ストックオプション税務訴訟 デルコンピュータ(株)代表取締役会長 吹野博志氏インタビュー 「~グローバリゼーションを生き抜く4つの原則 S・O・F・T~」

Q1.  ストックオプション課税に対する反応が過去に例を見ないほど大きなものとなっていますが。

A1.  国全体に、税法だけでなくて、戦後やってきたあり方、つまり行政のあり方や政治のあり方、そして企業の統治方法といったものが本当に今まで通りでいいのかという反省がグローバリゼーションという動きの中で起きてきたのだと思うのです。欧米と比べた日本という国がどうも特殊ではないかと疑問が出てきたんですね。勿論その特殊性の中にはいい面もあります。しかし当然悪い面もあるわけで、それが目立ってきたのです。そして悪い面に対するクエスチョンマークが霞ヶ関の中でも国民の中でも大きく出てきているのではないでしょうか。
 ストックオプションという制度はこれから社会的に重要な地位を占めてくると思うのですが、今言ったようなタイミング、背景がある中で、当然に税制の取扱いは大きな意味を持ってきます。ですから、ストックオプション課税に対する皆さんの反応は今までの税制に対する疑問符だと思うのです。
Q2.  裁判が始まってから、「過少申告加算税・延滞税の取消し」がなされました。これも異例のことですが。

A2.  一番最初は、税金が足らないから払いなさいという「更正通知」がある日突然来たわけですが、これもポストに切手も貼っていない状態でねじ込まれていたんです。正直驚きました。そして理由も何にも書いてないですし、勿論電話等で説明をしてくれたわけでもありません。今回の「過少申告加算税・延滞税の取消し」も同じです。ただし、今回は郵便局を通して配達されてきましたが。ある日いきなり一枚の紙が来ただけなんです。勿論こちらも何の理由も書いてありません。これはなんだろうという気持ちですよね。まさに不可解でした。
 このように税額を増やすであるとか減らすであるとかいうことについては、当然にそのプロセスや根拠を説明する責任があると思うんですが。そういうものが全くないというのは理解が出来ないですね。

Q3.  日本でも説明責任の重要性が叫ばれていますが。

A3.  米国のシステムとしては、1970年代から80年代にかけて、情報開示(disclosure)であるとか説明責任(Accountability)、それにトランスペアレンシー(透明性)が随分発展してきましたね。特にフェアネス(公正性)の観点から言えば、「隠す」ということは、かの国では指弾されるわけです。これは官民問わずなんですね。それに比べると日本では、重要なことになればなる程隠してしまう傾向があります。税金ということに限って言えば、もう「払いなさい」、「はい、払います」の時代ではないんですね。何故払わなくてはならないのかを法的に根拠を示して、払う方も納得して気持ちよく納税できるようにしていかなくちゃいけないんです。
Q4.  ストックオプションによる所得にはどのように税金が掛ると認識されていたのでしょうか。

A4.  私自身は税に対する知識はそれほど持ち合わせておりません。ですから最初は知人の会計士さんに聞いてみたんです。こういうのはどう申告したらいいんですか、と。そうしましたら懸命に調べてくれましてね、それでもちょっと分からなかったようなんですよ。それで、税務署に問い合わせて聞いてくれたところ、「それは一時所得です」という回答が税務署からあったそうです。又、会社にも顧問会計士の先生もいますから、その方にお聞きしたところ、「一時所得ですね」と、例の解説本なんかを見せてくれたりしながら説明してくれました。ですから、これまでずっと一時所得で申告してきたんです。

Q4.  ストックオプションによる所得にはどのように税金が掛ると認識されていたのでしょうか。

A4.  私自身は税に対する知識はそれほど持ち合わせておりません。ですから最初は知人の会計士さんに聞いてみたんです。こういうのはどう申告したらいいんですか、と。そうしましたら懸命に調べてくれましてね、それでもちょっと分からなかったようなんですよ。それで、税務署に問い合わせて聞いてくれたところ、「それは一時所得です」という回答が税務署からあったそうです。又、会社にも顧問会計士の先生もいますから、その方にお聞きしたところ、「一時所得ですね」と、例の解説本なんかを見せてくれたりしながら説明してくれました。ですから、これまでずっと一時所得で申告してきたんです。

Q5.  課税庁は、平成10年分からは「給与所得」として指導していると言っていますが。

A5.  私の場合はストックオプションとは別にリストリクティッドストックというものを持っているんです。ですからこの両方を一時所得として申告していたんですが、あるときこういう情報が入ったんです。リストリクティッドストックは労働の対価としてもらったものではないから、一時所得のままだと。でもストックオプションの方はどうも国税局が給与所得に見解を変えそうだと。でもおかしいですよね。法律が変わったのではなく、国税局の見解が変わっただけで全く違う取扱いになるというのは。しかもその見解というものも公開されないわけです。
 もう一つ納得がいかないのは、「国税局にお伺いを立てる」ということが行われていることですね。つまり、国税OBの天下りの人達が情報ブローカーのような役割をしているんですが、これもおかしいですよ。税金は法律で決まるものですよね。それをネゴだとか見解の変更だとか。私も法律が変わったのでしたら従います。法治国家ですから。でも見解が変わったという説明では納得が出来ないんです。まさに裁量行政の最たるものではないですか。それで、自分の意志を明確にするためにも首尾一貫として一時所得で申告したんです。

