国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 脱税・租税回避・節税
第13回 脱税・租税回避・節税
税の言葉に、脱税と租税回避あるいは節税というのがあります。「脱税」とは、税の負担を不法に免れることを言うのですから、処罰の対象となります。所得税法238条では、偽りその他不正の行為により所得税を免れた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定めております。これが脱税犯に対する罰則です。また、脱税があったときにされる更正については、通常の場合の更正の除斥期間である5年よりも長い7年の除斥期間が適用されることになっておりますし、申告納税義務の不履行に対する行政上の措置として、重加算税も賦課されることになります。
これに対し「租税回避」とは、もっぱら又は主として税負担の軽減・回避を図る目的で、通常は考えられないような特殊な取引を行うことを言います。租税回避行為は、違法ではありませんが、その手段の異常性が注目され、税法上の対応措置が要請されます。税法には、同族会社の行為計算の否認規定が設けられておりますが、一般的な否定規定はなく、非同族会社の租税回避行為の否認については、判例及び学説上、積極・消極の両説に分かれます。税法上の実質主義は、租税負担の公平を図るために形式よりも経済的実質に着目して税法を解釈し適用するという考え方ですから、この観点から租税回避行為を否認できるとするのが積極説ですが、租税回避行為に対して罰則を適用したり、行政上の措置である重加算税を賦課するというような事例はないようです。
他方、「節税」とは、税法が積極的に認め又は少なくともその採用を予定していると認められる方法によって税負担の軽減を図る行為を言います。合法的な方法によって経済目的を達成するものです。バブル時代に取得したゴルフ会員権を譲渡し、その後に再取得する場合の譲渡損失は、単なる損出しでゴルフ会員権を売却する理由がないから、ゴルフ会員権の譲渡損失を給与所得と通算して、所得税の確定申告をすることは認められないという考え方があります。しかし、法人税法の適用に当たっての「有価証券のクロス取引」とは異なり(法人税基本通達2-1-23の4)、所得税の実務では、クロス取引も合理性のある取引として認められているのです。相続税の「遺産に係る基礎控除」は、法定相続人の数によって異なるところから、生前に養子縁組をする相続税の節税行為が流行ったことがあります。その後、相続税法の改正により養子の数に制限を設けられたように、合法的な節税がけしからんと言うには、立法上の手当が必要です。
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