連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第96回 税務調査~トレンドは消費税~

税務調査~トレンドは消費税~

 

Q.当社は、開業3年目の、輸出業を営む法人です。お陰様で法人設立以来、順調に売り上げを伸ばしております。先日、同業者から、そろそろ税務調査が入るのではないかと言われました。また、そのときに、インボイスの価格と実際に仕入先に支払った金額が一致していないと消費税法違反でとんでもないことになるとも聞きました。一体どういうことでしょうか?

 

A.国税局や税務署などの税務組織では、平均3年と、比較的短い周期で人事異動が行われ、新年度が始まる7月に、異動の発令がされます。そして、新たな職場で2~3ヵ月経って慣れた頃、つまり秋頃に、税務調査が行われることが多いと言われています。税務調査の対象になる確率ですが、国税庁が毎年公表している法人実調率(実地調査の件数を対象法人数で除したもの)は、平成26年度では3.2%と決して高いものではありませんが、油断は出来ません。

財務省が昨年の6月末に公表した、平成28年事務年度(平成28年7月~平成29年6月)国税庁実績評価実施計画では、その実績目標のひとつに「適正申告の実現及び的確な調査・行政指導の実施」が定められ、その業績目標として「消費税については、無申告や不正還付への対応を含め、その調査、還付申告の処理等を的確かつ厳正に行います。」と、税目及び態様を掲げて明記されました。

この実施計画が公表された後、9月に、東京都の荷役請負会社が消費税を3年間申告しなかったことにより4,200万円を脱税したとして東京国税局に告発されたとの報道がされました。続いて10月には、大阪の宝飾品販売会社が、輸出免税制度を悪用して5億9千万円余の不正還付を受けたとして、大阪地検特捜部に逮捕されたとの記事が出されました。“消費税”、“無申告”、“不正還付”。上記の業績目標をそのまま踏襲しています。一罰百戒の意味をこめてニュース化されたのでは?と思っても、あながち的外れではないのではないでしょうか。

なお、国税庁が昨年の11月に発表した、平成27事務年度(平成27年7月~平成28年6月)法人税等の調査事績の概要によると、法人消費税については、消費税還付申告法人2,672件に対して実地調査が実施され、89億22百万円を追徴課税しました。この金額は、前年度対比3.7倍にあたります。一方、法人税については、実地調査件数は前年度とほぼ同じですが、追徴課税額は、前年度対比82.9%と減少しています。

法人消費税の調査は、通常、法人税の調査とセットで行われますが、上記の調査事績を勘案すると、主眼は消費税にあると思っても間違いではないでしょう。また、御社のように輸出業を営まれている場合、輸出免税により消費税の還付を受けていることが多いかと思われますので、更に、調査対象として照準を合わせられる恐れが否めません。

かといって、むやみに税務調査を恐れる必要はありません。税務調査とは、国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)の第1章1-1に定められた、法律の規定に基づいて税務職員が行う一連の行為を言い、法令等に則って行われる任意調査です。この行為が法令等に則って正しく行われるよう、税法の専門家に立ち合っていただくことをお勧めします。

インボイスは、消費税の輸出免税を受けるための「証明」として、保存が必要です(消費税法7条2項、同法施行規則5条)。詳しくは、「リスクコンシェルジュ~税務リスク第87回 輸出の場合は金額をごまかしても大丈夫?!」をご参照ください。

 

鳥飼総合法律事務所 税務部パラリーガル 髙瀬貴子

 

※ 本記事の内容は、2016年3月末現在の法令及び財務省報道発表資料、国税庁HP掲載資料等に基づいています。

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