国税OBが緊急寄稿!!所得税法は“生身の人間”を対象 年金税制改革

第67回 年金税制改革

 平成15年6月の税制調査会中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」では、年金税制改革として、[1]公的年金等控除額、[2]社会保険料控除額、[3]遺族年金等の非課税措置の3点について方向性が示されております。そのうち、公的年金等控除額の見直しについては、[1]年金収入のみで生計を立てる低所得者の取扱いについて十分配慮した上で、給付段階での優遇措置の適正化に取り組むべきであるとするとともに、[2]高齢者の担税力に対する配慮としては、年齢だけで高齢者を別扱いする制度となっていること、及び給与収入を得ながら年金を受給する者が増加しており、給与所得控除と公的年金等控除がそれぞれ適用され、課税ベースの脱漏が生じていることを挙げた上で、これらの問題点を是正し、真に担税力に応じた適切な課税を行っていく必要があると述べております。
 また、社会保険料控除額の見直しについては、「将来、公的年金に対する保険料控除に一定の限度額を設けるとともに、企業年金などの私的年金については、拠出時控除・給付時課税の枠組みを徹底する方向で基本的な改革を行うことにより、税制適格な私的年金を確立することが考えられる」と述べております。そして、遺族年金等の非課税措置の見直しについては、「遺族年金給付や失業等給付のように、受給者の他の所得の有無や資産の保有状況と関係なく支給される非課税給付については、今後、見直しを進めていく必要があり、低所得者に対する配慮は人的控除等で行うべきである」と述べているのです。
 上記のうち、社会保険料控除の問題についてみますと、現行税制は、[1]国民年金保険料、国民年金基金の掛金及び厚生年金保険料等は、社会保険料控除として、また、[2]確定拠出企業年金の個人型年金の加入者掛金は、小規模企業共済等掛金控除として、それぞれ拠出時に全額が所得控除の対象になりますが、[3]確定給付企業年金及び適格退職年金の加入者掛金は、個人年金保険料と同様に、生命保険料控除の対象とされております。さらに、個人年金保険以外の利殖年金の掛金は、所得の処分(貯蓄)ですから、所得控除の対象とされておりません。このように、拠出時の保険料に対する現行税制は統一的ではないのです。そこで、その統一以前の問題として、年金は将来に備えた貯蓄の一種であるから、拠出時の保険料について、何らかの形で所得控除額に制限を設けるべきではないかというのが税制調査会の考えです。この見解は妥当するのでしょうか。現役世代が拠出する保険料は、現在の年金受給者への給付に充てられているのであって、将来、拠出額に見合う給付を現役世代が受けることは保証されないのです。したがって、拠出時の保険料の全額が所得控除の対象とされても良いという考え方も成り立つのです。
2004.7.23