連載 リスクコンシェルジュ~税務リスク第91回 家族を伴っての出張費用は会社の経費となるか
家族を伴っての出張費用は会社の経費となるか
Q.東京都の舛添要一前知事が、コンサートや野球観戦のため、家族同伴で公用車を使用したことについて、東京都の監査委員会が、運転手の人件費やガソリン代など公用車にかかった経費の返還を求めるよう、東京都に勧告したというニュースを見ました。
私は健康食品を輸出販売する会社を経営していますが、年に1度、海外の得意先が開くセールス・イベントに妻同伴で出席するように招待状が届いています。
妻の旅費を会社で負担したら問題になりますでしょうか。
A.奥様がそのセールス・イベントで貴社の業務上の役割を果たされているということであれば、旅費が貴社の経費として認められる可能性があります。
【解説】
舛添前都知事は、家族を伴って野球観戦をしたことについて、「都としての文化政策、スポーツ政策に大きく寄与していると思っている」などと正当性を主張していたのですが、元特別秘書などからは、「都政に資するものだったと判断できるだけの客観的、具体的な情報は得られなかった」などということで、「公務と関係のない私的活動であるとの疑念が強い」というように判断されたようです。
このことと、会社が支出した金員が法人税法上の損金(経費)にできるか否かとは必ずしも関連するものではありませんが、考え方としては似ている部分もあります。
というのも、会社が支出した金員が、役員や従業員の「業務上生じたもの」かそれとも「プライベートなもの」かによって、損金になるか否かの判定が変わってくるからです。
例えば、会社の役員が妻を伴って海外出張をした際に、その旅費を会社が負担していたとしますと、通常は、その費用は役員に対する給与として課税対象になります。なぜなら、妻に関する旅費は「会社の事業とは関係のないプライベートなもの」だと一般的には判断されるからです。
ところが、海外の企業では、トップが妻を伴って業務上のパーティーを開いたり、セールス・イベントを行う、いわゆる「奥様外交」が繰り広げられるということは珍しいことではなく、その関連で、出席者にも配偶者や家族と一緒に出席するように求めることがあります。
このような場合、役員の妻がそのパーティーやセールス・イベントに出席して、取引先との関係強化に資する行動などをした際には、それは業務の一環であるとして、会社が支出した旅費などが損金(経費)として認められる可能性は十分にあるものと思われます。
鳥飼総合法律事務所 税務部長 高田貴史
※ 本記事の内容は、執筆現在の法令等に基づいています。
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