国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 事業所得と山林所得の区分

第31回 事業所得と山林所得の区分

 山林所得とは、山林の伐採又は譲渡による所得をいいますが、山林を取得した日から5年以内に伐採又は譲渡することによる所得は、山林所得に含まれないこととされております。このように、山林所得は、長期間にわたって育成した山林を伐採又は譲渡したときに一時に課税するものでありますから、分離課税の5分5条方式を採用して累進税率の負担を緩和しているのです。そこで、山林の所有者(山主)が保有期間5年を超える山林を伐採又は譲渡することによる所得は、たとえその山林経営が事業と認められる場合であっても、事業所得に該当せず、山林所得に分類されることになります。一方、山林を取得した日から5年以内に伐採又は譲渡することによる所得は、山林の経営が事業と認められる場合には事業所得、事業とまではいえない場合には雑所得に分類されます。
 例えば、製材業者自らが植林し又は幼齢林を取得して育成した山林を伐採し、製材して販売した場合の所得は、形式的には植林から製材の販売までのすべての所得が販売時の製材業の所得(事業所得)と解されますが、実務的には、次のように二つの所得に区分することができることとされております。

(1) 植林又は幼齢林の取得から伐採までの所得
伐採した原木を製材業者の通常の原木貯蔵場等に運搬した時の価額で山林所得とする。

(2) 製材から販売までの所得
その製品を販売した時の事業所得とする。

 一方、植木販売業者が植木として育成中の立木や山林苗木販売業者が苗木として育成中の立木は、たとえその育成完了までに5年以上の歳月を要したとしても、その販売収入は山林所得ではなく、事業所得に該当することになります。植木販売業者が育成中の立木は、販売目的で所有する棚卸資産であって、山林所得にいう「山林」に当たらないということになるのです。つまり、山林所得にいう「山林」とは、販売を目的として伐採適期まで相当長期間にわたり育成管理した立木をいうものと理解されているのです。
 なお、庭園の樹木や果樹園に栽培される果樹は、同様に山林所得にいう「山林」には当たりません。したがって、その譲渡による所得は、山林所得に該当しませんし、販売目的で所有するものでもありませんから、事業所得にも当たらず、譲渡所得に該当することになります。

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