二足のわらじを履くゴーン
以下は法律家ではなく野次馬としての感想である。報道によれば、ゴーンは日産・ルノーといったグローバル企業の経営をしていただけでなく、個人の蓄財にも熱心に取り組んで、二足のわらじを履いてきたようだ。筆者の知る限り、一般の企業経営者の関心はもっぱら企業経営にあり、個人の蓄財にはまったく関心がないか、関心があってもそれに費やす時間がないため、プライベートバンカーや税理士に丸投げ、といった人たちばかりであった。この点ゴーンは企業経営だけでなく、個人の蓄財を図ることにも関心があり、自分の親族をトップに据えた会社を複数作り、複雑な金の流れを差配するなど、ずいぶん時間も使った様子がうかがえる。その意味では見事な二足のわらじの履きっぷりだ。しかし、関心はともかく時間には限りがあるから、日産をV字回復させた後は、企業経営に割く時間は、蓄財に割く時間と裏腹にどんどん減少していったのだろう。それによって日産の業績も芳しくなくなった。日産の株主が怒りを向けるべきなのは、流出した数十億円よりも、日産の経営に振り向けられなかった時間と、それによる企業業績の低迷なのだろう。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
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