国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 譲渡資産の取得費

第51回 譲渡資産の取得費

 譲渡所得の金額は、その年中の資産の譲渡に係る総収入金額から当該資産の取得費とその譲渡に要した費用との合計額を控除し、その残額から譲渡所得の特別控除を差し引いて計算することになっております。
 譲渡所得の金額の計算上控除される取得費は、原則としてその資産の取得に要した金額と設備費及び改良費の合計額となりますが、その資産が機械や器具備品のように時の経過によって減価するものであるときは、その保有期間中の減価相当額を控除した金額がその資産の取得費となります。
 譲渡資産を他から購入した場合には、購入代金のほか、購入手数料、登録免許税、不動産取得税、引取運賃等、その他その資産を取得するために要した費用が取得費となるのです。また、個人の資産が贈与や相続等によって移転があった場合には、それが限定承認にかかるものであるときを除いて、その時におけるキャピタル・ゲイン課税は行われずに取得費を引き継ぐことになっております。ただし、相続直後(相続税申告書の提出期限の翌日以後3年内)に相続財産を譲渡した場合には、相続税と所得税の二重課税を調整するため、譲渡所得の計算上、その相続財産に係る部分の相続税額を取得費に加算する措置が設けられております。
 現在、土地建物や有価証券の譲渡による所得は、申告分離課税となっておりますので、譲渡所得の金額を計算するには取得費を把握しなければなりませんが、昔に購入した資産や相続した資産については、取得費の把握が容易ではありません。そこで、上場株式等については、平成13年10月1日の終値の8掛けをもって取得費とする税制(みなし取得費の特例)が設けられておりますし、土地等の譲渡については、譲渡代金の5%相当額を取得費とする措置が採られているのです。
 なお、資産の取得費に関する裁判例には、
[1] 離婚に伴う財産分与として資産を取得した場合、取得者は財産分与請求権という経済的利益を消滅させる代償として当該資産を取得したことになるから、その資産の取得費は、財産分与請求権の価額と同額になるとしたもの(東京地裁平成3年2月28日)
[2] 遺産分割に要した弁護士費用等は、資産の客観的価額を構成する費用ではないから取得費に含まれないとしたもの(東京高裁昭和55年10月30日)
[3] 遺産分割に際して他の相続人に支払った代償金は取得費に当たらないとしたもの(最高裁平成6年9月13日)
[4] 時効取得した土地の取得費は、時効援用時の当該土地の価額によるべきであり、時効取得に関して支出した弁護士費用は、その取得費に含まれないとしたもの(東京地裁平成4年3月10日)などがあります。
2003.11.20