国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 現物給与と課税
第38回 現物給与と課税
フリンジ・ベネフィットに対する課税については、不公平問題を初めてとしていろいろな論議があります。フリンジ・ベネフィットとは、給与所得者が本来の給与のほかに受ける経済的な利益を意味し、企業の有する施設を利用したり、各種の費用を企業負担で受ける場合などの利益をいうのです。そして、これらの経済的な利益の供与は、福利厚生制度の充実など規模の大きい会社ほど、一般従業員よりも役員の方が利益を享受する度合いが強いことから、大企業と中小企業の従業員間、役員と従業員との間の課税上の不公平という問題が生ずるというわけです。
給与所得者が勤務先から受ける各種の経済的な利益は「現物給与」といわれており、これには、[1]物品を無償又は低い価額で譲り受けたり、[2]社宅等を無償又は低い価額で貸与されたり、[3]金銭を無利息又は低い価額で貸し付けられたり、[4]各種のサービスを無償又は低い価額で提供されるなどの利益があります。そして、この現物給与はすべて課税対象となるわけではなく、経済的利益の特殊性から、税法や国税庁通達等によって課税除外とされているものが少なくありません。主要なものを挙げると、次のとおりです。
イ 従業員の制服や残業した者に対する食事など、給与所得者の職務の性質上欠くことができない経済的利益であり、その供与が使用者自身の業務上の必要に基づくものであるもの。
ロ 使用者が負担する各種のレクレーション費用、使用者が業務上の必要に基づいて負担するゴルフクラブや社交団体の入会金など、個人に対する利益の帰属ないしその程度が不明確なもの。保養所などの福利厚生施設を設け、その運営費等を使用者が負担している場合や掛け捨ての生命保険の保険料等を使用者が負担している場合などの経済的利益についても課税除外とされますが、役員だけを対象とするものは課税対象となります。
ハ 社会通念上相当と認められる永年勤続者の記念品、創業記念品など、少額不追求の趣旨で課税除外とされるもの。これ以外にも、[1]従業員等に対する一定の条件に該当する自社の商品や製品等の値引販売、[2]従業員等に対する金銭の無利息又は低利による貸付けで、災害又は疾病等に基因するもの又は使用者における平均調達金利以上の金利で貸し付けたもの、[3]使用者が負担する少額の社会保険料などがあり、同様な趣旨から課税除外とされております。
2003.6.20
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