国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 借入金の利子は譲渡資産の取得費か

第52回 借入金の利子は譲渡資産の取得費か

 借入資金によって購入した非事業用不動産を譲渡した場合、その借入金の利子が譲渡所得の金額の計算上「資産の取得に要した金額」に当たるかについては、積極説と消極説のほか、当該資産の使用開始の日の前後によって区分し、使用開始の日までの部分についてのみ「資産の取得に要した金額」を構成するという中間説がありました。
 この問題については、平成4年に二つの最高裁判決があり、判例上は「中間説」が確立しております。
 平成4年7月14日判決(民集46巻5号492頁)では、「資産の取得に要した金額には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金のほか、登録免許税、仲介手数料等の当該資産を取得するための付随費用の額も含まれるが、他方、当該資産の維持管理に要する費用等の居住者の日常的な生活費ないし家事費に類するものは含まれない。
 借入金の利子は、原則として、居住の用に供される不動産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、資産の取得に要した金額に該当しないというほかない。
 しかしながら、右借入れの後、個人が当該不動産をその居住の用に供するに至るまでにはある程度の期間を要するのが通常であり、したがって、当該個人は、右期間中、当該不動産を使用することなく、利子の支払を余儀なくされるものであることを勘案すれば、右借入金の利子のうち、居住のため当該不動産の使用を開始するまでの期間に対応するものは、当該不動産をその取得に係る用途に供する上で必要な準備費用ということができ、当該個人の単なる日常的な生活費ないし家事費として譲渡所得の金額の計算のらち外のものとするのは相当でなく、当該不動産を取得するための付随費用に当たるものとして、右資産の取得に要した金額に含まれるものと解するのが相当である」旨判示しました。
 その後、最高裁平成4年9月10日判決(訟務月報39巻5号957頁)は、上記の最高裁判決を引用して、非事業用不動産の使用開始の日以前の期間に対応する借入金の利子が「資産の取得に要した金額」に含まれる旨判示しておりますが、この判決には、
[1] 中間説に立ちながらも、非事業用不動産の使用可能となった日以前の期間に対応する借入金の利子のみが譲渡所得の金額の計算上控除されるべきであるとする意見
[2] 非事業用不動産の取得のためにその借入れ及び利子の支払が実質的に欠かせないと認められる限り、その借入金の利子の全額が譲渡所得の金額の計算上控除されるべきであるとする積極説に立つ反対意見も付されております。
 なお、課税実務では、「使用開始の日」(資産の取得後、使用しないで譲渡した場合には、譲渡の日)までの期間に対応する借入金の利子が取得費に算入されることになっております(所得税基本通達38-8)。
2003.12.10

関連するコラム