連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第93回 輸出物品販売制度の改正
輸出物品販売制度の改正
Q 弊社は,今後も増加が見込まれる外国人旅行客などに対し,免税対象物品を販売するため,輸出物品販売場を開設することを検討しています。本年,消費税法等の一部改正により,輸出物品販売制度について,改正が行われたと聞きました。具体的には,どのような改正がなされたのでしょうか。 |
A 2015年4月の消費税法の一部改正で,①免税販売の対象となる購入下限額の引き下げ,②非居住者が免税対象物品を海外へ直送する場合の免税手続きの簡素化,③購入者誓約書の提供方法の追加等(電磁的記録による提供とその際の保存方法),④商店街の地区等に所在する大規模小売店舗内の販売場に係る特例の制定,⑤免税対象物品の範囲の見直しがなされました。
[解説]
1.輸出物品販売制度の改正の概要
輸出物品販売場を経営する事業者が,外国人旅行者等の非居住者に対して免税対象物品を一定の方法で販売する場合,消費税が免除されます。
2015年4月の消費税法の一部改正で,上記回答の①ないし⑤のとおり,輸出物品販売制度について改正がなされました。
具体的には,以下のとおりです。
2.免税販売の対象となる購入下限額の引き下げ(①)
免税販売の対象となる購入下限額が,次のとおり引き下げられました。
免税対象物品の区分 |
改正前 |
改正後 |
一般物品(家電,バッグ,衣料品等(消耗品以外のもの) |
1万円超 |
5千円以上 |
消耗品(飲食料品,医薬品,化粧品その他の消耗品) |
5千円超 |
5千円以上 |
3.輸出物品販売場に係る手続きの整備等(②,③,④)
⑴ 非居住者が免税対象物品を海外へ直送する場合の免税手続きの簡素化
非居住者が,輸出物品販売場において,免税対象物品を購入する際に、国際第二種貨物利用運送事業者との間において当該免税対象物品の輸出に係る運送契約を締結し,当該市中輸出物品販売場を経営する事業者に対し,その所持する旅券等を提示し,かつ運送契約に係る契約書の写しを提出し,当該免税対象物品の引渡しを受け、かつ、その場で当該国際第二種貨物利用運送事業者(その代理人を含む。)に引き渡す場合は,購入記録票等の作成等が省略できることになりました。
⑵ 購入者誓約書の電磁的記録による提供・保存方法
非居住者が行う輸出物品販売場への購入者誓約書の提出は,免税対象物品を輸出する旨を誓約する電磁的記録の提供によって行うことができるようになりました。なお,その場合,「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」8条1項各号に掲げるいずれかの措置を行い,同項に規定する要件に準ずる要件に従って保存しなければなりません。
⑶ 商店街の地区等に所在する大規模小売店舗内の販売場に係る特例
大規模小売店舗を設置している者が商店街振興組合又は事業協同組合の組合員である場合には、当該大規模小売店舗内において販売場を経営する他の事業者は,当該販売場を商店街の地区等に所在する販売場とみなして,手続委託型輸出物品販売場の許可を受けることができることになりました。
4.免税対象物品の範囲の見直し(⑤)
免税対象物品から,金又は白金が除外されました。
鳥飼総合法律事務所 弁護士 堀 招子
※ 本記事の内容は、執筆現在の法令等に基づいています。
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