国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 譲渡所得の収入金額

第50回 譲渡所得の収入金額

 譲渡所得の総収入金額は、その年において収入すべき金額であり、それが金銭以外の物又は権利その他経済的利益をもって収入される場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的利益の価額となります。
 資産を交換したときには、交換取得資産の時価が譲渡収入となり、交換差金が授受されると交換差金を含めた価額が収入金額となるわけです。
 譲渡所得の収入金額をめぐる注目される裁判例に、東京高裁平成11年6月21日判決がありますのでご紹介しましょう。
 納税者Xは、その所有する土地及び借地権を7億円でA社に売却する一方、A社からほぼ等価の土地を4億円で取得する契約を締結し、相殺残金の3億円を受領しました。Xは土地等の譲渡収入を7億円として確定申告をしたところ、税務署長は、本件土地等を7億円で譲渡して土地(7億円相当)と3億円の現金を取得したのであるから、Xの譲渡収入は10億円であると認めて更正処分をしました。
 この更正処分の適否について、第一審判決(東京地裁平成10年5月13日)は、XとA社の取引が補足金付交換契約に当たると判断し課税処分を適法としました。
 しかし、その控訴審判決では、「本件取引の法形式を選択するに当たり補足金付交換契約によることなく、本件譲渡資産及び本件取得資産の各別の売買契約とその売買代金の相殺という法形式を採用することとしたのは、本件譲渡資産の譲渡所得に対する税負担の軽減を図るためであったことが優に推認できるが、本件取引について、XとA社との間でどのような法形式を採用するかは、両当事者の自由な選択に任されている」とした上で、「租税法律主義の下においては、法律の根拠なしに、当事者の選択した法形式を通常用いられる法形式に引き直し、それに対応する課税要件が充足されたものとして取扱う権限が課税庁に認められているものではないから、本件譲渡資産及び本件取得資産の各別の売買契約とその各売買代金の相殺という法形式を採用して行われた本件取引を、本件譲渡資産及び本件取得資産との補足金付交換契約という法形式に引き直して、この法形式に対応した課税処分を行うことは許されない」として、原審の判断を覆しました。
 判例・学説は、租税回避行為に対する否認について消極・積極の両説に分かれておりますが、学説は、租税法律主義の立場を重視して消極に解するものが多いようです。
 税務署側は、本判決について上告しましたが、最高裁判所が上告不受理の決定(平成15年6月13日)をしておりますので、控訴審判決の意義は大きいものと思われます。
2003.11.10