国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 民法上の組合員が受ける賃金等の所得区分
第36回 民法上の組合員が受ける賃金等の所得区分
民法上の組合は、法人格がなく人格のない社団等にも該当しないので、組合事業から生じた所得は組合員の共同事業として各組合員に分配され、各組合員が納税義務を負うことになります。この場合の組合員が受ける分配金は、組合事業と同じ所得区分になります。所得税法では、民法上の組合についての所得計算や組合員に対する課税方法を明記しておりませんが、実務上、組合事業から得る組合員の所得は、組合の主たる事業の内容に従って不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得のいずれかに分類することとしております。
最近、民法上の組合から受ける組合員の所得区分を巡る最高裁判決(平成13年7月13日)がありましたので、紹介しましょう。事案は、りんご生産事業を営む組合の組合員がりんご生産作業に従事し、組合から労務費名目で支払われた金員について、組合員が給与所得として申告したところ、税務署は事業所得に当たるとして更正したものです。地裁判決は、組合員の所得を給与所得、高裁判決は事業所得としたのですが、最高裁は、給与所得として高裁の判断を覆しております。判決の要旨は、次のとおりです。
「民法上の組合の組合員が組合の事業に従事したことにつき組合から金員の支払を受けた場合、当該支払が組合の事業から生じた利益の分配に該当するのか、給与所得に係る給与等の支払に該当するのかは、当該支払の原因となった法律関係についての組合及び組合員の意思ないし認識、当該労務の提供や支払の具体的態様等を考察して客観的、実質的に判断すべきものであって、組合員に対する支払であるからといって、当該支払が当然に利益の分配に該当することになるものではない。本件組合及びその組合員は、労務費の支払を雇用関係に基づくものと認識していたことがうかがわれ、その労務費は、本件組合の利益の有無ないしその多寡とは無関係に決定され、支払われていたとみるのが相当である。また、Xら専従者は、一般作業員と同じく、管理者の作業指示に従って作業に従事し、作業時間がタイムカードによって記録され、その作業も一般作業員と基本的に異なるところはないのであるから、Xら専従者は、一般作業員と同じ立場で、本件組合の管理者の指揮命令に服して労務を提供していたとみることができる。したがって、本件収入に係る所得は給与所得に該当すると解するのが相当である。」
2003.6.10
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