内部統制と成長戦略 コンプライアンスの捉え方の変化
コンプライアンスの捉え方の変化
不二家事件を題材に、コンプライアンスの変化を理解する必要がある。前回、経営者が法律に無知であることがコンプライアンス上のリスクであると指摘した。ところが、このコンプライアンスの中身自体、大きく変化している。このことに経営者が無知であることが、不二家事件の根本にあるからである。
不二家事件の結果、社長は辞任し、最終的には後継社長を除く、全役員が退任することになった。さらに、不二家は独立性が低下し、山崎製パンのグループの一員となることになる可能性が高い。
このような不二家事件の結末に関して、従来の経営者の常識からすれば、それはマスコミ批判に行き過ぎではないか、との考え方も成り立つ。従来のコンプライアンスは「法令」遵守と捉えられていた。健康食品法に違反していない可能性が高い不二家事件の場合にコンプライアンス違反はなく、しかもあ、被害者が出ていないことから、従来の考え方では、コンプライアンス違反はないからである。
不二家事件の後で、日本経済新聞が日経クイックで調査をした。不二家事件が消費期限切れの原料を使った製品を製造販売した事件であるから、消費期限に関する事項を消費者に聞いたわけである。
その報告によれば、消費期限を見て商品を購入するかどうかに関して、70%の人がYESと回答している。さらに、消費期限切れの商品は飲食するかに関しては、22%の人が飲食しないと回答している。
この調査結果からすれば、消費期限次第で、購入をしない人が相当数いることが分かる。そうであれば、消費期限切れの原料を使って製造した物であれば、本来であれば購入しない消費者にとってみれば、客観的には不二家が詐欺的販売をしたと捉えることになる。
不二家の販売が詐欺的販売と捉えられる原因は、不二家における製造過程における品質管理に対する意識の低さとシステムの未整備にある。消費者の健康に影響を与える商品を製造販売する会社は、製造過程における品質管理を十分に行い社会倫理的責任があるから、今回の不二家事件は、社会倫理的視点からマスコミによって強い非難がなされ、その非難は、一般消費者の支持を得た。
コンプライアンスが「法令」違反から、「法令等」違反に拡大し、「等」の中に社会倫理が含まれるようになったといえよう。さらに、この法令「等」の中には、社内規程も入るから、社内規程の違反は、法令等の違反としてコンプライアンス違反となる。
いずれにしても、不二家事件での社会的批判は正当であり、不二家の経営者たちのほとんどが責任を取らされたことは理解できることである。
加えて、取締役の法的責任を考える場合には、社内規程の違反することの意味の重大性に気づかなければならない。社会規程違反は法令違反に等しいとの理解が必要だからである。
取締役の会社に対する法的責任である債務不履行責任に関して、四つの責任類型が実務的に定着している。これは、株主代表訴訟と関連した判例分析に基づき、被告となった取締役の勝訴・敗訴の確率を考える参考にするために作られた。
具体的法令違反の類型は、被告取締役が敗訴となる確率が極めて高い類型であるが、社内規程違反は、それに含まれる。
(以上、生産性新聞2007(平成19)年4月5日号より転載)
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