。

【質問13 解説】
1 会社法475条1号カッコ書きが想定しているケース 
会社法475条1号は、株式会社が解散した場合、清算しなければならない、と規定しています。しかし、同号カッコ書きで、「破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。」と規定しています。 
このカッコ書きは、「破産手続終了後は清算しなければならない」という意味を含んでいますが、例えば次のような場合を想定しています。
(1)同時破産手続廃止 同時破産手続廃止とは、破産手続開始の時点で、破産財団をもって破産手続の費用をまかなうのに不足すると裁判所が認めるときに、破産手続開始の決定と同時に破産手続廃止の決定をすることを言います(破産法216条)。 
同時破産手続廃止の場合には、破産手続開始の決定がなされ、会社の解散の効果が生じます(会社法471条5号)。しかし、破産管財人が選任されることはなく、破産手続は進行しません。そのため、会社は清算を行うことになります。
(2)破産手続終了後、清算人の選任が必要となる場合 例えば、破産会社が原野や山林を所有していて、破産管財人がどうしても買受人を見つけることができないことがあります。その場合は、やむを得ず、破産財団から原野や山林を放棄して、破産手続を終了させることになります。しかし、その後、その原野や山林を買いたいという人が現れることもあります。 
また、破産手続が終了した後に残余財産が発見され、これを買いたいという人が現れることもあります。 
このような場合、破産会社の財産を売却するために、清算人を選任する必要が生じます。

2 会社法494条に規定する清算事務年度の適用 
「上記のような場合には適用を除外する」旨の条文がありませんので、「適用される」というのが結論になります。 
しかし、上記のような場合、実務上は、貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成したり、監査役が監査したり、といった手続を履行していないことがほとんどであると考えられます。 
同時破産手続廃止の場合、破産手続費用をまかなうだけの財産もないのですから、上記の書類の作成や監査の費用もまかなえず、誰も履行しないからです。 
また、破産手続終結後清算人の選任が必要になった場合は、清算人を選任する必要が生じた事項を解決することが最大の目的です。その目的が解決しさえすれば、貸借対照表等の作成などがなされなくても、誰も問題視しないからです。 
なお、上記の記述は文献に基づくものではなく、筆者の経験上の感想にすぎないことにご留意願います。

3 参考文献 
必ずしもご質問に対する回答がズバリと書かれているとは言えませんが、参考になる文献として次の文献を掲げておきます。 
① 中西正明『新版注釈会社法(13)』257頁(有斐閣・1990年) 
② 江頭憲治郎『株式会社法』881頁注(1)・883頁注(3)(有斐閣・2006年) 
③ 伊藤真『破産法(第4版補訂版)』509頁~511頁(有斐閣・2006年)
(執筆:弁護士 権田修一)

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【質問14】
SO付与に関する「税制適格」(租税特別措置法29条の2第1項)の要件にある「権利付与決議の日」は、次の(1)~(3)のうち、いつの決議の日と考えればいいでしょうか。
(1)SO付与自体の株主総会決議(有利発行という解釈)
(2)役員の非金銭報酬としての株主総会決議(有利発行ではないという解釈)
(3)(1)(2)の総会後に、実際の割当先・個数等を決定する取締役会

【質問14 解説】 
ご質問の「権利付与決議の日」(租税特別措置法29条の2第1項)というのは、措置法29条1項1号の「付与決議の日」のことでしょうか? もしそうだすると、江頭憲治郎「株式会社法」有斐閣414頁の記載から考えると、株主総会決議の日ということになると思います。 
そうすると、(1)、(2)の切り分けになりそうです。 
ただ、取扱い不明な場合も問題も残されてるように思います。 
すなわち、実際に行われた決議案を調べますと、有利発行の特別決議と役員については報酬決議をしている例もあります。このような決議をしている会社は、特別決議が必要な場合に、報酬決議が不要とは考えていません。この場合、特別決議と報酬決議のどちらの日が上記の「付与決議の日」なのか、という問題が生じます。 
また、(2)の総会後、取締役会決議で新株予約権の発行事項を決議する場合(会社法240条)、常に総会の日からカウントしなければならないか、も疑問を容れる余地があります。 現在、ストック・オプションを発行する場合の決議方法自体実務が混乱しているので、上記のような問題点すべてに明確な回答を今の段階で得るのは難しいと思います。 
そこで、報酬決議と特別決議をする場合は、一緒の総会で決議して、総会決議の「日」がづれないようにし、かつ、後者の取締役会の付与決議の問題は、仮に総会決議からカウントしても、取締役会の付与決議からカウントしても適格税制の要件を充足するよう設計する、といった対応が考えられます。
(執筆:弁護士 松本賢人)

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【質問15】 
株式に譲渡制限を付す場合の、株式買取請求の具体的手続についてお尋ねします。 
会社法116条3項にいう「効力発生日」とは、同条1項1号の定款変更の場合にあっては、当該定款変更の決議を行う株主総会開催日を意味すると理解いたしますが、正しいでしょうか。 
また、同条3項でいう「当該行為をする旨」とは、「当該定款変更の決議を行う株主総会を開催する旨」と理解いたしますが、そうであれば、株主総会の招集通知に定款変更の決議を行う旨を明記し、これを20日前までに株主に通知するという手続をとれば、同項の規定を充足させると理解いたしますが、正しいでしょうか。

【質問15 解説】
(結論) 「効力発生日」の意味は、原則としてそのとおりです。 「当該行為をする旨」とは、定款変更をする旨であって、株主総会を開催する旨ではありません。  
また、定款変更をする旨の通知については、招集通知と兼ねてもかまいませんが、会社法116条3項に基づく通知であることが分かるようにしておく必要があります。
(解説) 会社法116条3項にいう「効力発生日」とは、株式に譲渡制限を付す定款変更を行う場合、原則として、当該定款変更の決議を行う株主総会開催日です。ただし、定款変更に条件・期限を付している場合は、条件の成就日又は期限の到来日が「効力発生日」となります。 
同項にいう「当該行為をする旨」とは、「発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要することについての定めを設ける定款の変更をする」旨、すなわち、全部の株式に譲渡制限を付す定款変更をする旨です。したがって、株主全員に対し、全部の株式に譲渡制限を付す定款変更をする旨の通知をしなければなりません。 
そして、会社法116条3項に基づく通知であっても、株主総会の招集通知に定款変更を行う旨を明記すれば足りると思いますが、会社法116条は反対株主が株式買取請求を行うための手続きを定めたものですから、文書の表題等に、「株主総会招集ご通知兼定款変更通知」などといった会社法116条3項に基づく通知であることを明示しておく必要があるでしょう。 
なお、招集通知が、「通知を発しなければならない」(299条1項)とされているのに対し、定款変更をする旨の通知は「通知しなければならない」(116条3項)とされている点に注意が必要です。
(執筆:弁護士 青戸理成)

※ 本記事は平成17年に掲載された内容です。その後の改正にご注意ください。 

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