Q6.  国税庁に直接お話をしに行かれたそうですが。

A6.  昨年の2月に富永賢一氏(現在:国税庁課税部審理室課長補佐)に会いに行ったんです。今回のストックオプションの件はどうなっているのか、と。そうしましたら、氏はですね、「国税庁としては過去一度たりともストックオプションを一時所得だと言ったことはありません。過去から一貫して給与所得で課税する立場です。見解は変えたことはありません」とこう言うんです。しかし、私も含めて、国税庁に一緒に行った人達全員が過去一時所得で申告しているんです。それが認められていることについては、「それは税務署の誤指導です。中には間違って一時所得だと言った税務職員もいるかもしれませんが、大変稀なケースです。」と言うんですね。
Q7.  何故、10数年「一時所得」としていたものを「給与所得」としたのでしょうか。

A7.  一つには、「取りやすいところから取りたい」というのがあるでしょうね。税収不足ですから。これは調査に来た国税局の職員が明言したんですが、「今我々は、アメリカのナスダック市場で急激に成長している企業をターゲットに調査を進めています。言い換えれば、株価が急上昇したところですが。」と。それが、デルであり、インテルであり、マイクロソフトなんです。 二つ目には、日本国内でも認められるようになったストックオプションと課税の整合性を取りたいということでしょう。
Q7.  何故、10数年「一時所得」としていたものを「給与所得」としたのでしょうか。

A7.  一つには、「取りやすいところから取りたい」というのがあるでしょうね。税収不足ですから。これは調査に来た国税局の職員が明言したんですが、「今我々は、アメリカのナスダック市場で急激に成長している企業をターゲットに調査を進めています。言い換えれば、株価が急上昇したところですが。」と。それが、デルであり、インテルであり、マイクロソフトなんです。 二つ目には、日本国内でも認められるようになったストックオプションと課税の整合性を取りたいということでしょう。
Q7.  何故、10数年「一時所得」としていたものを「給与所得」としたのでしょうか。

A7.  一つには、「取りやすいところから取りたい」というのがあるでしょうね。税収不足ですから。これは調査に来た国税局の職員が明言したんですが、「今我々は、アメリカのナスダック市場で急激に成長している企業をターゲットに調査を進めています。言い換えれば、株価が急上昇したところですが。」と。それが、デルであり、インテルであり、マイクロソフトなんです。 二つ目には、日本国内でも認められるようになったストックオプションと課税の整合性を取りたいということでしょう。

Q8.  更正処分をされていたのは、つい最近までは東京国税局管内の納税者だけだったのですが。

A8.  恣意的ですね。税の公平や法の公平といったものが全く無視されていますね。言葉を変えれば、大変にマーケティングな手法です。ターゲットマーケットの「魚のいるところ」だけを狙っていく非常に効率的なやり方ですね(笑)。しかしアンフェアでしょう、こういうやり方は。法律は公平に適用されるべきですし、その適用には根拠があって、その根拠も公開されなくてはなりません。根拠を明示しないで、取りやすいところからだけ取っていくというのは許されません。
Q9.  同じ税務署の中でも、処分の内容が異なるという事態まで発生していますが。

A9.  今まで、このようなことは一般に分からなかったんだと思うんです。課税庁側にしてみれば驚いたのではないですか。こんなに大勢から文句を言われるとは思ってもいなかったでしょうし。過去、国税局に限らず色々な官庁が独自の法律解釈をしてある特定の団体や個人に便宜を図ってきたという事実があるわけですね。でも、それらは一般に公開されない、つまり不利益を蒙った人がいたとしても文句が付けられない訳です。こういうやり方に皆が慣れてしまった。ですから、同じ税務署の中でもそのような処分が発生してしまったのではないでしょうか。これも、情報がオープンになっていれば起きなかったはずです。

Q10.  税務当局のあるべき姿は。

A10.  税務当局に限らず行政全体にいえることですが、フェアネス(公平)、そしてトランスペアレンシー(透明)であることが最大の責務でしょうね。情報が公平に透明性をもって公開されれば、それをおかしいと感じたところからストップがかかりフィードバックされていく訳です。それが健全な姿なんです。自分だけが正しくて、それに従いなさいというやり方はこれからの時代にはなじまないですね。
 行政の役割は、国会で決められた法律に従って国民にサービスを提供していくことなんです。もう一度憲法の原点に立ち返って自らの役割を認識すべきでしょうね。
Q11.  裁判所に望まれることは。

A11.  私はデルコンピュータで4つのことを学びました。SOFT(ソフト)と呼んでいますが、スピード(迅速・Speed)、オープンネス(公開・Openness)、フェアネス(公正・Fairness)、トランスペアレンシー(透明性・Transparency)です。これを裁判所にもそして日本という国にも求めます。世界各国はこの原則に従ってどんどん進んでいます。そしてこの原則を守らなければ国際競争から脱落してしまうんですね。日本だけが今まで通りのやり方でいいはずがないんです。
 でも、日本の将来はとっても明るいんですよ。まだまだ改善していくところがいっぱいあるんですから(笑)。これからどんどん良くなっていきます。
(文責 高田貴史)

関連するコラム